Logging HOWTO

著者

Vinay Sajip <vinay_sajip at red-dove dot com>

基本 logging チュートリアル

logging は、あるソフトウェアが実行されているときに起こったイベントを追跡するための手段です。ソフトウェアの開発者は、特定のイベントが発生したことを示す logging の呼び出しをコードに加えます。イベントは、メッセージで記述され、これに変数データ (すなわち、イベントが起こる度に異なるかもしれないデータ) を加えることもできます。イベントには、開発者がそのイベントに定めた重要性も含まれます。重要性は、レベル (level)重大度 (severity) とも呼ばれます。

logging を使うとき

logging は、単純なロギングの用法に便利な関数群を提供しています。この中には、 debug(), info(), warning(), error() および critical() があります。logging を使うべき時を決めるには、よくあるタスクに使う最適なツールを述べた、以下のテーブルを参照してください。

行いたいタスク

そのタスクに最適なツール

コマンドラインスクリプトやプログラムで普通に使う、コンソール出力の表示

print()

プログラムの通常の操作中に発生したイベントの報告 (例えば、状態の監視や障害の分析)

logging.info() (または、診断のための特に詳細な出力には logging.debug())

特定のランタイムイベントに関わる警告の発行

その発行が避けられるもので、クライアントアプリケーションを修正してその警告を排除するべきなら warnings.warn()

アプリケーションにできることはないが、それでもイベントを記録するべきなら logging.warning()

特定のランタイムイベントに関わるエラーの報告

例外の送出

例外の送出をしないエラーの抑制 (例えば、長期のサーバプロセス中のエラーハンドラ)

特定のエラーやアプリケーションドメインに応じて logging.error(), logging.exception() または logging.critical()

ロギング関数は、そのイベントのレベルや重大度から名前を付けられ、それが追跡に使われます。標準のレベルとその適用範囲は、以下に (重大度が増す順に) 記述されています:

レベル

いつ使うか

DEBUG

おもに問題を診断するときにのみ関心があるような、詳細な情報。

INFO

想定された通りのことが起こったことの確認。

WARNING

想定外のことが起こった、または問題が近く起こりそうである (例えば、'disk space low') ことの表示。

ERROR

より重大な問題により、ソフトウェアがある機能を実行できないこと。

CRITICAL

プログラム自体が実行を続けられないことを表す、重大なエラー。

デフォルトのレベルは WARNING で、logging パッケージが他に設定されなければ、このレベル以上のイベントのみ追跡されます。

追跡されるイベントは、異なる方法で処理されます。追跡されたイベントを処理する最も単純な方法は、それをコンソールに表示することです。その他のよくある方法は、それをディスクファイルに書き出すことです。

簡単な例

ごく簡単な例は:

import logging
logging.warning('Watch out!')  # will print a message to the console
logging.info('I told you so')  # will not print anything

これらの行をスクリプトにタイプして実行すると、次のようにコンソールに出力されます:

WARNING:root:Watch out!

デフォルトのレベルは WARNING なので、INFO メッセージは現れません。表示されたメッセージには、レベルの表示と、ロギングの呼び出しで提供された、イベントの説明すなわち 'Watch out!' が含まれます。'root' の部分は今は気にしないでください。あとで説明します。実際の出力は、必要に応じてかなり柔軟に書式化できます。書式化操作もあとで説明します。

ファイルへの logging

logging イベントをファイルに記録するのは非常によくあるパターンなので次はこれを見て行きましょう。以下のサンプルを試すときは Python インタプリタを新しく起動して、上のセッションの続きにならないようにしてください:

import logging
logging.basicConfig(filename='example.log', encoding='utf-8', level=logging.DEBUG)
logging.debug('This message should go to the log file')
logging.info('So should this')
logging.warning('And this, too')
logging.error('And non-ASCII stuff, too, like Øresund and Malmö')

バージョン 3.9 で変更: encoding 引数が追加されました。以前のバージョンの Python では、あるいは指定されなかったら、エンコーディングには open() が使うデフォルト値が使われます。上の例に出てきていませんが、同じく渡せるようになった errors 引数は、エンコーディングエラーの扱いを決定します。利用可能な値およびデフォルト値については、 open() のドキュメントを参照してください。

そして、ファイルの中身を確認すると、ログメッセージが確認できます:

DEBUG:root:This message should go to the log file
INFO:root:So should this
WARNING:root:And this, too
ERROR:root:And non-ASCII stuff, too, like Øresund and Malmö

この例はまた、追跡のしきい値となるロギングレベルを設定する方法も示しています。この例では、しきい値を DEBUG に設定しているので、全てのメッセージが表示されています。

次のようなコマンドラインオプションでログレベルを設定したいと考え:

--log=INFO

--log に渡されたパラメータの値を変数 loglevel に保存しているとしたら、

getattr(logging, loglevel.upper())

というコードを使い、 basicConfig()level 引数に渡すべき値が得られます。ユーザの入力値をすべてエラーチェックしたくなり、次の例のように実装することもあるでしょう:

# assuming loglevel is bound to the string value obtained from the
# command line argument. Convert to upper case to allow the user to
# specify --log=DEBUG or --log=debug
numeric_level = getattr(logging, loglevel.upper(), None)
if not isinstance(numeric_level, int):
    raise ValueError('Invalid log level: %s' % loglevel)
logging.basicConfig(level=numeric_level, ...)

