collections.abc --- コンテナの抽象基底クラス

Added in version 3.3: 以前はこのモジュールは collections モジュールの一部でした。

ソースコード: Lib/_collections_abc.py


このモジュールは、 抽象基底クラス を提供します。抽象基底クラスは、クラスが特定のインターフェースを提供しているか、例えば ハッシュ可能 であるかや マッピング であるかを判定します。

issubclass()isinstance() を使ったインターフェースに対するテストは、以下の3つのいずれかの方法で動作します。

1) 新しく定義したクラスは抽象基底クラスのいずれかを直接継承することができます。その場合クラスは必要な抽象メソッドを提供しなければなりません。残りのミックスインメソッドは継承により引き継がれますが、必要ならオーバーライドすることができます。その他のメソッドは必要に応じて追加することができます:

class C(Sequence):                      # Direct inheritance
    def __init__(self): ...             # Extra method not required by the ABC
    def __getitem__(self, index):  ...  # Required abstract method
    def __len__(self):  ...             # Required abstract method
    def count(self, value): ...         # Optionally override a mixin method
>>> issubclass(C, Sequence)
True
>>> isinstance(C(), Sequence)
True

2) 既存のクラスや組み込みのクラスを "仮想派生クラス" として ABC に登録することができます。これらのクラスは、全ての抽象メソッドとミックスインメソッドを含む完全な API を定義する必要があります。これにより、そのクラスが完全なインターフェースをサポートしているかどうかを、ユーザーが issubclass()isinstance() で判断できるようになります。このルールの例外は、残りの API から自動的に推測ができるようなメソッドです:

class D:                                 # No inheritance
    def __init__(self): ...              # Extra method not required by the ABC
    def __getitem__(self, index):  ...   # Abstract method
    def __len__(self):  ...              # Abstract method
    def count(self, value): ...          # Mixin method
    def index(self, value): ...          # Mixin method

Sequence.register(D)                     # Register instead of inherit
>>> issubclass(D, Sequence)
True
>>> isinstance(D(), Sequence)
True

この例では、クラス D__contains__, __iter__, __reversed__ を定義する必要がありません。なぜなら in 演算子, the 反復 ロジック, および reversed() 関数は自動的に __getitem____len__ を使うようにフォールバックするからです。

3) いくつかの単純なインターフェースは、必要なメソッドの存在だけで (それらのメソッドが None に設定されていなければ) 直接認識されます:

class E:
    def __iter__(self): ...
    def __next__(self): ...
>>> issubclass(E, Iterable)
True
>>> isinstance(E(), Iterable)
True

複雑なインターフェースは、単に特定のメソッドが存在すること以上の定義を持つため、3番目のテクニックをサポートしていません。それらのインターフェースはメソッドの意味やメソッド間の関係まで指定するので、特定のメソッド名の存在からだけではインターフェースの推測ができません。たとえば、あるクラスが __getitem__, __len__, および __iter__ を提供するというだけでは、 SequenceMapping を区別するには不十分です。

Added in version 3.9: これらの抽象クラスは [] をサポートするようになりました。 ジェネリックエイリアス型 および PEP 585 を参照してください。

コレクション抽象基底クラス

collections モジュールは以下の ABC (抽象基底クラス) を提供します:

ABC

継承しているクラス

抽象メソッド

mixin メソッド

Container [1]

__contains__

Hashable [1]

__hash__

Iterable [1] [2]

__iter__

Iterator [1]

Iterable

__next__

__iter__

Reversible [1]

Iterable

__reversed__

Generator [1]

Iterator

send, throw

close, __iter__, __next__

Sized [1]

__len__

Callable [1]

__call__

Collection [1]

