doctest
--- 対話的な実行例をテストする¶
ソースコード: Lib/doctest.py
doctest
モジュールは、対話的 Python セッションのように見えるテキストを探し出し、セッションの内容を実行して、そこに書かれている通りに振舞うかを調べます。 doctest
は以下のような用途によく使われています:
モジュールの docstring (ドキュメンテーション文字列) 中にある対話実行例のすべてが書かれている通りに動作するか検証することで、docstring の内容が最新かどうかチェックする。
テストファイルやテストオブジェクト中の対話実行例が期待通りに動作するかを検証することで、回帰テストを実現します。
入出力例を豊富に使ったパッケージのチュートリアルドキュメントが書けます。入出力例と解説文のどちらに注目するかによって、ドキュメントは「読めるテスト」にも「実行できるドキュメント」にもなります。
以下に完全かつ短い実行例を示します:
"""
This is the "example" module.
The example module supplies one function, factorial(). For example,
>>> factorial(5)
120
"""
def factorial(n):
"""Return the factorial of n, an exact integer >= 0.
>>> [factorial(n) for n in range(6)]
[1, 1, 2, 6, 24, 120]
>>> factorial(30)
265252859812191058636308480000000
>>> factorial(-1)
Traceback (most recent call last):
...
ValueError: n must be >= 0
Factorials of floats are OK, but the float must be an exact integer:
>>> factorial(30.1)
Traceback (most recent call last):
...
ValueError: n must be exact integer
>>> factorial(30.0)
265252859812191058636308480000000
It must also not be ridiculously large:
>>> factorial(1e100)
Traceback (most recent call last):
...
OverflowError: n too large
"""
import math
if not n >= 0:
raise ValueError("n must be >= 0")
if math.floor(n) != n:
raise ValueError("n must be exact integer")
if n+1 == n: # catch a value like 1e300
raise OverflowError("n too large")
result = 1
factor = 2
while factor <= n:
result *= factor
factor += 1
return result
if __name__ == "__main__":
import doctest
doctest.testmod()
example.py
をコマンドラインから直接実行すると、 doctest
はその魔法を働かせます:
$ python example.py
$
出力は何もありません!しかしこれが正常で、すべての実行例が正しく動作することを意味しています。スクリプトに -v
を与えると、 doctest
は何を行おうとしているのかを記録した詳細なログを出力し、最後にまとめを出力します:
$ python example.py -v
Trying:
factorial(5)
Expecting:
120
ok
Trying:
[factorial(n) for n in range(6)]
Expecting:
[1, 1, 2, 6, 24, 120]
ok
といった具合で、最後には:
Trying:
factorial(1e100)
Expecting:
Traceback (most recent call last):
...
OverflowError: n too large
ok
2 items passed all tests:
1 tests in __main__
8 tests in __main__.factorial
9 tests in 2 items.
9 passed and 0 failed.
Test passed.
$
doctest
の生産的な利用を始めるために知る必要があるのはこれだけです!さあやってみましょう。詳細な事柄は後続の各節ですべて説明しています。 doctest の例は、標準の Python テストスイートやライブラリ中に沢山あります。標準のテストファイル Lib/test/test_doctest.py
には、特に役に立つ例があります。
簡単な利用法: docstring 中の実行例をチェックする¶
doctest を試す簡単な方法 (とはいえ、いつもそうする必要はないのですが) は、各モジュール M
の最後を、以下のようにして締めくくることです:
if __name__ == "__main__":
import doctest
doctest.testmod()
こうすると、 doctest
は M
中の docstring を検査します。
モジュールをスクリプトとして実行すると、docstring 中の実行例が実行され、検証されます:
python M.py
docstring に書かれた実行例の実行が失敗しない限り、何も表示されません。失敗すると、失敗した実行例と、その原因が (場合によっては複数) 標準出力に印字され、最後に ***Test Failed*** N failures.
という行を出力します。ここで、N は失敗した実行例の数です。
一方、-v
スイッチをつけて走らせると:
python M.py -v
実行を試みたすべての実行例について詳細に報告し、最後に各種まとめを行った内容が標準出力に印字されます。
verbose=True
を testmod()
に渡せば、詳細報告 (verbose) モードを強制できます。また、 verbose=False
にすれば禁止できます。どちらの場合にも、 testmod()
は sys.argv
上のスイッチを調べません。(したがって、 -v
をつけても効果はありません)。
testmod()
を実行するコマンドラインショートカットもあります。 Python インタプリタに doctest モジュールを標準ライブラリから直接実行して、テストするモジュール名をコマンドライン引数に与えます:
python -m doctest -v example.py
こうすると example.py
を単体モジュールとしてインポートして、それに対して testmod()
を実行します。このファイルがパッケージの一部で他のサブモジュールをそのパッケージからインポートしている場合はうまく動かないことに注意してください。
簡単な利用法: テキストファイル中の実行例をチェックする¶
doctest のもう一つの簡単な用途は、テキストファイル中にある対話実行例に対するテストです。これには testfile()
関数を使います:
import doctest
doctest.testfile("example.txt")
この短いスクリプトは、 example.txt
というファイルの中に入っている対話モードの Python 操作例すべてを実行して、その内容を検証します。ファイルの内容は一つの巨大な docstring であるかのように扱われます; ファイルが Python プログラムである必要はありません!例えば、 example.txt
には以下のような内容が入っているとします:
The ``example`` module
======================
Using ``factorial``
-------------------
This is an example text file in reStructuredText format. First import
``factorial`` from the ``example`` module:
>>> from example import factorial
Now use it:
>>> factorial(6)
120
doctest.testfile("example.txt")
を実行すると、このドキュメント内のエラーを見つけ出します:
File "./example.txt", line 14, in example.txt
Failed example:
factorial(6)
Expected:
120
Got:
720
testmod()
と同じく、 testfile()
は実行例が失敗しない限り何も表示しません。実行例が失敗すると、失敗した実行例とその原因が (場合によっては複数) testmod()
と同じ書式で標準出力に書き出されます。
デフォルトでは、 testfile()
は自分自身を呼び出したモジュールのあるディレクトリを探します。その他の場所にあるファイルを見に行くように testfile()
に指示するためのオプション引数についての説明は 基本 API 節を参照してください。
testmod()
と同様に testfile()
の冗長性 (verbosity) はコマンドラインスイッチ -v
またはオプションのキーワード引数 verbose によって指定できます。
testfile()
を実行するコマンドラインショートカットもあります。 Python インタプリタに doctest モジュールを標準ライブラリから直接実行して、テストするモジュール名をコマンドライン引数に与えます:
python -m doctest -v example.txt
ファイル名が .py
で終っていないので、 doctest
は testmod()
ではなく testfile()
を使って実行するのだと判断します。
testfile()
の詳細は 基本 API 節を参照してください。
doctest のからくり¶
この節では、doctest のからくり: どの docstring を見に行くのか、どのように対話実行例を見つけ出すのか、どんな実行コンテキストを使うのか、例外をどう扱うか、上記の振る舞いを制御するためにどのようなオプションフラグを使うか、について詳しく吟味します。こうした情報は、doctest に対応した実行例を書くために必要な知識です; 書いた実行例に対して実際に doctest を実行する上で必要な情報については後続の節を参照してください。
どの docstring が検証されるのか?¶
モジュールの docstring と、すべての関数、クラスおよびメソッドの docstring が検索されます。モジュールに import されたオブジェクトは検索されません。
加えて、M.__test__
が存在し、"真の値を持つ" 場合、この値は辞書でなければならず、辞書の各エントリは (文字列の) 名前を関数オブジェクト、クラスオブジェクト、または文字列へとマップします。M.__test__
から得られた関数およびクラスオブジェクトの docstring は、その名前がプライベートなものでも検索され、文字列の場合にはそれが docstring であるかのように扱われます。出力においては、M.__test__
におけるキー K
は、以下の名前で表示されます
<name of M>.__test__.K
検索中に見つかったクラスも同様に再帰的に検索が行われ、クラスに含まれているメソッドおよびネストされたクラスについて docstring のテストが行われます。
CPython implementation detail: Prior to version 3.4, extension modules written in C were not fully searched by doctest.