basicConfig() の呼び出しは debug(), info() などの呼び出しの 前に 行わなければなりません。さもなければ、他の関数の内部で basicConfig() がデフォルトのオプションで呼び出されてしまいます。この関数は一度限りの単純な設定機能を意図しているため、最初の呼び出しだけが実際に設定作業を行います: それ以降の呼び出しは実効的に何もしません。

上記のスクリプトを複数回実行すると、2 回目以降の実行によるメッセージは example.log に加えられます。以前の実行によるメッセージを記憶せず、実行ごとに新たに始めたいなら、上記の例での呼び出しを次のように変え、filemode 引数を指定する方法がとれます:

logging.basicConfig(filename='example.log', filemode='w', level=logging.DEBUG)

出力は先ほどと同じになりますが、ログファイルは追記されなくなり、以前の実行によるメッセージは失われます。

複数のモジュールからのロギング

プログラムが複数のモジュールでできているなら、そのロギングをどのように構成するかの例はこちらです:

# myapp.py
import logging
import mylib

def main():
    logging.basicConfig(filename='myapp.log', level=logging.INFO)
    logging.info('Started')
    mylib.do_something()
    logging.info('Finished')

if __name__ == '__main__':
    main()
# mylib.py
import logging

def do_something():
    logging.info('Doing something')

myapp.py を実行すれば、myapp.log でログが確認できます:

INFO:root:Started
INFO:root:Doing something
INFO:root:Finished

この mylib.py でのパターンは、複数のモジュールに一般化できます。なお、この簡単な使用パターンでは、ログファイルを見ることで、イベントの説明は見られますが、アプリケーションの どこから メッセージが来たのかを知ることはできません。メッセージの位置を追跡したいなら、このチュートリアルレベルを超えたドキュメントが必要になります -- 上級ロギングチュートリアル を参照してください。

変数データのロギング

変数データのログを取るには、イベント記述メッセージにフォーマット文字列を使い、引数に変数データを加えてください。例えば:

import logging
logging.warning('%s before you %s', 'Look', 'leap!')

により、次のように表示されます:

WARNING:root:Look before you leap!

ご覧の通り、イベント記述メッセージに変数データを統合するために、古い、% スタイルの文字列フォーマットを使っています。これは後方互換性のためです。logging パッケージは、 str.format()string.Template のような新しいフォーマットオプションよりも先に生まれました。新しいフォーマットオプションはサポートされて います が、その探求はこのチュートリアルでは対象としません。詳細は 固有の書式化スタイルをアプリケーション全体で使う を参照してください。

表示されるメッセージのフォーマットの変更

メッセージを表示するのに使われるフォーマットを変更するには、使いたいフォーマットを指定する必要があります:

import logging
logging.basicConfig(format='%(levelname)s:%(message)s', level=logging.DEBUG)
logging.debug('This message should appear on the console')
logging.info('So should this')
logging.warning('And this, too')

により、次のように表示されます:

DEBUG:This message should appear on the console
INFO:So should this
WARNING:And this, too

ご覧の通り、先の例に現れた 'root' が消失しています。フォーマット文字列に含めることができるものの一覧は、 LogRecord 属性 のドキュメントから参照できますが、単純な用途では、必要なものは levelname (重大度)、 message (変数データを含むイベント記述)、それともしかしたら、イベントがいつ起こったかという表示だけです。これは次の節で解説します。

メッセージ内での日付と時刻の表示

イベントの日付と時刻を表示するには、フォーマット文字列に '%(asctime)s' を置いてください:

import logging
logging.basicConfig(format='%(asctime)s %(message)s')
logging.warning('is when this event was logged.')

これは以下の様なフォーマットで表示されます:

2010-12-12 11:41:42,612 is when this event was logged.

デフォルトの日付と時間の表示フォーマット (上記の結果) は、ISO8601 や RFC 3339 に似ています。日付と時間のフォーマットをより詳細に制御する必要があるなら、以下の例の様に、 basicConfigdatefmt 引数を指定してください:

import logging
logging.basicConfig(format='%(asctime)s %(message)s', datefmt='%m/%d/%Y %I:%M:%S %p')
logging.warning('is when this event was logged.')

これは次のように表示されます:

12/12/2010 11:46:36 AM is when this event was logged.

datefmt 引数のフォーマットは、 time.strftime() でサポートされているものと同じです。

次のステップ

基本チュートリアルはこれで終わりです。あなたがロギングを使っていくためには、これで十分でしょう。logging パッケージが提供するものはもっとありますが、それを使いこなすためには、もうちょっと時間をかけて、以下のセクションを読む必要があります。その用意ができたら、好きな飲み物を持って、次に進みましょう。

ロギングを簡潔に行いたいなら、上記の例を使って、ロギングをあなたのスクリプトに組み込んでください。問題があったり理解出来ないことがあったら、comp.lang.python Usenet group (https://groups.google.com/forum/#!forum/comp.lang.python から利用できます) に質問を投稿してくだされば、そう遠くないうちに助けが得られるでしょう。

