9.2. math --- 数学関数

このモジュールはいつでも利用できます。標準 C で定義されている数学関数にアクセスすることができます。

これらの関数で複素数を使うことはできません。複素数に対応する必要があるならば、 cmath モジュールにある同じ名前の関数を使ってください。ほとんどのユーザーは複素数を理解するのに必要なだけの数学を勉強したくないので、複素数に対応した関数と対応していない関数の区別がされています。これらの関数では複素数が利用できないため、引数に複素数を渡されると、複素数の結果が返るのではなく例外が発生します。その結果、どういった理由で例外が送出されたかに早い段階で気づく事ができます。

このモジュールでは次の関数を提供しています。明示的な注記のない限り、戻り値は全て浮動小数点数になります。

9.2.1. 数論および数表現にまつわる関数です

math.ceil(x)

x の天井値 (ceil)、すなわち x 以上の最も小さい整数を float 型で返します。

math.copysign(x, y)

xy の符号を付けて返します。符号付きのゼロをサポートしているプラットフォームでは、 copysign(1.0, -0.0)-1.0 を返します。

バージョン 2.6 で追加.

math.fabs(x)

x の絶対値を返します。

math.factorial(x)

x の階乗を返します。 x が整数値でなかったり負であったりするときは、 ValueError を送出します。

バージョン 2.6 で追加.

math.floor(x)

x の床値 (floor)、すなわち x 以下の最も大きい整数を float型で返します。

math.fmod(x, y)

プラットフォームの C ライブラリで定義されている fmod(x, y) を返します。 Python の x % y という式は必ずしも同じ結果を返さないということに注意してください。 C 標準の要求では、 fmod() は除算の結果が x と同じ符号になり、大きさが abs(y) より小さくなるような整数 n については fmod(x, y) が厳密に (数学的に、つまり限りなく高い精度で) x - n*y と等価であるよう求めています。 Python の x % y は、 y と同じ符号の結果を返し、浮動小数点の引数に対して厳密な解を出せないことがあります。例えば、 fmod(-1e-100, 1e100)-1e-100 ですが、 Python の -1e-100 % 1e1001e100-1e-100 になり、浮動小数点型で厳密に表現できず、ややこしいことに 1e100 に丸められます。このため、一般には浮動小数点の場合には関数 fmod() 、整数の場合には x % y を使う方がよいでしょう。

math.frexp(x)

x の仮数と指数を (m, e) のペアとして返します。m はfloat型で、e は厳密に x == m * 2**e であるような整数型です。x がゼロの場合は、(0.0, 0) を返し、それ以外の場合は、0.5 <= abs(m) < 1 を返します。これは浮動小数点型の内部表現を可搬性を保ったまま "分解 (pick apart)" するためです。

math.fsum(iterable)

iterable 中の値の浮動小数点数の正確な和を返します。複数の部分和を追跡することで桁落ちを防ぎます:

>>> sum([.1, .1, .1, .1, .1, .1, .1, .1, .1, .1])
0.9999999999999999
>>> fsum([.1, .1, .1, .1, .1, .1, .1, .1, .1, .1])
1.0

アルゴリズムの正確性は IEEE-754 演算の保証と丸めモードが偶数丸め (half-even) である典型的な場合に依存します。Windows以外の幾つかのビルドでは、依存するCライブラリが、拡張精度の加算と時々時々合計の中間値を double 型へ丸めを行ってしまい、最下位ビットの消失が発生します。

より詳細な議論と代替となる二つのアプローチについては、ASPN cookbook recipes for accurate floating point summation をご覧下さい。

バージョン 2.6 で追加.

math.isinf(x)

浮動小数点数 x が正または負の無限大であるかチェックします。

バージョン 2.6 で追加.

math.isnan(x)

浮動小数点数 x が NaN (not a number) であるかチェックします。 NaN についての詳しい情報は、 IEEE 754 標準を参照してください。

バージョン 2.6 で追加.

math.ldexp(x, i)

x * (2**i) を返します。これは本質的に frexp() の逆関数です。

math.modf(x)

x の小数部分と整数部分を返します。両方の結果は x の符号を受け継ぎます。整数部はfloat型で返されます。

math.trunc(x)

xIntegral 値 (たいてい長整数) へ切り捨てられた Real 値を返します。 x.__trunc__() メソッドに処理を委譲します。

バージョン 2.6 で追加.

frexp()modf() は C のものとは異なった呼び出し/返しパターンを持っていることに注意してください。引数を1つだけ受け取り、1組のペアになった値を返すので、2つ目の戻り値を '出力用の引数' 経由で返したりはしません (Python には出力用の引数はありません)。

ceil()floor() 、および modf() 関数については、非常に大きな浮動小数点数が 全て 整数そのものになるということに注意してください。通常、Python の浮動小数点型は 53 ビット以上の精度をもたない (プラットフォームにおける C double 型と同じ) ので、結果的に abs(x) >= 2**52 であるような浮動小数点型 x は小数部分を持たなくなるのです。

9.2.2. 指数関数と対数関数

math.exp(x)

e**x を返します。

math.expm1(x)

e**x - 1 を返します。小さな浮動小数点数 x について exp(x) - 1 を計算すると、引き算により 桁落ち する可能性がありますが、この expm1() 関数は、完全な精度でこの値を計算します:

>>> from math import exp, expm1
>>> exp(1e-5) - 1  # gives result accurate to 11 places
1.0000050000069649e-05
>>> expm1(1e-5)    # result accurate to full precision
1.0000050000166668e-05

バージョン 2.7 で追加.

math.log(x[, base])

引数が1つの場合、x の (e を底とする)自然対数を返します。

引数が2つの場合、log(x)/log(base) として求められる base を底とした x の対数を返します。

バージョン 2.3 で変更: 引数 base を追加

math.log1p(x)

1+x の自然対数(つまり底 e の対数)を返します。結果はゼロに近い x に対して正確になるような方法で計算されます。

バージョン 2.6 で追加.

math.log10(x)

x の10を底とした対数(常用対数)を返します。この関数は通常、log(x, 10) よりも高精度です。

math.pow(x, y)

xy 乗を返します。例外的な場合については、 C99 標準の付録 'F' に可能な限り従います。特に、 pow(1.0, x)pow(x, 0.0) は、たとえ x が零や NaN でも、常に 1.0 を返します。もし xy の両方が有限の値で、 x が負、 y が整数でない場合、 pow(x, y) は未定義で、 ValueError を送出します。

組み込みの ** 演算子と違って、 math.pow() は両方の引数を float 型に変換します。正確な整数の冪乗を計算するには ** もしくは組み込みの pow() 関数を使ってください。

バージョン 2.6 で変更: 以前は 1**nannan**0 の結果は未定義でした。

math.sqrt(x)

x の平方根を返します。

9.2.3. 三角関数

math.acos(x)

x の逆余弦を、ラジアンで返します。

math.asin(x)

x の逆正弦を、ラジアンで返します。

math.atan(x)

x の逆正接を、ラジアンで返します。

math.atan2(y, x)

atan(y / x) を、ラジアンで返します。戻り値は -pi から pi の間になります。この角度は、極座標平面において原点から (x, y) へのベクトルが X 軸の正の方向となす角です。 atan2() のポイントは、両方の入力の符号が既知であるために、位相角の正しい象限を計算できることにあります。例えば、 atan(1)atan2(1, 1) はいずれも pi/4 ですが、 atan2(-1, -1)-3*pi/4 になります。

math.cos(x)

x ラジアンの余弦を返します。

math.hypot(x, y)

ユークリッドノルム(sqrt(x*x + y*y))を返します。これは原点から点 (x, y) のベクトルの長さです。

math.sin(x)

x ラジアンの正弦を返します。

math.tan(x)

x ラジアンの正接を返します。

9.2.4. 角度変換

math.degrees(x)

x をラジアンから度に変換します。

math.radians(x)

x を度からラジアンに変換します。

9.2.5. 双曲線関数

math.acosh(x)

x の逆双曲線余弦を返します。

バージョン 2.6 で追加.

math.asinh(x)

x の逆双曲線正弦を返します。

バージョン 2.6 で追加.

math.atanh(x)

x の逆双曲線正接を返します。

バージョン 2.6 で追加.

math.cosh(x)

x の双曲線余弦を返します。

math.sinh(x)

x の双曲線正弦を返します。

math.tanh(x)

x の双曲線正接を返します。

9.2.6. 特殊な関数

math.erf(x)

x の誤差関数を返します。

バージョン 2.7 で追加.

math.erfc(x)

x の相補誤差関数を返します。

バージョン 2.7 で追加.

math.gamma(x)

x のガンマ関数を返します。

バージョン 2.7 で追加.

math.lgamma(x)

x のガンマ関数の絶対値の自然対数を返します。

バージョン 2.7 で追加.

9.2.7. 定数

math.pi

利用可能な精度の、数学定数π = 3.141592... (円周率)。

math.e

利用可能な精度の、数学定数 e = 2.718281... (自然対数の底)。

math モジュールは、ほとんどが実行プラットフォームにおける C 言語の数学ライブラリ関数に対する薄いラッパでできています。例外的な場合での挙動は、適切である限り C99 標準の Annex F に従います。現在の実装では、(C99 Annex F で不正な演算やゼロ除算を通知することが推奨されている) sqrt(-1.0)log(0.0) といった不正な操作に対して ValueError を発生させ、(例えば exp(1000.0) のような) 演算結果がオーバーフローする場合には OverflowError を発生させます。上記の関数群は、1つ以上の引数が NaN であった場合を除いて、 NaN を返しません。引数に NaN が与えられた場合は、殆どの関数は NaN を返しますが、 (C99 Annex F に従って) 別の動作をする場合があります。例えば、 pow(float('nan'), 0.0)hypot(float('nan'), float('inf')) といった場合です。訳注: 例外が発生せずに結果が返ると、計算結果がおかしくなった原因が複素数を渡したためだということに気づくのが遅れる可能性があります。

Python は signaling NaN と quiet NaN を区別せず、signaling NaN に対する挙動は未定義とされていることに注意してください。典型的な挙動は、全ての NaN を quiet NaN として扱うことです。

バージョン 2.6 で変更: 特別なケースにおける挙動は、 C99 Annex F に従おうとするようになりました。以前のバージョンの Python では、特別なケースでの挙動は曖昧にしか定義されていませんでした。

参考

cmath モジュール

これらの多くの関数の複素数版。