docstring 内の実行例をどのように認識するのか?¶
ほとんどの場合、対話コンソールセッション上でのコピー/ペーストはうまく動作します。とはいえ、doctest
は特定の Python シェルの振る舞いを正確にエミュレーションしようとするわけではありません。
>>> # comments are ignored
>>> x = 12
>>> x
12
>>> if x == 13:
... print("yes")
... else:
... print("no")
... print("NO")
... print("NO!!!")
...
no
NO
NO!!!
>>>
コードを含む最後の '>>> '
または '... '
行の直下に期待する出力結果が置かれます。(出力結果がもしあれば) それは次の '>>> '
行か、すべて空白文字の行まで続きます。
詳細事項:
期待する出力結果には、空白だけの行が入っていてはなりません。そのような行は期待する出力結果の終了を表すと見なされるからです。もし期待する出力結果の内容に空白行が入っている場合には、空白行が入るべき場所すべてに
<BLANKLINE>
を入れてください。全てのタブ文字は 8 カラムのタブ位置でスペースに展開されます。テスト対象のコードが作成した出力にあるタブは変更されません。出力例にあるどんなタブも展開 される ので、コードの出力がハードタブを含んでいた場合、 doctest が通るには
NORMALIZE_WHITESPACE
オプションか directive を有効にするしかありません。そうする代わりに、テストが出力を読み取りテストの一部として期待される値と正しく比較するように、テストを書き直すこともできます。このソース中のタブの扱いは試行錯誤の結果であり、タブの扱いの中で最も問題の起きにくいものだということが分かっています。タブの扱いについては、独自のDocTestParser
クラスを実装して、別のアルゴリズムを使うこともできます。標準出力への出力は取り込まれますが、標準エラーは取り込まれません (例外発生時のトレースバックは別の方法で取り込まれます)。
対話セッションにおいて、バックスラッシュを用いて次の行に続ける場合や、その他の理由でバックスラッシュを用いる場合、raw docstring を使ってバックスラッシュを入力どおりに扱わせるようにしなければなりません:
>>> def f(x): ... r'''Backslashes in a raw docstring: m\n''' >>> print(f.__doc__) Backslashes in a raw docstring: m\n
そうしない場合は、バックスラッシュは文字列の一部として解釈されます。例えば、上の
\n
は改行文字として解釈されてしまいます。それ以外の方法では、doctest にあるバックスラッシュを二重にする (そして raw string を使わない) という方法もあります:>>> def f(x): ... '''Backslashes in a raw docstring: m\\n''' >>> print(f.__doc__) Backslashes in a raw docstring: m\n
開始カラムはどこでもかまいません:
>>> assert "Easy!" >>> import math >>> math.floor(1.9) 1
期待する出力結果の先頭部にある空白文字列は、実行例の開始部分にあたる
'>>> '
行の先頭にある空白文字列と同じだけ取り除かれます。
実行コンテキストとは何か?¶
デフォルトでは、 doctest
はテストを行うべき docstring を見つけるたびに M
のグローバル名前空間の 浅いコピー を使い、テストの実行によってモジュールの実際のグローバル名前空間を変更しないようにし、かつ M
内で行ったテストが痕跡を残して偶発的に別のテストを誤って動作させないようにしています。したがって、実行例中では M
内のトップレベルで定義されたすべての名前と、 docstring が動作する以前に定義された名前を自由に使えます。個々の実行例は他の docstring 中で定義された名前を参照できません。
testmod()
や testfile()
に globs=your_dict
を渡し、自前の辞書を実行コンテキストとして使うこともできます。
例外はどう扱えばよいか?¶
トレースバックが実行例によって生成される唯一の出力なら問題ありません。単にトレースバックを貼り付けてください。1 トレースバックには、頻繁に変更されがちな情報 (例えばファイルパスや行番号など) が入っているものなので、これは受け入れるテスト結果に柔軟性を持たせようと doctest が苦労している部分の一つです。
簡単な例を示しましょう:
>>> [1, 2, 3].remove(42)
Traceback (most recent call last):
File "<stdin>", line 1, in <module>
ValueError: list.remove(x): x not in list
この doctest は、 ValueError
が送出され、その詳細情報が list.remove(x): x not in list
である場合に成功します。
例外が発生したときの期待する出力はトレースバックヘッダから始まっていなければなりません。トレースバックの形式は以下の二通りの行のいずれかで、実行例の最初の行と同じインデントでなければりません:
Traceback (most recent call last):
Traceback (innermost last):
トレースバックヘッダの後ろにトレースバックスタックが続いてもかまいませんが、doctest はその内容を無視します。普通はトレースバックスタックを省略するか、対話セッションからそのままコピーしてきます。
トレースバックスタックの後ろにはもっとも有意義な部分、例外の型と詳細情報の入った行があります。これは通常トレースバックの最後の行ですが、例外が複数行の詳細情報を持っている場合、複数の行にわたることもあります:
>>> raise ValueError('multi\n line\ndetail')
Traceback (most recent call last):
File "<stdin>", line 1, in <module>
ValueError: multi
line
detail
上の例では、最後の 3 行 (ValueError
から始まる行) における例外の型と詳細情報だけが比較され、それ以外の部分は無視されます。
例外を扱うコツは、実行例をドキュメントとして読む上で明らかに価値のある情報でない限り、トレースバックスタックは省略する、ということです。したがって、先ほどの例は以下のように書くべきでしょう:
>>> raise ValueError('multi\n line\ndetail')
Traceback (most recent call last):
...