まだいますか?もう少し上級の、踏み込んだチュートリアルを綴った、幾つかの節を読み続けることができます。その後で、 Logging クックブック もご覧ください。

上級ロギングチュートリアル

logging ライブラリはモジュール方式のアプローチを取り、いくつかのカテゴリの部品を提供します。ロガー、ハンドラ、フィルタ、フォーマッタです。

  • ロガーは、アプリケーションコードが直接使うインターフェースを公開します。

  • ハンドラは、(ロガーによって生成された) ログ記録を適切な送信先に送ります。

  • フィルタは、どのログ記録を出力するかを決定する、きめ細かい機能を提供します。

  • フォーマッタは、ログ記録が最終的に出力されるレイアウトを指定します。

ログイベント情報は LogRecord インスタンスの形で、 logger, handler, filter, formatter の間でやりとりされます。

ロギングは、 Logger クラスのインスタンス (以下 ロガー) にメソッドを呼び出すことで実行されます。各インスタンスには名前があり、名前空間階層構造に、ドット (ピリオド) をセパレータとして、概念的に並べられています。例えば、 'scan' という名前のロガーは、ロガー 'scan.text', 'scan.html' および 'scan.pdf'の親です。ロガー名は、何でも望むものにでき、ロギングされたメッセージが発生した場所を指し示します。

ロガーに名前をつけるときの良い習慣は、ロギングを使う各モジュールに、以下のように名付けられた、モジュールレベルロガーを使うことです:

logger = logging.getLogger(__name__)

これにより、ロガー名はパッケージ/モジュール階層をなぞり、ロガー名だけで、どこでイベントのログが取られたか、直感的に明らかになります。

ロガーの階層構造の根源は、ルートロガーと呼ばれます。それが、関数 debug(), info(), warning(), error() および critical() によって使われるロガーとなります。これらの関数は単に、ルートロガーの同名のメソッドを呼び出します。これらの関数とメソッドは、同じ署名をもっています。ルートロガーの名前は、ログ出力では 'root' と表示されます。

もちろん、メッセージを異なる送信先に記録することも出来ます。このパッケージでは、ファイルへ、 HTTP GET/POST 先へ、 SMTP 経由で電子メールへ、汎用のソケットへ、キューへ、または Windows NT イベントログのような OS 毎のログ記録機構への、ログメッセージの書きこみがサポートされています。送信先は、 handler クラスによって取り扱われます。組み込みのハンドラクラスでは満たせないような、特殊な要件があるなら、独自のログ送信先を生成できます。

デフォルトでは、どのロギングメッセージに対しても、送信先は設定されていません。チュートリアルの例のように、 basicConfig() を使って、送信先 (コンソールやファイルなど) を指定できます。関数 debug(), info(), warning(), error() および critical() を呼び出すと、それらは送信先が設定されていないかを調べます。そして設定されていなければ、ルートロガーに委譲して実際にメッセージを出力する前に、コンソール (sys.stderr) を送信先に、デフォルトのフォーマットを表示されるメッセージに設定します。

basicConfig() が設定するデフォルトのメッセージのフォーマットは次のようになります:

severity:logger name:message

basicConfig()format キーワード引数にフォーマット文字列を渡すことで、これを変更できます。フォーマット文字列を構成するためのすべてのオプションは、 フォーマッタオブジェクト を参照してください。

Logging Flow

次の図はログイベントが logger と handler をどう流れるかを示しています。

../_images/logging_flow.png

ロガー

Logger オブジェクトの仕事は大きく三つに分かれます。一つ目は、アプリケーションが実行中にメッセージを記録できるように、いくつかのメソッドをアプリケーションから呼べるようにしています。二つ目に、ロガーオブジェクトはどのメッセージに対して作用するかを、深刻度 (デフォルトのフィルタ機構) またはフィルタオブジェクトに基づいて決定します。三つ目に、ロガーオブジェクトは関心を持っているすべてのログハンドラに関連するログメッセージを回送します。

とりわけ広く使われるロガーオブジェクトのメソッドは、二つのカテゴリーに分類できます: 設定とメッセージ送信です。

これらが設定メソッドの中でよく使われます:

  • Logger.setLevel() はロガーが扱うログメッセージの最も低い深刻度を指定します。組み込みの深刻度の中では DEBUG が一番低く、 CRITICAL が一番高くなります。たとえば、深刻度が INFO と設定されたロガーは INFO, WARNING, ERROR, CRITICAL のメッセージしか扱わず、 DEBUG メッセージは無視します。

  • Logger.addHandler()Logger.removeHandler() は、ハンドラオブジェクトをロガーオブジェクトから追加または削除します。ハンドラについては、 ハンドラ で詳しく述べます。

  • Logger.addFilter()Logger.removeFilter() はロガーオブジェクトにフィルタオブジェクトを追加または削除します。フィルタについては、 フィルタオブジェクト で詳しく述べます。

これらのメソッドを、生成したすべてのロガーに毎回呼び出さなければならないわけではありません。この節の最後の 2 段落を参照してください。

ロガーオブジェクトが設定されれば、以下のメソッドがログメッセージを生成します:

  • Logger.debug(), Logger.info(), Logger.warning(), Logger.error(), Logger.critical() はすべて、メッセージとメソッド名に対応したレベルでログ記録を作り出します。メッセージは実際にはフォーマット文字列であり、通常の文字列代入に使う %s, %d, %f などを含むことができます。残りの引数はメッセージの代入される位置に対応するオブジェクトのリストです。 **kwargs については、ログ記録メソッドが気にするキーワードは exc_info だけで、例外の情報をログに記録するかを決定するのに使います。

