16.7. mmap --- メモリマップファイル

メモリにマップされたファイルオブジェクトは、文字列とファイルオブジェクトの両方のように振舞います。しかし通常の文字列オブジェクトとは異なり、これらは可変です。文字列が期待されるほとんどの場所で mmap オブジェクトを利用できます。例えば、メモリマップファイルを探索するために re モジュールを使うことができます。それらは可変なので、 obj[index] = 'a' のように文字を変換できますし、スライスを使うことで obj[i1:i2] = '...' のように部分文字列を変換することができます。現在のファイル位置をデータの始めとする読込みや書込み、ファイルの異なる位置へ seek() することもできます。

メモリマップドファイルは Unix と Windows で異なる mmap コンストラクタで生成されます。どちらの場合も、更新用に開かれたファイルディスクリプタを渡さなければなりません。既存の Python ファイルオブジェクトをマップしたければ、 fileno() メソッドを使って fileno パラメータの正しい値を取得してください。そうでなければ、 os.open() 関数を使ってファイルを開けます。この関数はファイルディスクリプタを直接返します(処理が終わったら、やはりファイルを閉じる必要があります)。

注釈

書き込み可能でバッファされたファイルへのメモリマップファイルを作りたいのであれば、まず最初にファイルの flush() を呼び出すべきです。これはバッファへのローカルな修正がマッピングで実際に利用可能になることを保障するために必要です。

Unix バージョンと Windows バージョンのどちらのコンストラクタについても、オプションのキーワード・パラメータとして access を指定することになるかもしれません。 access は3つの値の内の1つを受け入れます。 ACCESS_READ は読み込み専用、 ACCESS_WRITE は書き込み可能、 ACCESS_COPY はコピーした上での書き込みです。 access は Unix と Windows の両方で使用することができます。 access が指定されない場合、 Windows の mmap は書き込み可能マップを返します。 3つのアクセス型すべてに対する初期メモリ値は、指定されたファイルから得られます。 ACCESS_READ 型のメモリマップに対して書き込むと TypeError 例外を送出します。 ACCESS_WRITE 型のメモリマップへの書き込みはメモリと元のファイルの両方に影響を与えます。 ACCESS_COPY 型のメモリマップへの書き込みはメモリに影響を与えますが、元のファイルを更新することはありません。

バージョン 2.5 で変更: 無名メモリ(anonymous memory)にマップするためには fileno として -1 を渡し、length を与えてください。

バージョン 2.6 で変更: mmap.mmap はこれまで mmap オブジェクトを生成するファクトリ関数でした。これからは mmap.mmap がクラスそのものになります。

class mmap.mmap(fileno, length[, tagname[, access[, offset]]])

(Windows バージョン) ファイルハンドル fileno によって指定されたファイルから length バイトをマップして、 mmap オブジェクトを生成します。 length が現在のファイルサイズより大きな場合、ファイルサイズは length を含む大きさにまで拡張されます。 length0 の場合、マップの最大の長さは現在のファイルサイズになります。ただし、ファイル自体が空のときは Windows が例外を送出します (Windows では空のマップを作成することができません)。

tagname は、 None 以外で指定された場合、マップのタグ名を与える文字列となります。 Windows は同じファイルに対する様々なマップを持つことを可能にします。既存のタグの名前を指定すればそのタグがオープンされ、そうでなければこの名前の新しいタグが作成されます。もしこのパラメータを省略したり None を与えたりしたならば、マップは名前なしで作成されます。タグ・パラメータの使用の回避は、あなたのコードを Unix と Windows の間で移植可能にしておくのを助けてくれるでしょう。

offset may be specified as a non-negative integer offset. mmap references will be relative to the offset from the beginning of the file. offset defaults to 0. offset must be a multiple of the ALLOCATIONGRANULARITY.

class mmap.mmap(fileno, length[, flags[, prot[, access[, offset]]]])

(Unix バージョン) ファイルディスクリプタ fileno で指定されたファイルから length バイトをマップし、mmap オブジェクトを返します。length0 の場合、マップの最大の長さは mmap が呼ばれた時点でのファイルサイズになります。

flags はマップの種類を指定します。 MAP_PRIVATE はプライベートな copy-on-write(書込み時コピー)のマップを作成します。従って、mmap オブジェクトの内容への変更はこのプロセス内にのみ有効です。 MAP_SHARED はファイルの同じ領域をマップする他のすべてのプロセスと共有されたマップを作成します。デフォルトは MAP_SHARED です。

prot が指定された場合、希望のメモリ保護を与えます。 2つの最も有用な値は、 PROT_READPROT_WRITE です。これは、読込み可能または書込み可能を指定するものです。 prot のデフォルトは PROT_READ | PROT_WRITE です。

access はオプションのキーワード・パラメータとして、 flagsprot の代わりに指定してもかまいません。 flags, protaccess の両方を指定することは間違っています。このパラメーターを使用法についての情報は、先に述べた access の記述を参照してください。

offset may be specified as a non-negative integer offset. mmap references will be relative to the offset from the beginning of the file. offset defaults to 0. offset must be a multiple of ALLOCATIONGRANULARITY which is equal to PAGESIZE on Unix systems.