ValueError: multi
line
detail
トレースバックの扱いは非常に特殊なので注意してください。特に、上の書き直した実行例では、 ...
の扱いは doctest の ELLIPSIS
オプションとは独立しています。この例での省略記号は何かの省略を表しているかもしれませんし、コンマや数字が 3 個 (または 300 個) かもしれませんし、 Monty Python のスキットをインデントして書き写したものかもしれません。
以下の詳細はずっと覚えておく必要はないのですが、一度目を通しておいてください:
doctest は期待する出力の出所が print 文なのか例外なのかを推測できません。したがって、例えば期待する出力が
ValueError: 42 is prime
であるような実行例は、ValueError
が実際に送出された場合と、万が一期待する出力と同じ文字列を print した場合の両方で成功してしまいます。現実的には、通常の出力がトレースバックヘッダから始まることはないので、実際に問題になることはないでしょう。トレースバックスタック (がある場合) の各行は、実行例の最初の行よりも深くインデントされているか、または 英数文字以外で始まっていなければなりません。トレースバックヘッダ以後に現れる行のうち、インデントが等しく英数文字で始まる最初の行は例外の詳細情報が書かれた行とみなされるからです。もちろん、本物のトレースバックでは正しく動作します。
doctest のオプション
IGNORE_EXCEPTION_DETAIL
を指定した場合、最も左端のコロン以後の全ての内容と、例外名の中の全てのモジュール情報が無視されます。対話シェルでは、
SyntaxError
の場合にトレースバックヘッダが省略されることがあります。しかし doctest にとっては、例外を例外でないものと区別するためにトレースバックヘッダが必要です。そこで、トレースバックヘッダを省略するようなSyntaxError
をテストする必要があるというごく稀なケースでは、実行例にトレースバックヘッダを手作業で追加する必要があるでしょう。
SyntaxError
の場合、 Python は構文エラーの起きた場所を^
マーカで表示します:>>> 1 1 File "<stdin>", line 1 1 1 ^ SyntaxError: invalid syntax
例外の型と詳細情報の前にエラー位置を示す行がくるため、doctest はこの行を調べません。例えば、以下の例では、間違った場所に
^
マーカを入れても成功してしまいます:>>> 1 1 Traceback (most recent call last): File "<stdin>", line 1 1 1 ^ SyntaxError: invalid syntax
オプションフラグ¶
doctest の振る舞いは、数多くのオプションフラグによって様々な側面から制御されています。フラグのシンボル名はモジュールの定数として提供され、 ビット単位論理和 でつないで様々な関数に渡すことができます。シンボル名は doctest directives でも使用でき、doctest コマンドラインインタフェースに -o
を通して与えることができます。
バージョン 3.4 で追加: -o
コマンドラインオプション
最初に説明するオプション群は、テストのセマンティクスを決めます。すなわち、実際にテストを実行したときの出力と実行例中の期待する出力とが一致しているかどうかを doctest がどのように判断するかを制御します:
-
doctest.
DONT_ACCEPT_TRUE_FOR_1
¶ デフォルトでは、期待する出力ブロックに単に
1
だけが入っており、実際の出力ブロックに1
またはTrue
だけが入っていた場合、これらの出力は一致しているとみなされます。0
とFalse
の場合も同様です。DONT_ACCEPT_TRUE_FOR_1
を指定すると、こうした値の読み替えを行いません。デフォルトの挙動で読み替えを行うのは、最近の Python で多くの関数の戻り値型が整数型からブール型に変更されたことに対応するためです; 読み替えを行う場合、"通常の整数" の出力を期待する出力とするような doctest も動作します。このオプションはそのうちなくなるでしょうが、ここ数年はそのままでしょう。
-
doctest.
DONT_ACCEPT_BLANKLINE
¶ デフォルトでは、期待する出力ブロックに
<BLANKLINE>
だけの入った行がある場合、その行は実際の出力における空行に一致するようになります。完全な空行を入れてしまうと期待する出力がそこで終わっているとみなされてしまうため、期待する出力に空行を入れたい場合にはこの方法を使わなければなりません。DONT_ACCEPT_BLANKLINE
を指定すると、<BLANKLINE>
の読み替えを行わなくなります。
-
doctest.
NORMALIZE_WHITESPACE
¶ このフラグを指定すると、連続する空白 (空白と改行文字) は互いに等価であるとみなします。期待する出力における任意の空白列は実際の出力における任意の空白と一致します。デフォルトでは、空白は厳密に一致しなければなりません。
NORMALIZE_WHITESPACE
は、期待する出力の内容が非常に長いために、ソースコード中でその内容を複数行に折り返して書きたい場合に特に便利です。
-
doctest.
ELLIPSIS
¶ このフラグを指定すると、期待する出力中の省略記号マーカ (
...
) が実際の出力中の任意の部分文字列と一致するようになります。部分文字列は行境界にわたるものや空文字列を含みます。したがって、このフラグを使うのは単純な内容を対象にする場合にとどめましょう。複雑な使い方をすると、正規表現に.*
を使ったときのように "しまった、マッチしすぎた! (match too much!)" と驚くことになりかねません。
-
doctest.