  • Logger.exception()Logger.error() と似たログメッセージを作成します。違いは Logger.exception() がスタックトレースを一緒にダンプすることです。このメソッドは例外ハンドラからだけ呼び出すようにしてください。

  • Logger.log() はログレベルを明示的な引数として受け取ります。これは上に挙げた便宜的なログレベル毎のメソッドを使うより少しコード量が多くなりますが、独自のログレベルを使うことができます。

getLogger() は、指定されればその特定の名前の、そうでなければ root のロガーインスタンスへの参照を返します。ロガーの名前はピリオド区切りの階層構造を表します。同じ名前で getLogger() を複数回呼び出した場合、同一のロガーオブジェクトへの参照が返されます。階層リストを下ったロガーはリスト上位のロガーの子です。たとえば、名前が foo であるロガーがあったとして、 foo.bar, foo.bar.baz, foo.bam といった名前のロガーはすべて foo の子孫になります。

ロガーには、有効レベル (effective level) の概念があります。ロガーにレベルが明示的に設定されていなければ、代わりに親のレベルがその有効レベルとして使われます。親のレベルが設定されなければ、その 親のレベルが確かめられ、明示的に設定されたレベルが見つかるまで祖先が探されます。ルートロガーは、必ず明示的なレベルが設定されています (デフォルトでは WARNING です)。イベントを処理するかを決定するとき、ロガーの有効レベルを使って、イベントがロガーのハンドラに渡されるかが決められます。

子ロガーはメッセージを親ロガーのハンドラに伝えます。このため、アプリケーションが使っているすべてのロガーのためのハンドラを定義して設定する必要はありません。トップレベルのロガーのためのハンドラだけ設定しておいて必要に応じて子ロガーを作成すれば十分です。(しかし、ロガーの propagate 属性を False に設定することで、伝播を抑制できます。)

ハンドラ

Handler オブジェクトは適切なログメッセージを (ログメッセージの深刻度に基づいて) ハンドラの指定された出力先に振り分けることに責任を持ちます。 Logger オブジェクトには addHandler() メソッドで 0 個以上のハンドラを追加することができます。例として、あるアプリケーションがすべてのログメッセージをログファイルに、 error 以上のすべてのログメッセージを標準出力に、 critical のメッセージはすべてメールアドレスに、それぞれ送りたいとします。この場合、 3 つの個別のハンドラがそれぞれの深刻度と宛先に応じて必要になります。

このライブラリには多くのハンドラが用意されています (便利なハンドラ を参照してください) が、このチュートリアルでは StreamHandlerFileHandler だけを例に取り上げます。

アプリケーション開発者にとってハンドラを扱う上で気にするべきメソッドは極々限られています。組み込みのハンドラオブジェクトを使う (つまり自作ハンドラを作らない) 開発者に関係あるハンドラのメソッドは、次の設定用のメソッドだけでしょう:

  • setLevel() メソッドは、ロガーオブジェクトの場合と同様に、適切な出力先に振り分けられるべき最も低い深刻度を指定します。なぜ 2 つも setLevel() メソッドがあるのでしょうか? ロガーで設定されるレベルは、付随するハンドラにどんな深刻度のメッセージを渡すか決めます。それぞれのハンドラで設定されるレベルは、そのハンドラがどのメッセージを転送するべきか決めます。

  • setFormatter() でこのハンドラが使用する Formatter オブジェクトを選択します。

  • addFilter() および removeFilter() はそれぞれハンドラへのフィルタオブジェクトの設定と解除を行います。

アプリケーションのコード中では Handler のインスタンスを直接インスタンス化して使ってはなりません。代わりに、 Handler クラスはすべてのハンドラが持つべきインターフェイスを定義する基底クラスであり、子クラスが使える (もしくはオーバライドできる) いくつかのデフォルトの振る舞いを規定します。

フォーマッタ

フォーマッタオブジェクトは最終的なログメッセージの順序、構造および内容を設定します。基底クラスである logging.Handler とは違って、アプリケーションのコードはフォーマッタクラスをインスタンス化しても構いません。特別な振る舞いをさせたいアプリケーションではフォーマッタのサブクラスを使う可能性もあります。コンストラクタは三つのオプション引数を取ります -- メッセージのフォーマット文字列、日付のフォーマット文字列、スタイル標識です。

logging.Formatter.__init__(fmt=None, datefmt=None, style='%')

フォーマット文字列に何も渡さない場合は、デフォルトで行メッセージが利用されます。また、日付フォーマットに何も渡さない場合は、デフォルトで以下のフォーマットが利用されます:

%Y-%m-%d %H:%M:%S

時刻の末尾にはミリ秒が付きます。 style'%', '{', または '{TX-PL-LABEL}#x27; のいずれかです。特に指定がなければ '%' が使われます。

style'%' の場合、メッセージフォーマット文字列では %(<dictionary key>)s 形式の置換文字列が使われます; キーに指定できる属性名は LogRecord 属性 に文書化されています。 style が '{' の場合、メッセージフォーマット文字列は (キーワード引数を使う) str.format() と互換となります。 style が '$' の場合、メッセージフォーマット文字列は string.Template.substitute() で期待されているものと一致します。