Sized, Iterable, Container

__contains__, __iter__, __len__

Sequence

Reversible, Collection

__getitem__, __len__

__contains__, __iter__, __reversed__, index, count

MutableSequence

Sequence

__getitem__, __setitem__, __delitem__, __len__, insert

Sequence から継承したメソッドと、 append, clear, reverse, extend, pop, remove, __iadd__

Set

Collection

__contains__, __iter__, __len__

__le__, __lt__, __eq__, __ne__, __gt__, __ge__, __and__, __or__, __sub__, __xor__, isdisjoint

MutableSet

Set

__contains__, __iter__, __len__, add, discard

Set から継承したメソッドと、 clear, pop, remove, __ior__, __iand__, __ixor__, __isub__

Mapping

Collection

__getitem__, __iter__, __len__

__contains__, keys, items, values, get, __eq__, __ne__

MutableMapping

Mapping

__getitem__, __setitem__, __delitem__, __iter__, __len__

Mapping から継承したメソッドと、 pop, popitem, clear, update, setdefault

MappingView

Sized

__len__

ItemsView

MappingView, Set

__contains__, __iter__

KeysView

MappingView, Set

__contains__, __iter__

ValuesView

MappingView, Collection

__contains__, __iter__

Awaitable [1]

__await__

Coroutine [1]

Awaitable

send, throw

close

AsyncIterable [1]

__aiter__

AsyncIterator [1]

AsyncIterable

__anext__

__aiter__

AsyncGenerator [1]

AsyncIterator

asend, athrow

aclose, __aiter__, __anext__

Buffer [1]

__buffer__

脚注

コレクションの抽象基底クラス -- 詳細な説明

class collections.abc.Container

__contains__() メソッドを提供するクラスの ABC です。

class collections.abc.Hashable

__hash__() メソッドを提供するクラスの ABC です。

class collections.abc.Sized

__len__() メソッドを提供するクラスの ABC です。

class collections.abc.Callable

__call__() メソッドを提供するクラスの ABC です。

Callable を型アノテーションで使う方法の詳細は、 呼び出し可能オブジェクトのアノテーション を参照してください。

class collections.abc.Iterable

__iter__() メソッドを提供するクラスの ABC です。

isinstance(obj, Iterable) によるチェックは Iterable として登録されたクラスや __iter__() メソッドを持つクラスを検出しますが、 __getitem__() メソッドにより反復処理を行うクラスは検出しません。オブジェクトがイテラブル (iterable) かどうかを確認する唯一の信頼できる方法は iter(obj) を呼び出すことです。

class collections.abc.Collection

サイズ付きのイテラブルなコンテナクラスの ABC です。

Added in version 3.6.

class collections.abc.Iterator

__iter__() メソッドと __next__() メソッドを提供するクラスの ABC です。 iterator の定義も参照してください。

class collections.abc.Reversible

__reversed__() メソッドを提供するイテラブルクラスの ABC です。

Added in version 3.6.

class collections.abc.Generator

PEP 342 で定義された、イテレータsend(), throw(), close() の各メソッドに拡張するプロトコルを実装する、ジェネレータ クラスの ABC です。

Generator を型アノテーションで使う方法の詳細は、 Annotating generators and coroutines を参照してください。

Added in version 3.5.

class collections.abc.Sequence
class collections.abc.MutableSequence

読み出し専用の シーケンス およびミュータブルな シーケンス の ABC です。

実装における注意: __iter__(), __reversed__(), index() など、一部の mixin メソッドは、下層の __getitem__() メソッドを繰り返し呼び出します。その結果、__getitem__() が定数のアクセス速度で実装されている場合、mixin メソッドは線形のパフォーマンスとなります。下層のメソッドが線形 (リンクされたリストの場合など) の場合、mixin は 2 乗のパフォーマンスとなるため、多くの場合上書きする必要があるでしょう。

バージョン 3.5 で変更: index() メソッドは stopstart 引数をサポートしました。

class collections.abc.Set
class collections.abc.MutableSet

読み出し専用でミュータブルな 集合 の ABC です。

class collections.abc.Mapping
class collections.abc.MutableMapping

読み出し専用の マッピング およびミュータブルな マッピング の ABC です。

class collections.abc.MappingView
class collections.abc.ItemsView
class collections.abc.KeysView
class collections.abc.ValuesView

マッピング、要素、キー、値の ビュー の ABC です。

class collections.abc.Awaitable

await で使用できる awaitable オブジェクトの ABC です。カスタムの実装は、__await__() メソッドを提供しなければなりません。

Coroutine ABC の Coroutine オブジェクトとインスタンスは、すべてこの ABC のインスタンスです。

注釈

CPython では、ジェネレータベースのコルーチン (@types.coroutine で修飾された ジェネレータ) は、 __await__() メソッドを持たないにもかかわらず*待機可能* (awaitables) です。 isinstance(gencoro, Awaitable) はそのようなコルーチンに対して False を返します。そのようなコルーチンを検出するためには inspect.isawaitable() を使ってください。