IGNORE_EXCEPTION_DETAIL
¶ このフラグを指定すると、期待する実行結果に例外が入るような実行例で、期待通りの型の例外が送出された場合に、例外の詳細情報が一致していなくてもテストが成功します。例えば、期待する出力が
ValueError: 42
であるような実行例は、実際に送出された例外がValueError: 3*14
でも成功しますが、TypeError
が送出されるといった場合には成功しません。また Python 3 の doctest レポートにあるモジュール名も無視します。従ってこのフラグを指定すると、テストを Python 2.7 と Python 3.2 (もしくはそれ以降) のどちらで行ったかに関係無く、どちらに対しても正しく動作します:
>>> raise CustomError('message') Traceback (most recent call last): CustomError: message >>> raise CustomError('message') Traceback (most recent call last): my_module.CustomError: message
なお、
ELLIPSIS
を使っても例外メッセージの詳細を無視することができますが、モジュールの詳細が例外名の一部として表示されるかどうかに依存するようなテストは、やはり失敗します。また、IGNORE_EXCEPTION_DETAIL
と Python 2.3 の詳細情報を使うことが、例外の詳細に影響されず、なおかつ Python 2.3 以前の Python (これらのリリースは doctest ディレクティブ をサポートせず、これらを無関係なコメントとして無視します) で成功する doctest を書くための、唯一の明確な方法です。例えば、例外の詳細情報は 2.4 で変更され、 "doesn't" の代わりに "does not" と書くようになりましたが:>>> (1, 2)[3] = 'moo' Traceback (most recent call last): File "<stdin>", line 1, in <module> TypeError: object doesn't support item assignment
とすると、Python 2.3 やPython 2.4以降の Python バージョンでテストを成功させることができます。
バージョン 3.2 で変更:
doctest
モジュールのIGNORE_EXCEPTION_DETAIL
フラグが、 テストされている例外を含むモジュールの名前を無視するようになりました。
-
doctest.
SKIP
¶ このフラグを指定すると、実行例は一切実行されません。こうした機能は doctest の実行例がドキュメントとテストを兼ねていて、ドキュメントのためには含めておかなければならないけれどチェックされなくても良い、というような文脈で役に立ちます。例えば、実行例の出力がランダムであるとか、テストドライバーには利用できないリソースに依存している場合などです。
SKIP フラグは一時的に実行例を"コメントアウト"するのにも使えます。
-
doctest.
COMPARISON_FLAGS
¶ 上記の比較フラグすべての論理和をとったビットマスクです。
二つ目のオプション群は、テストの失敗を報告する方法を制御します:
-
doctest.
REPORT_UDIFF
¶ このオプションを指定すると、期待する出力および実際の出力が複数行になるときにテストの失敗結果を unified diff 形式を使って表示します。
-
doctest.
REPORT_CDIFF
¶ このオプションを指定すると、期待する出力および実際の出力が複数行になるときにテストの失敗結果を context diff 形式を使って表示します。
-
doctest.
REPORT_NDIFF
¶ このオプションを指定すると、期待する出力と実際の出力との間の差分を
difflib.Differ
を使って算出します。使われているアルゴリズムは有名なndiff.py
ユーティリティと同じです。これは、行単位の差分と同じように行内の差分にマーカをつけられるようにする唯一の手段です。例えば、期待する出力のある行に数字の1
が入っていて、実際の出力にはl
が入っている場合、不一致の起きているカラム位置を示すキャレットの入った行が一行挿入されます。
-
doctest.
REPORT_ONLY_FIRST_FAILURE
¶ このオプションを指定すると、各 doctest で最初にエラーの起きた実行例だけを表示し、それ以後の実行例の出力を抑制します。これにより、正しく書かれた実行例が、それ以前の実行例の失敗によっておかしくなってしまった場合に、 doctest がそれを報告しないようになります。とはいえ、最初に失敗を引き起こした実行例とは関係なく誤って書かれた実行例の報告も抑制してしまいます。
REPORT_ONLY_FIRST_FAILURE
を指定した場合、実行例がどこかで失敗しても、それ以後の実行例を続けて実行し、失敗したテストの総数を報告します; 出力が抑制されるだけです。
-
doctest.
FAIL_FAST
¶ このオプションを指定すると、最初に実行例が失敗した時点で終了し、残りの実行例を実行しません。つまり、報告される失敗の数はたかだか 1 つになります。最初の失敗より後の例はデバッグ出力を生成しないため、このフラグはデバッグの際に有用でしょう。
doctest コマンドラインは
-f
を-o FAIL_FAST
の短縮形として受け付けます。バージョン 3.4 で追加.
-
doctest.
REPORTING_FLAGS
¶ 上記のエラー報告に関するフラグすべての論理和をとったビットマスクです。
サブクラス化で doctest
内部を拡張するつもりがなければ役に立ちませんが、別の新しいオプションフラグ名を登録する方法もあります:
-
doctest.
register_optionflag
(name)¶ 名前 name の新たなオプションフラグを作成し、作成されたフラグの整数値を返します。
register_optionflag()
はOutputChecker
やDocTestRunner
をサブクラス化して、その中で新たに作成したオプションをサポートさせる際に使います。register_optionflag()
は以下のような定形文で呼び出さなければなりません:MY_FLAG = register_optionflag('MY_FLAG')
ディレクティブ (Directives)¶
doctest ディレクティブは個々の実行例の オプションフラグ を操作するために使われます。 doctest ディレクティブは後のソースコード例にあるような特殊な Python コメントです:
directive ::= "#" "doctest:"directive_options
directive_options ::=directive_option
(","directive_option
)\* directive_option ::=on_or_off
directive_option_name
on_or_off ::= "+" \| "-" directive_option_name ::= "DONT_ACCEPT_BLANKLINE" \| "NORMALIZE_WHITESPACE" \| ...
+
や -
とディレクティブオプション名の間に空白を入れてはなりません。ディレクティブオプション名は上で説明したオプションフラグ名のいずれかです。
ある実行例の doctest ディレクティブは、その実行例だけの doctest の振る舞いを変えます。ある特定の挙動を有効にしたければ +
を、無効にしたければ -
を使います。
例えば、以下のテストは成功します:
>>> print(list(range(20)))
[0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9,
10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19]
ディレクティブがない場合、実際の出力には一桁の数字の間に二つスペースが入っていないこと、実際の出力は 1 行になることから、テストは成功しないはずです。別のディレクティブを使って、このテストを成功させることもできます:
>>> print(list(range(20)))
[0, 1, ..., 18, 19]
複数のディレクティブは、一つの物理行の中にコンマで区切って指定できます:
>>> print(list(range(20)))
[0, 1, ..., 18, 19]
一つの実行例中で複数のディレクティブコメントを使った場合、それらは組み合わされます:
>>> print(list(range(20)))
...