バージョン 3.2 で変更: style パラメータが追加されました。

次のメッセージフォーマット文字列は、人が読みやすい形式の時刻、メッセージの深刻度、およびメッセージの内容を、順番に出力します:

'%(asctime)s - %(levelname)s - %(message)s'

フォーマッタは、ユーザが設定できる関数を使って、生成時刻をタプルに記録します。デフォルトでは、 time.localtime() が使われます。特定のフォーマッタインスタンスに対してこれを変更するには、インスタンスの converter 属性を time.localtime()time.gmtime() と同じ署名をもつ関数に設定してください。すべてのフォーマッタインスタンスに対してこれを変更するには、例えば全てのロギング時刻を GMT で表示するには、フォーマッタクラスの converter 属性を (GMT 表示の time.gmtime に) 設定してください。

ロギングの環境設定

プログラマは、ロギングを 3 種類の方法で設定できます:

  1. 上述の設定メソッドを呼び出す Python コードを明示的に使って、ロガー、ハンドラ、そしてフォーマッタを生成する。

  2. ロギング設定ファイルを作り、それを fileConfig() 関数を使って読み込む。

  3. 設定情報の辞書を作り、それを dictConfig() 関数に渡す。

最後の2つの選択肢については、 環境設定のための関数 で解説しています。以下の例では、Python コードを使って、とても簡単なロガー、コンソールハンドラ、そして簡単なフォーマッタを設定しています:

import logging

# create logger
logger = logging.getLogger('simple_example')
logger.setLevel(logging.DEBUG)

# create console handler and set level to debug
ch = logging.StreamHandler()
ch.setLevel(logging.DEBUG)

# create formatter
formatter = logging.Formatter('%(asctime)s - %(name)s - %(levelname)s - %(message)s')

# add formatter to ch
ch.setFormatter(formatter)

# add ch to logger
logger.addHandler(ch)

# 'application' code
logger.debug('debug message')
logger.info('info message')
logger.warning('warn message')
logger.error('error message')
logger.critical('critical message')

このモジュールを実行すると、コマンドラインによって以下の出力がなされます:

$ python simple_logging_module.py
2005-03-19 15:10:26,618 - simple_example - DEBUG - debug message
2005-03-19 15:10:26,620 - simple_example - INFO - info message
2005-03-19 15:10:26,695 - simple_example - WARNING - warn message
2005-03-19 15:10:26,697 - simple_example - ERROR - error message
2005-03-19 15:10:26,773 - simple_example - CRITICAL - critical message

以下の Python モジュールは、ロガー、ハンドラ、フォーマッタをほとんど上述の例と同じように生成していますが、オブジェクト名だけが異なります:

import logging
import logging.config

logging.config.fileConfig('logging.conf')

# create logger
logger = logging.getLogger('simpleExample')

# 'application' code
logger.debug('debug message')
logger.info('info message')
logger.warning('warn message')
logger.error('error message')
logger.critical('critical message')

これが logging.conf ファイルです:

[loggers]
keys=root,simpleExample

[handlers]
keys=consoleHandler

[formatters]
keys=simpleFormatter

[logger_root]
level=DEBUG
handlers=consoleHandler

[logger_simpleExample]
level=DEBUG
handlers=consoleHandler
qualname=simpleExample
propagate=0

[handler_consoleHandler]
class=StreamHandler
level=DEBUG
formatter=simpleFormatter
args=(sys.stdout,)

[formatter_simpleFormatter]
format=%(asctime)s - %(name)s - %(levelname)s - %(message)s

出力は、設定ファイルに基づく例とだいたい同じです:

$ python simple_logging_config.py
2005-03-19 15:38:55,977 - simpleExample - DEBUG - debug message
2005-03-19 15:38:55,979 - simpleExample - INFO - info message
2005-03-19 15:38:56,054 - simpleExample - WARNING - warn message
2005-03-19 15:38:56,055 - simpleExample - ERROR - error message
2005-03-19 15:38:56,130 - simpleExample - CRITICAL - critical message

この通り、設定ファイルの方法は、主に設定とコードが分かれ、非コーダがロギングプロパティを変えやすくなるという点で、Python コードの方法より少し優れています。

警告

fileConfig() 関数はデフォルト引数 disable_existing_loggers を取り、後方互換性のためにデフォルト値は True になっています。 これはあなたの望むものかもしれませんし、そうでないかもしれません。というのは、設定で明示的に指定したクラス (もしくはその親クラス) を除いて、 fileConfig() が呼び出される前に存在した非ルートロガーを無効化してしまうからです。 より詳細なことはリファレンスを参照し、望むならこの引数に False を指定してください。

dictConfig() に渡される辞書でも、キー disable_existing_loggers で真偽値を指定することができ、辞書の中で明示的に指定しなかった場合はデフォルトで True と解釈されます。これは上で説明したロガー無効化につながりますが、それを望まないこともあるでしょう - その場合は、明示的にキーを与えて値を False にしてください。

なお、設定ファイルで参照されるクラス名は、logging モジュールに対して相対であるか、通常のインポート機構を使って解決される絶対である値でなければなりません。従って、(logging モジュールに相対な) WatchedFileHandler または (Python インポートパスとして mypackage が使えるとき、パッケージ mypackage のモジュール mymodule で定義されたクラスに) mypackage.mymodule.MyHandler のどちらかが使えます。