Mac OS X と OpenVMS において、作成された memory mapping の正当性を確実にするために fileno で指定されたファイルディスクリプタは内部で自動的に物理的なストレージ (physical backing store) と同期されます。

この例は mmap の簡潔な使い方を示すものです:

import mmap

# write a simple example file
with open("hello.txt", "wb") as f:
    f.write("Hello Python!\n")

with open("hello.txt", "r+b") as f:
    # memory-map the file, size 0 means whole file
    mm = mmap.mmap(f.fileno(), 0)
    # read content via standard file methods
    print mm.readline()  # prints "Hello Python!"
    # read content via slice notation
    print mm[:5]  # prints "Hello"
    # update content using slice notation;
    # note that new content must have same size
    mm[6:] = " world!\n"
    # ... and read again using standard file methods
    mm.seek(0)
    print mm.readline()  # prints "Hello  world!"
    # close the map
    mm.close()

次の例では無名マップを作り親プロセスと子プロセスの間でデータのやりとりをしてみせます:

import mmap
import os

mm = mmap.mmap(-1, 13)
mm.write("Hello world!")

pid = os.fork()

if pid == 0:  # In a child process
    mm.seek(0)
    print mm.readline()

    mm.close()

メモリマップファイルオブジェクトは以下のメソッドをサポートしています:

close()

メモリマップファイルを閉じます。この呼出しの後にオブジェクトの他のメソッドの呼出すことは、 ValueError 例外の送出を引き起こします。このメソッドは開いたファイルのクローズはしません。

find(string[, start[, end]])

オブジェクト内の [start, end] の範囲に含まれている部分文字列 string が見つかった場所の最も小さいインデックスを返します。オプションの引数 startend はスライスに使われるときのように解釈されます。失敗したときには -1 を返します。

flush([offset, size])

Flushes changes made to the in-memory copy of a file back to disk. Without use of this call there is no guarantee that changes are written back before the object is destroyed. If offset and size are specified, only changes to the given range of bytes will be flushed to disk; otherwise, the whole extent of the mapping is flushed. offset must be a multiple of the PAGESIZE or ALLOCATIONGRANULARITY.

(Windows バージョン) ゼロ以外の値が返されたら成功を、ゼロは失敗を意味します。

(Unix バージョン) ゼロの値が返されたら成功を意味します。呼び出しが失敗すると例外が送出されます。

move(dest, src, count)

オフセット src から始まる count バイトをインデックス dest の位置へコピーします。もし mmap が ACCESS_READ で作成されていた場合、 TypeError 例外を発生させます。

read(num)

現在のファイル位置から最大で num バイト分の文字列を返します。ファイル位置は返したバイトの分だけ後ろの位置へ更新されます。

read_byte()

現在のファイル位置から長さ1の文字列を返します。ファイル位置は1だけ進みます。

readline()

現在のファイル位置から次の改行までの、1行を返します。

resize(newsize)

マップと元ファイル(がもしあれば)のサイズを変更します。もし mmap が ACCESS_READ または ACCESS_COPY で作成されたならば、マップサイズの変更は TypeError 例外を発生させます。

rfind(string[, start[, end]])

オブジェクト内の [start, end] の範囲に含まれている部分文字列 string が見つかった場所の最も大きいインデックスを返します。オプションの引数 startend はスライスに使われるときのように解釈されます。失敗したときには -1 を返します。

seek(pos[, whence])

ファイルの現在位置をセットします。 whence 引数はオプションであり、デフォルトは os.SEEK_SET つまり 0 (絶対位置)です。その他の値として、 os.SEEK_CUR つまり 1 (現在位置からの相対位置)と os.SEEK_END つまり 2 (ファイルの終わりからの相対位置)があります。

size()

ファイルの長さを返します。メモリマップ領域のサイズより大きいかもしれません。

tell()

ファイルポインタの現在位置を返します。

write(string)

メモリ内のファイルポインタの現在位置に string のバイト列を書き込みます。ファイル位置はバイト列が書き込まれた後の位置へ更新されます。もし mmap が ACCESS_READ で作成されていた場合、書き込み時に TypeError 例外を発生させるでしょう。

write_byte(byte)

メモリ内のファイルポインタの現在位置に単一文字の文字列 byte を書き込みます。ファイル位置は 1 だけ進みます。もし mmap が ACCESS_READ で作成されていた場合、書き込み時に TypeError 例外を発生させるでしょう。