[0, 1, ..., 18, 19]
この実行例で分かるように、実行例にはディレクティブだけを含む ...
行を追加することができます。この書きかたは、実行例が長すぎるためにディレクティブを同じ行に入れると収まりが悪い場合に便利です:
>>> print(list(range(5)) + list(range(10, 20)) + list(range(30, 40)))
...
[0, ..., 4, 10, ..., 19, 30, ..., 39]
フォルトではすべてのオプションが無効になっており、ディレクティブは特定の実行例だけに影響を及ぼすので、通常意味があるのは有効にするためのオプション (+
のついたディレクティブ) だけです。とはいえ、doctest を実行する関数はオプションフラグを指定してデフォルトとは異なった挙動を実現できるので、そのような場合には -
を使った無効化オプションも意味を持ちます。
警告¶
doctest
では、期待する出力に対する完全一致を厳格に求めます。
一致しない文字が一文字でもあると、テストは失敗してしまいます。
このため、 Python が出力に関して何を保証していて、何を保証していないかを正確に知っていないと混乱させられることがあるでしょう。
例えば、集合を出力する際、 Python は要素がある特定の順番で並ぶよう保証してはいません。したがって、以下のようなテスト
>>> foo()
{"Hermione", "Harry"}
は失敗するかもしれないのです! 回避するには
>>> foo() == {"Hermione", "Harry"}
True
とするのが一つのやり方です。別のやり方は
>>> d = sorted(foo())
>>> d
['Harry', 'Hermione']
注釈
Python 3.6 以前では、辞書を表示するときに、 Python はキーと値のペアはある特定の順序で並ぶよう保証はされていませんでした。
他のやり方もありますが、あとは自分で考えてみてください。
以下のように、オブジェクトアドレスを埋め込むような結果を print するのもよくありません
>>> id(1.0) # certain to fail some of the time
7948648
>>> class C: pass
>>> C() # the default repr() for instances embeds an address
<__main__.C instance at 0x00AC18F0>
ELLIPSIS
ディレクティブを使うと、上のような例をうまく解決できます:
>>> C()
<__main__.C instance at 0x...>
浮動小数点数もまた、プラットフォーム間での微妙な出力の違いの原因となります。というのも、Python は浮動小数点の書式化をプラットフォームの C ライブラリに委ねており、この点では、C ライブラリはプラットフォーム間で非常に大きく異なっているからです。
>>> 1./7 # risky
0.14285714285714285
>>> print(1./7) # safer
0.142857142857
>>> print(round(1./7, 6)) # much safer
0.142857
I/2.**J
の形式になる数値はどのプラットフォームでもうまく動作するので、私はこの形式の数値を生成するように doctest の実行例を工夫しています:
>>> 3./4 # utterly safe
0.75
単純な分数は人間にとっても理解しやすく、良いドキュメントを書くために役に立ちます。
基本 API¶
数 testmod()
と testfile()
は、ほとんどの基本的な用途に十分な doctest インタフェースを提供しています。これら二つの関数についてあまり形式的でない入門が読みたければ、 簡単な利用法: docstring 中の実行例をチェックする 節や 簡単な利用法: テキストファイル中の実行例をチェックする 節を参照してください。
-
doctest.
testfile
(filename, module_relative=True, name=None, package=None, globs=None, verbose=None, report=True, optionflags=0, extraglobs=None, raise_on_error=False, parser=DocTestParser(), encoding=None)¶ filename 以外の引数はすべてオプションで、キーワード引数形式で指定しなければなりません。
filename に指定したファイル内にある実行例をテストします。
(failure_count, test_count)
を返します。オプション引数の module_relative は、ファイル名をどのように解釈するかを指定します:
module_relative が
True
(デフォルト) の場合、filename は OS に依存しないモジュールの相対パスになります。デフォルトでは、このパスは関数testfile()
を呼び出しているモジュールからの相対パスになります; ただし、package 引数を指定した場合には、パッケージからの相対になります。OS への依存性を除くため、filename ではパスを分割する文字に/
を使わなければならず、絶対パスにしてはなりません (パス文字列を/
で始めてはなりません)。module_relative が
False
の場合、filename は OS 依存のパスを示します。パスは絶対パスでも相対パスでもかまいません; 相対パスにした場合、現在の作業ディレクトリを基準に解決します。
オプション引数 name には、テストの名前を指定します; デフォルトの場合や
None
を指定した場合、os.path.basename(filename)
になります。オプション引数 package には、Python パッケージを指定するか、モジュール相対のファイル名の場合には相対の基準ディレクトリとなる Python パッケージの名前を指定します。パッケージを指定しない場合、関数を呼び出しているモジュールのディレクトリを相対の基準ディレクトリとして使います。module_relative を
False
に指定している場合、package を指定するとエラーになります。オプション引数 globs には辞書を指定します。この辞書は、実行例を実行する際のグローバル変数として用いられます。doctest はこの辞書の浅いコピーを生成するので、実行例は白紙の状態からスタートします。デフォルトの場合や
None
を指定した場合、新たな空の辞書になります。オプション引数 extraglobs には辞書を指定します。この辞書は、実行例を実行する際にグローバル変数にマージされます。マージは
dict.update()
のように振舞います: globs と extraglobs との間に同じキー値がある場合、両者を合わせた辞書中には extraglobs の方の値が入ります。デフォルト、またはNone
であるとき、追加のグローバル変数は使われません。この仕様は、パラメータ付きで doctest を実行するという、やや進んだ機能です。例えば、一般的な名前を使って基底クラス向けに doctest を書いておき、その後で辞書で一般的な名前からテストしたいサブクラスへの対応付けを行う辞書を extraglobs に渡して、様々なサブクラスをテストできます。オプション引数 verbose が真の場合、様々な情報を出力します。偽の場合にはテストの失敗だけを報告します。デフォルトの場合や
None
を指定した場合、sys.argv
に'-v'
を指定しない限りこの値は真になりません。オプション引数 report が真の場合、テストの最後にサマリを出力します。それ以外の場合には何も出力しません。verbose モードの場合、サマリには詳細な情報を出力しますが、そうでない場合にはサマリはとても簡潔になります (実際には、すべてのテストが成功した場合には何も出力しません)。
オプション引数 optionflags (デフォルト値 0) は、各オプションフラグの ビット単位論理和 を取ります。 オプションフラグ 節を参照してください。
オプション引数 raise_on_error の値はデフォルトでは偽です。真にすると、最初のテスト失敗や予期しない例外が起きたときに例外を送出します。このオプションを使うと、失敗の原因を検死デバッグ (post-mortem debug) できます。デフォルトの動作では、実行例の実行を継続します。
オプション引数 parser には、
DocTestParser
(またはそのサブクラス) を指定します。このクラスはファイルから実行例を抽出するために使われます。デフォルトでは通常のパーザ (DocTestParser()
) です。オプション引数 encoding にはファイルをユニコードに変換する際に使われるエンコーディングを指定します。
-
doctest.