Python 3.2 では、ロギングを設定するのに新しく、辞書に設定情報を持たせる手段が導入されました。これは、上で概説した設定ファイルに基づく方法による機能の上位版を提供し、新しいアプリケーションやデプロイにはこのメソッドが推奨されます。Python の辞書を使って設定情報を保持し、辞書は他の用途にも使えるので、設定の選択肢が広がります。例えば、JSON フォーマットの設定ファイルや、YAML 処理機能が使えれば YAML フォーマットのファイルを使って、設定辞書を構成できます。また、もちろん、Python コードで辞書を構成し、ソケットを通して pickle 化された形式を受け取るなど、アプリケーションで意味があるいかなるやり方でも使えます。

以下は、上記と同じ設定を辞書ベースの新しい手法で記載した YAML 形式の例です:

version: 1
formatters:
  simple:
    format: '%(asctime)s - %(name)s - %(levelname)s - %(message)s'
handlers:
  console:
    class: logging.StreamHandler
    level: DEBUG
    formatter: simple
    stream: ext://sys.stdout
loggers:
  simpleExample:
    level: DEBUG
    handlers: [console]
    propagate: no
root:
  level: DEBUG
  handlers: [console]

辞書を使ったロギングについて詳細は、 環境設定のための関数 を参照してください。

環境設定が与えられないとどうなるか

ロギング環境設定を与えられないと、ロギングイベントを出力しなければならないのに、イベントを出力するハンドラが見つからないことがあります。この状況での logging パッケージの振る舞いは、Python のバージョンに依ります。

Python 3.2 より前のバージョンでは、振る舞いは以下の通りです:

  • logging.raiseExceptionsFalse (製品モード) なら、イベントは黙って捨てられます。

  • logging.raiseExceptionsTrue (開発モード) なら、メッセージ 'No handlers could be found for logger X.Y.Z' が一度表示されます。

Python 3.2 以降バージョンでは、振る舞いは以下の通りです:

  • イベントは、 logging.lastResort に格納された「最終手段ハンドラ」を使用して出力されます。この内部的なハンドラはどんなロガーにも関係しておらず、イベント記述メッセージを現在の sys.stderr の値に書く StreamHandler のように動作します (したがって、あらゆるリダイレクトの効果が反映されます)。メッセージに対してフォーマットは行われません - 裸のイベント記述メッセージだけが印刷されます。ハンドラのレベルは WARNING にセットされ、これより重大度が大きなすべてのイベントが出力されます。

3.2 より前の動作にするために、logging.lastResortNone に設定することもできます。

ライブラリのためのロギングの設定

ロギングを使うライブラリを開発するときは、ライブラリがどのようにロギングを使うのか、例えば使われているロガーの名前などを、ドキュメントにしておくべきです。ロギングの設定については、いくつか考えておくべきこともあります。使っているアプリケーションがロギングを使っていなくて、ライブラリコードがロギングを呼び出すと、(前の節で解説したように) 重大度 WARNING 以上のイベントが、sys.stderr に表示されます。これが最高のデフォルトの振る舞いと見なされます。

何らかの理由でロギング設定がなされていないときにメッセージを表示 させたくない のであれば、ライブラリのトップレベルのロガーに何もしないハンドラを取り付けられます。ライブラリの全てのイベントに対してそのハンドラが見つかるので、メッセージが表示されなくなります。ライブラリのユーザーがアプリケーションのためにロギングを設定する場合、おそらくハンドラが追加され、そしてレベルが適切に設定された場合に、ライブラリコード内でのロギングの呼び出しは通常通りそのハンドラに出力を送るようになります。

何もしないハンドラ NullHandler (Python 3.1 以降) は、 logging パッケージに含まれます。このハンドラのインスタンスを、 (ロギング設定がなされていないときにライブラリのログイベントを sys.stderr に出力させたく ないなら) ライブラリの名前空間で使われるトップレベルロガーに取り付けられます。ライブラリ foo によるすべてのロギングが、 'foo.x', 'foo.x.y' その他に該当する名前のロガーによってなされるなら:

import logging
logging.getLogger('foo').addHandler(logging.NullHandler())

とすれば望んだ効果が得られるでしょう。組織が複数のライブラリを作り出すなら、指定されるロガー名は単に 'foo' ではなく、'orgname.foo' になります。

注釈

ライブラリのロガーには、 NullHandler 以外のハンドラを追加しない ことを強く推奨します。これは、ハンドラの設定が、あなたのライブラリを使うアプリケーション開発者にも伝播するからです。アプリケーション開発者は、対象となる聴衆と、そのアプリケーションにどのハンドラが最も適しているかを知っています。ハンドラを 'ボンネットの中で' 加えてしまうと、ユニットテストをして必要に応じたログを送達する能力に干渉しかねません。

ロギングレベル

ログレベルの数値は以下の表のように与えられています。これらは基本的に自分でレベルを定義したい人のためのもので、定義するレベルを既存のレベルの間に位置づけるためには具体的な値が必要になります。もし数値が他のレベルと同じだったら、既存の値は上書きされその名前は失われます。