Added in version 3.5.

class collections.abc.Coroutine

コルーチン と互換性のあるクラスの ABC です。これらは、コルーチンオブジェクト で定義された send(), throw(), close() のメソッドを実装します。カスタムの実装は、__await__() も実装しなければなりません。Coroutine のすべてのインスタンスは、 Awaitable のインスタンスでもあります。

注釈

CPython では、ジェネレータベースのコルーチン (@types.coroutine で修飾された ジェネレータ) は、 __await__() メソッドを持たないにもかかわらず*待機可能* (awaitables) です。 isinstance(gencoro, Coroutine) はそのようなコルーチンに対して False を返します。そのようなコルーチンを検出するためには inspect.isawaitable() を使ってください。

Coroutine を型アノテーションで使う方法の詳細は、 Annotating generators and coroutines を参照してください。型パラメータの意味と順序は Generator と同様です。

Added in version 3.5.

class collections.abc.AsyncIterable

__aiter__ メソッドを提供するクラスの ABC です。asynchronous iterable の定義も参照してください。

Added in version 3.5.

class collections.abc.AsyncIterator

__aiter__ および __anext__ メソッドを提供するクラスの ABC です。asynchronous iterator の定義も参照してください。

Added in version 3.5.

class collections.abc.AsyncGenerator

PEP 525PEP 492 に定義されているプロトコルを実装した 非同期ジェネレータ クラスの ABC です。

AsyncGenerator を型アノテーションで使う方法の詳細は、 Annotating generators and coroutines を参照してください。

Added in version 3.6.

class collections.abc.Buffer

buffer protocol を実装する __buffer__() メソッドを提供するクラスのABCです。PEP 688 を参照してください。

Added in version 3.12.

例とレシピ

抽象基底クラスは、クラスやインスタンスが特定の機能を提供しているかどうかを調べることを可能にします。例えば:

size = None
if isinstance(myvar, collections.abc.Sized):
    size = len(myvar)

幾つかの ABC はコンテナ型 API を提供するクラスを開発するのを助ける mixin 型としても使えます。例えば、 Set API を提供するクラスを作る場合、3つの基本になる抽象メソッド __contains__(), __iter__(), __len__() だけが必要です。ABC が残りの __and__()isdisjoint() といったメソッドを提供します:

class ListBasedSet(collections.abc.Set):
    ''' Alternate set implementation favoring space over speed
        and not requiring the set elements to be hashable. '''
    def __init__(self, iterable):
        self.elements = lst = []
        for value in iterable:
            if value not in lst:
                lst.append(value)

    def __iter__(self):
        return iter(self.elements)

    def __contains__(self, value):
        return value in self.elements

    def __len__(self):
        return len(self.elements)

s1 = ListBasedSet('abcdef')
s2 = ListBasedSet('defghi')
overlap = s1 & s2            # The __and__() method is supported automatically

SetMutableSet を mixin 型として利用するときの注意点:

  1. 幾つかの set の操作は新しい set を作るので、デフォルトの mixin メソッドは イテラブル から新しいインスタンスを作成する方法を必要とします。クラスのコンストラクタは ClassName(iterable) の形のシグネチャを持つと仮定されます。内部の _from_iterable() という classmethodcls(iterable) を呼び出して新しい set を作る部分でこの仮定が使われています。コンストラクタのシグネチャが異なるクラスで Set を使う場合は、 iterable 引数から新しいインスタンスを生成できるクラスメソッドあるいは仕様に沿ったメソッドで _from_iterable() をオーバーライドする必要があります。

  2. (たぶん意味はそのままに速度を向上する目的で)比較をオーバーライドする場合、 __le__()__ge__() だけを再定義すれば、その他の演算は自動的に追随します。

  3. Set mixin型は set のハッシュ値を計算する _hash() メソッドを提供しますが、すべての set が hashable や immutable とは限らないので、 __hash__() は提供しません。 mixin を使ってハッシュ可能な set を作る場合は、 SetHashable() の両方を継承して、 __hash__ = Set._hash と定義してください。

参考