testmod
(m=None, name=None, globs=None, verbose=None, report=True, optionflags=0, extraglobs=None, raise_on_error=False, exclude_empty=False)¶ 引数はすべてオプションで、m 以外の引数はキーワード引数として指定しなければなりません。
モジュール m (m を指定しないか
None
にした場合には__main__
) から到達可能な関数およびクラスの docstring 内にある実行例をテストします。m.__doc__
内の実行例からテストを開始します。また、辞書
m.__test__
が存在し、None
でない場合、この辞書から到達できる実行例もテストします。m.__test__
は、(文字列の) 名前から関数、クラスおよび文字列への対応付けを行っています。関数およびクラスの場合には、その docstring 内から実行例を検索します。文字列の場合には、docstring と同じようにして実行例の検索を直接実行します。モジュール m に属するオブジェクトにつけられた docstring のみを検索します。
(failure_count, test_count)
を返します。オプション引数 name には、モジュールの名前を指定します。デフォルトの場合や
None
を指定した場合には、m.__name__
を使います。オプション引数 exclude_empty はデフォルトでは偽になっています。この値を真にすると、doctest を持たないオブジェクトを考慮から外します。デフォルトの設定は依存のバージョンとの互換性を考えたハックであり、
doctest.master.summarize()
とtestmod()
を合わせて利用しているようなコードでも、テスト実行例を持たないオブジェクトから出力を得るようにしています。新たに追加されたDocTestFinder
のコンストラクタの exclude_empty はデフォルトで真になります。オプション引数 extraglobs, verbose, report, optionflags, raise_on_error, および globs は上で説明した
testfile()
の引数と同じです。ただし、 globs のデフォルト値はm.__dict__
になります。
-
doctest.
run_docstring_examples
(f, globs, verbose=False, name="NoName", compileflags=None, optionflags=0)¶ オブジェクト f に関連付けられた実行例をテストします。 f は文字列、モジュール、関数、またはクラスオブジェクトです。
引数 globs に辞書を指定すると、その浅いコピーを実行コンテキストに使います。
オプション引数 name はテスト失敗時のメッセージに使われます。デフォルトの値は
'NoName'
です。オプション引数 verbose の値を真にすると、テストが失敗しなくても出力を生成します。デフォルトでは、実行例のテストに失敗したときのみ出力を生成します。
オプション引数 compileflags には、実行例を実行するときに Python バイトコードコンパイラが使うフラグを指定します。デフォルトの場合や
None
を指定した場合、フラグは globs 内にある future 機能セットに対応したものになります。オプション引数 optionflags は、上で述べた
testfile()
と同様の働きをします。
単体テスト API¶
doctest が付けられたモジュールが大きくなるにつれ、全ての doctest を組織的に実行したくなるでしょう。 doctest
モジュールは 2 つの関数を提供していて、 unittest
のテストスイートを作り、 doctest を含んだテキストファイルを作成するのに使えます。 unittest
のテストディスカバリと組み合わせるには、テストモジュールに load_tests()
関数を書いておいてください:
import unittest
import doctest
import my_module_with_doctests
def load_tests(loader, tests, ignore):
tests.addTests(doctest.DocTestSuite(my_module_with_doctests))
return tests
doctest の入ったテキストファイルやモジュールから unittest.TestSuite
インスタンスを生成するための主な関数は二つあります:
-
doctest.
DocFileSuite
(*paths, module_relative=True, package=None, setUp=None, tearDown=None, globs=None, optionflags=0, parser=DocTestParser(), encoding=None)¶ 単一または複数のテキストファイルに入っている doctest 形式のテストを、
unittest.TestSuite
インスタンスに変換します。この関数の返す
unittest.TestSuite
インスタンスは、 unittest フレームワークで動作させ、各ファイルの実行例を対話的に実行するためのものです。ファイル内の何らかの実行例の実行に失敗すると、この関数で生成した単体テストは失敗し、該当するテストの入っているファイルの名前と、 (場合によりだいたいの) 行番号の入ったfailureException
例外を送出します。関数には、テストを行いたい一つまたは複数のファイルへのパスを (文字列で) 渡します。
DocFileSuite()
には、キーワード引数でオプションを指定できます:オプション引数 module_relative は paths に指定したファイル名をどのように解釈するかを指定します:
module_relative が
True
(デフォルト) の場合、paths 中のファイル名は OS に依存しないモジュールの相対パスになります。デフォルトでは、このパスは呼び出し元のモジュールのディレクトリからの相対パスになります; ただし、package 引数を指定した場合には、パッケージからの相対になります。OS への依存性を除くため、各ファイル名はパスを分割するのに/
文字を使わなければならず、絶対パスにしてはなりません (パス文字列を/
で始めてはなりません)。module_relative が
False
の場合、filename は OS 依存のパスを示します。パスは絶対パスでも相対パスでもかまいません; 相対パスにした場合、現在の作業ディレクトリを基準に解決します。
オプション引数 package には、Python パッケージを指定するか、モジュール相対のファイル名の場合には相対の基準ディレクトリとなる Python パッケージの名前を指定します。パッケージを指定しない場合、関数を呼び出しているモジュールのディレクトリを相対の基準ディレクトリとして使います。module_relative を
False
に指定している場合、package を指定するとエラーになります。オプション引数 setUp には、テストスイートのセットアップに使う関数を指定します。この関数は、各ファイルのテストを実行する前に呼び出されます。 setUp 関数は
DocTest
オブジェクトに引き渡されます。 setUp は globs 属性を介してテストのグローバル変数にアクセスできます。オプション引数 tearDown には、テストを解体 (tear-down) するための関数を指定します。この関数は、各ファイルのテストの実行を終了するたびに呼び出されます。 tearDown 関数は
DocTest
オブジェクトに引き渡されます。 tearDown は globs 属性を介してテストのグローバル変数にアクセスできます。オプション引数 globs は辞書で、テストのグローバル変数の初期値が入ります。この辞書は各テストごとに新たにコピーして使われます。デフォルトでは globs は空の新たな辞書です。
オプション引数 optionflags には、テストを実行する際にデフォルトで適用される doctest オプションを OR で結合して指定します。 オプションフラグ 節を参照してください。結果レポートに関するオプションを指定するより適切な方法は下記の
set_unittest_reportflags()
の説明を参照してください。オプション引数 parser には、
DocTestParser
(またはそのサブクラス) を指定します。このクラスはファイルから実行例を抽出するために使われます。デフォルトでは通常のパーザ (DocTestParser()
) です。オプション引数 encoding にはファイルをユニコードに変換する際に使われるエンコーディングを指定します。
DocFileSuite()
を使用してテキストファイルからロードされた doctests に提供される globals に、グローバル変数__file__
が追加されます。
-
doctest.