レベル

数値

CRITICAL

50

ERROR

40

WARNING

30

INFO

20

DEBUG

10

NOTSET

0

レベルはロガーに関連付けることもでき、開発者が設定することも、保存されたログ記録設定を読み込む際に設定することもできます。ロガーに対してログ記録メソッドが呼び出されると、ロガーは自らのレベルとメソッド呼び出しに関連付けられたレベルを比較します。ロガーのレベルがメソッド呼び出しのレベルよりも高い場合、実際のログメッセージは生成されません。これはログ出力の冗長性を制御するための基本的なメカニズムです。

ログ記録されるメッセージは LogRecord クラスのインスタンスとしてエンコードされます。ロガーがあるイベントを実際にログ出力すると決定した場合、ログメッセージから LogRecord インスタンスが生成されます。

ログ記録されるメッセージは、ハンドラ (handlers) を通してディスパッチ機構にかけられます。ハンドラは Handler クラスのサブクラスのインスタンスで、ログ記録された (LogRecord 形式の) メッセージが、そのメッセージの伝達対象となる相手 (エンドユーザ、サポートデスクのスタッフ、システム管理者、開発者) に行き着くようにする役割を持ちます。ハンドラには特定の出力先を意図された LogRecord インスタンスが渡されます。各ロガーは 0 個以上のハンドラを (LoggeraddHandler() メソッド) で関連付けることができます。ロガーに直接関連付けられたハンドラに加えて、ロガーの上位にあるロガーすべてに関連付けられたハンドラ がメッセージを処理する際に呼び出されます (ただしロガーの propagate フラグが false 値にセットされている場合を除きます。その場合は、祖先ハンドラへの伝搬はそこで止まります)。

ロガーと同様に、ハンドラは関連付けられたレベルを持つことができます。ハンドラのレベルはロガーのレベルと同じ方法で、フィルタとして働きます。ハンドラがあるイベントを実際に処理すると決定した場合、 emit() メソッドが使われ、メッセージを出力先に送信します。ほとんどのユーザ定義の Handler のサブクラスで、この emit() をオーバライドする必要があるでしょう。

カスタムレベル

独自のレベルを定義することは可能ですが、必須ではなく、実経験上は既存のレベルが選ばれます。しかし、カスタムレベルが必要だと確信するなら、レベルの定義には多大な注意を払うべきで、ライブラリの開発の際、カスタムレベルを定義することはとても悪いアイデア になり得ます。これは、複数のライブラリの作者がみな独自のカスタムレベルを定義すると、与えられた数値が異なるライブラリで異なる意味になりえるため、開発者がこれを制御または解釈するのが難しくなるからです。

便利なハンドラ

基底の Handler クラスに加え、多くの便利なサブクラスが提供されています:

  1. StreamHandler インスタンスは、メッセージをストリーム (ファイル風オブジェクト) に送ります。

  2. FileHandler インスタンスは、メッセージをディスクファイルに送ります。

  3. BaseRotatingHandler は、ある地点でログファイルを循環させるハンドラの基底クラスです。これを直接インスタンス化することは意図されていません。代わりに、 RotatingFileHandlerTimedRotatingFileHandler を使用してください。

  4. RotatingFileHandler インスタンスは、メッセージをディスクファイルに送り、最大ログファイル数とログファイル循環をサポートします。

  5. TimedRotatingFileHandler インスタンスは、メッセージをディスクファイルに送り、ログファイルを特定時間のインターバルで循環します。

  6. SocketHandler インスタンスは、 TCP/IP ソケットにメッセージを送ります。バージョン3.4 から、 Unixドメインソケットもサポートされます。

  7. DatagramHandler インスタンスは UDP ソケットにメッセージを送ります。バージョン 3.4 から、Unix ドメインソケットもサポートされます。

  8. SMTPHandler インスタンスは、メッセージを指示された email アドレスに送ります。

  9. SysLogHandler インスタンスは、メッセージを、必要ならばリモートマシンの、Unix syslog daemon に送ります。

  10. NTEventLogHandler インスタンスは、メッセージを Windows NT/2000/XP イベントログに送ります。

  11. MemoryHandler インスタンスは、メッセージを、特定の基準が満たされる度に流される、メモリ中のバッファに送ります。

  12. HTTPHandler インスタンスは、メッセージを、 GET または POST セマンティクスを使って、HTTP サーバに送ります。

  13. WatchedFileHandler インスタンスは、ロギングする先のファイルを監視します。ファイルが変更されると、そのファイルは閉じられ、ファイル名を使って再び開かれます。このハンドラは Unix 系のシステムにのみ便利です。Windows は、使われている基の機構をサポートしていません。

  14. QueueHandler インスタンスは、 queue モジュールや multiprocessing モジュールなどで実装されているキューにメッセージを送ります。

  15. NullHandler インスタンスは、エラーメッセージに対して何もしません。これは、ライブラリ開発者がロギングを使いたいが、ライブラリのユーザがロギングを設定してなくても 'No handlers could be found for logger XXX' メッセージを表示させたくない場合に使われます。詳しい情報は ライブラリのためのロギングの設定 を参照してください。

バージョン 3.1 で追加: NullHandler クラス。

バージョン 3.2 で追加: QueueHandler クラス。

コア logging パッケージで、 NullHandler, StreamHandler および FileHandler クラスが定義されています。その他のハンドラは、サブモジュールの logging.handlers で定義されています。(環境設定機能のためのサブモジュール、 logging.config もあります。)