DocTestSuite
(module=None, globs=None, extraglobs=None, test_finder=None, setUp=None, tearDown=None, checker=None)¶ doctest のテストを
unittest.TestSuite
に変換します。この関数の返す
unittest.TestSuite
インスタンスは、 unittest フレームワークで動作させ、モジュール内の各 doctest を実行するためのものです。何らかの doctest の実行に失敗すると、この関数で生成した単体テストは失敗し、該当するテストの入っているファイルの名前と、 (場合によりだいたいの) 行番号の入ったfailureException
例外を送出します。オプション引数 module には、テストしたいモジュールの名前を指定します。module にはモジュールオブジェクトまたは (ドット表記の) モジュール名を指定できます。module を指定しない場合、この関数を呼び出しているモジュールになります。
オプション引数 globs は辞書で、テストのグローバル変数の初期値が入ります。この辞書は各テストごとに新たにコピーして使われます。デフォルトでは globs は空の新たな辞書です。
オプション引数 extraglobs には追加のグローバル変数セットを指定します。この変数セットは globs に統合されます。デフォルトでは、追加のグローバル変数はありません。
オプション引数 test_finder は、モジュールから doctest を抽出するための
DocTestFinder
オブジェクト (またはその代替となるオブジェクト) です。オプション引数 setUp 、 tearDown 、および optionflags は上の
DocFileSuite()
と同じです。この関数は
testmod()
と同じ検索方法を使います。バージョン 3.5 で変更: module がドキュメンテーション文字列を含まない場合には、
DocTestSuite()
はValueError
を送出するのではなく空のunittest.TestSuite
を返します。
裏側では DocTestSuite()
は doctest.DocTestCase
インスタンスから unittest.TestSuite
を作成しており、 DocTestCase
は unittest.TestCase
のサブクラスになっています。 DocTestCase
についてはここでは説明しません (これは内部実装上の詳細だからです) が、そのコードを調べてみれば、 unittest
の組み込みの詳細に関する疑問を解決できるはずです。
同様に、 DocFileSuite()
は doctest.DocFileCase
インスタンスから unittest.TestSuite
を作成し、 DocFileCase
は DocTestCase
のサブクラスになっています。
そのため、 unittest.TestSuite
クラスを生成するどちらの方法も DocTestCase
のインスタンスを実行します。これは次のような微妙な理由で重要です: doctest
関数を自分で実行する場合、オプションフラグを doctest
関数に渡すことで、 doctest
のオプションを直接操作できます。しかしながら、 unittest
フレームワークを書いている場合には、いつどのようにテストを動作させるかを unittest
が完全に制御してしまいます。フレームワークの作者はたいてい、 doctest
のレポートオプションを (コマンドラインオプションで指定するなどして) 操作したいと考えますが、 unittest
を介して doctest
のテストランナーにオプションを渡す方法は存在しないのです。
このため、 doctest
では、以下の関数を使って、 unittest
サポートに特化したレポートフラグ表記方法もサポートしています:
-
doctest.
set_unittest_reportflags
(flags)¶ doctest
のレポートフラグをセットします。引数 flags はオプションフラグの ビット単位論理和 を取ります。 オプションフラグ 節を参照してください。「レポートフラグ」しか使えません。
この関数で設定した内容はモジュール全体にわたるものであり、関数呼び出し以後に
unittest
モジュールから実行されるすべての doctest に影響します:DocTestCase
のrunTest()
メソッドは、DocTestCase
インスタンスが作成された際に、現在のテストケースに指定されたオプションフラグを見に行きます。レポートフラグが指定されていない場合 (通常の場合で、望ましいケースです)、doctest
のunittest
レポートフラグが bit ごとの OR で結合され、doctest を実行するために作成されるDocTestRunner
インスタンスに渡されます。DocTestCase
インスタンスを構築する際に何らかのレポートフラグが指定されていた場合、doctest
のunittest
レポートフラグは無視されます。この関数は、関数を呼び出す前に有効になっていた
unittest
レポートフラグの値を返します。
拡張 API¶
基本 API は、doctest を使いやすくするための簡単なラッパであり、柔軟性があってほとんどのユーザの必要を満たしています; とはいえ、もっとテストをきめ細かに制御したい場合や、doctest の機能を拡張したい場合、拡張 API (advanced API) を使わなければなりません。
拡張 API は、doctest ケースから抽出した対話モードでの実行例を記憶するための二つのコンテナクラスを中心に構成されています:
その他に、doctest の実行例を検索、構文解析、実行、チェックするための処理クラスが以下のように定義されています:
DocTestFinder
: 与えられたモジュールからすべての docstring を検索し、DocTestParser
を使って対話モードでの実行例が入ったすべての docstring からDocTest
を生成します。DocTestParser
: (オブジェクトの docstring 等の) 文字列からDocTest
オブジェクトを生成します。DocTestRunner
:DocTest
内の実行例を実行し、OutputChecker
を使って出力を検証します。OutputChecker
: doctest 実行例から実際に出力された結果を期待する出力と比較し、両者が一致するか判別します。
これらの処理クラスの関係を図にまとめると、以下のようになります:
list of:
+------+ +---------+
|module| --DocTestFinder-> | DocTest | --DocTestRunner-> results
+------+ | ^ +---------+ | ^ (printed)
| | | Example | | |
v | | ... | v |
DocTestParser | Example | OutputChecker
+---------+
DocTest オブジェクト¶
-
class
doctest.