ログメッセージは、 Formatter クラスのインスタンスを通してフォーマット化してから表示されます。このインスタンスは、 % 演算子と辞書で使うのに適切なフォーマット文字列で初期化されます。

複数のメッセージを一括してフォーマット化するには、 BufferingFormatter が使えます。(一連の文字列のそれぞれに適用される) フォーマット文字列に加え、ヘッダとトレーラフォーマット文字列も提供されています。

ロガーレベルおよび/またはハンドラレベルに基づくフィルタリングで十分でなければ、 Filter のインスタンスを LoggerHandler インスタンスの両方に (addFilter() を通して) 加えることができます。メッセージの処理を続ける前に、ロガーもハンドラも、全てのフィルタに許可を求めます。フィルタのいずれかが偽値を返したら、メッセージの処理は続けられません。

基本の Filter 機能では、特定のロガー名でのフィルタリングをできます。この機能が使われると、指名されたロガーに送られたメッセージとその子だけがフィルタを通り、その他は落とされます。

ログ記録中に発生する例外

logging パッケージは、ログを生成している間に起こる例外を飲み込むように設計されています。これは、ログ記録イベントを扱っている間に発生するエラー (ログ記録の設定ミス、ネットワークまたは他の同様のエラー) によってログ記録を使用するアプリケーションが早期に終了しないようにするためです。

SystemExitKeyboardInterrupt 例外は決して飲み込まれません。 Handler サブクラスの emit() メソッドの間に起こる他の例外は、 handleError() メソッドに渡されます。

HandlerhandleError() のデフォルト実装は、モジュールレベル変数 raiseExceptions が設定されているかどうかチェックします。設定されているなら、トレースバックが sys.stderr に出力されます。設定されていないなら、例外は飲み込まれます。

注釈

raiseExceptions のデフォルト値は True です。これは、開発の間に起こるどんな例外についても通常は通知してほしいからです。実運用環境では raiseExceptionsFalse に設定することをお勧めします。

任意のオブジェクトをメッセージに使用する

前の節とそこで挙げた例では、イベントを記録するときに渡されたメッセージが文字列であると仮定していました。しかし、これは唯一の可能性ではありません。メッセージとして任意のオブジェクトを渡すことができます。そして、ロギングシステムがそのオブジェクトを文字列表現に変換する必要があるとき、オブジェクトの __str__() メソッドが呼び出されます。実際、そうしたければ、文字列表現を計算することを完全に避けることができます - 例えば、 SocketHandler は、イベントを pickle してネットワーク上で送信することでログ出力します。

最適化

message 引数の整形は、必要になるまで延期されます。しかしながら、ログ記録メソッドに渡す引数を計算するだけでもコストがかかる場合があります。ロガーが単にイベントを捨てるなら、その計算を避けたいと考えるかもしれません。どうするかを決定するために isEnabledFor() メソッドを呼ぶことができます。このメソッドは引数にレベルを取って、そのレベルの呼び出しに対して Logger がイベントを生成するなら true を返します。このようにコードを書くことができます:

if logger.isEnabledFor(logging.DEBUG):
    logger.debug('Message with %s, %s', expensive_func1(),
                                        expensive_func2())

このようにすると、ロガーの閾値が DEBUG より上に設定されている場合、 expensive_func1()expensive_func2() の呼び出しは行われません。

注釈

ある種のケースでは、 isEnabledFor() それ自身があなたが期待するよりも高価になる場合があります(たとえば明示的なレベル指定がロガー階層の上位のみに設定されていて、ロガーが深くネストされているような場合です)。そのようなケース(あるいはタイトなループ内でメソッド呼び出しを避けたい場合)は、 isEnabledFor() 結果をローカルにもしくはインスタンス変数としてキャッシュし、メソッドを毎回呼び出すかわりに使えば良いです。そのようなキャッシュ値は、(まったく一般的ではありませんが)ロギング設定がアプリケーション実行中に動的に変更された場合にのみ再計算が必要でしょう。

これ以外にも、どんなログ情報が集められるかについてより正確なコントロールを必要とする、特定のアプリケーションでできる最適化があります。これは、ログ記録の間の不要な処理を避けるためにできることのリストです:

不要な情報

それを避ける方法

呼び出しがどこから行われたかに関する情報。

logging._srcfileNone にする。このことにより sys._getframe() 呼び出しを避けることが出来、PyPy のような環境(sys._getframe() の高速化が出来ない)において高速化の役に立ちます。

スレッド情報。

logging.logThreadsFalse にする。

現在のプロセスID(os.getpid())

logging.logProcessesFalse にする。

マルチプロセスの制御に multiprocessing を使っているときの、現在のプロセス名

logging.logMultiprocessingFalse にする。

また、コア logging モジュールが基本的なハンドラだけを含んでいることに注意してください。 logging.handlerslogging.config をインポートしなければ、余分なメモリを消費することはありません。

参考

logging モジュール

logging モジュールの API リファレンス。

logging.config モジュール

logging モジュールの環境設定 API です。

logging.handlers モジュール

logging モジュールに含まれる、便利なハンドラです。

ロギングクックブック