DocTest
(examples, globs, name, filename, lineno, docstring)¶ 単一の名前空間内で実行される doctest 実行例の集まりです。コンストラクタの引数は
DocTest
インスタンス中の同名の属性の初期化に使われます。DocTest
では、以下の属性を定義しています。これらの変数はコンストラクタで初期化されます。直接変更してはなりません。-
globs
¶ 実行例を実行する名前空間 (いわゆるグローバル変数) です。このメンバは、名前から値への対応付けを行っている辞書です。実行例が名前空間に対して (新たな変数を束縛するなど) 何らかの変更を行った場合、
globs
への反映はテストの実行後に起こります。
-
docstring
¶ テストを取り出した docstring 自体を現す文字列です。docstring 文字列を得られない場合や、文字列からテスト実行例を取り出したのでない場合には
None
になります。
-
Example オブジェクト¶
-
class
doctest.
Example
(source, want, exc_msg=None, lineno=0, indent=0, options=None)¶ ひとつの Python 文と、それに対する期待する出力からなる、単一の対話的モードの実行例です。コンストラクタの引数は
Example
インスタンス中の同名の属性の初期化に使われます。Example
では、以下の属性を定義しています。これらの変数はコンストラクタで初期化されます。直接変更してはなりません。-
source
¶ 実行例のソースコードが入った文字列です。ソースコードは単一の Python で、末尾は常に改行です。コンストラクタは必要に応じて改行を追加します。
-
want
¶ 実行例のソースコードを実行した際の期待する出力 (標準出力と、例外が生じた場合にはトレースバック) です。
want
の末尾は、期待する出力がまったくない場合を除いて常に改行になります。期待する出力がない場合には空文字列になります。コンストラクタは必要に応じて改行を追加します。
-
exc_msg
¶ 実行例が例外を生成すると期待される場合の例外メッセージです。例外を送出しない場合には
None
です。この例外メッセージは、traceback.format_exception_only()
の戻り値と比較されます。値がNone
でない限り、exc_msg
は改行で終わっていなければなりません; コンストラクタは必要に応じて改行を追加します。
-
lineno
¶ この実行例を含む文字列における実行例が始まる行番号です。行番号は文字列の先頭を 0 として数えます。
-
indent
¶ 実行例の入っている文字列のインデント、すなわち実行例の最初のプロンプトより前にある空白文字の数です。
-
options
¶ オプションフラグを
True
またはFalse
に対応付けている辞書です。実行例に対するデフォルトオプションを上書きするために用いられます。この辞書に入っていないオプションフラグはデフォルトの状態 (DocTestRunner
のoptionflags
の内容) のままになります。
-
DocTestFinder オブジェクト¶
-
class
doctest.
DocTestFinder
(verbose=False, parser=DocTestParser(), recurse=True, exclude_empty=True)¶ 与えられたオブジェクトについて、そのオブジェクト自身の docstring か、そのオブジェクトに含まれるオブジェクトの docstring から
DocTest
を抽出する処理クラスです。モジュール、クラス、関数、メソッド、静的メソッド、クラスメソッド、プロパティからDocTest
を抽出できます。オプション引数 verbose を使うと、抽出処理の対象となるオブジェクトを表示できます。デフォルトは
False
(出力を行わない) です。オプション引数 parser には、 docstring から
DocTest
を抽出するのに使うDocTestParser
オブジェクト (またはその代替となるオブジェクト) を指定します。オプション引数 recurse が偽の場合、
DocTestFinder.find()
は与えられたオブジェクトだけを調べ、そのオブジェクトに含まれる他のオブジェクトを調べません。オプション引数 exclude_empty が偽の場合、
DocTestFinder.find()
は空の docstring を持つオブジェクトもテスト対象に含めます。DocTestFinder
では以下のメソッドを定義しています:-
find
(obj[, name][, module][, globs][, extraglobs])¶ obj または obj 内に入っているオブジェクトの docstring 中で定義されている
DocTest
のリストを返します。オプション引数 name には、オブジェクトの名前を指定します。この名前は、関数が返す
DocTest
の名前になります。 name を指定しない場合、obj.__name__
を使います。オプションのパラメータ module は、指定したオブジェクトを収めているモジュールを指定します。 module を指定しないか、
None
を指定した場合には、正しいモジュールを自動的に決定しようと試みます。 オブジェクトのモジュールは以下のような役割を果たします:globs を指定していない場合、オブジェクトのモジュールはデフォルトの名前空間になります。
他のモジュールから import されたオブジェクトに対して
DocTestFinder
がDocTest
を抽出するのを避けるために使います。 (module 由来でないオブジェクトを無視します。)オブジェクトの入っているファイル名を調べるために使います。
オブジェクトがファイル内の何行目にあるかを調べる手助けにします。
module が
False
の場合には、モジュールの検索を試みません。これは正確さを欠くような使い方で、通常 doctest 自体のテストにしか使いません。module がFalse
の場合、または module がNone
で自動的に的確なモジュールを見つけ出せない場合には、すべてのオブジェクトは(non-existent)
モジュールに属するとみなされ、そのオブジェクト内のすべてのオブジェクトに対して (再帰的に) doctest の検索を行います。各
DocTest
のグローバル変数は、 globs と extraglobs を合わせたもの (extraglobs 内の束縛が globs 内の束縛を上書きする) になります。各々のDocTest
に対して、グローバル変数を表す辞書の新たな浅いコピーを生成します。 globs を指定しない場合に使われるのデフォルト値は、モジュールを指定していればそのモジュールの __dict__ になり、指定していなければ{}
になります。 extraglobs を指定しない場合、デフォルトの値は{}
になります。
-
DocTestParser オブジェクト¶
-
class
doctest.
DocTestParser
¶ 対話モードの実行例を文字列から抽出し、それを使って
DocTest
オブジェクトを生成するために使われる処理クラスです。DocTestParser
では以下のメソッドを定義しています:-
get_doctest
(string, globs, name, filename, lineno)¶ 指定した文字列からすべての doctest 実行例を抽出し、
DocTest
オブジェクト内に集めます。globs, name, filename, および lineno は新たに作成される
DocTest
オブジェクトの属性になります。詳しくはDocTest
のドキュメントを参照してください。
-
DocTestRunner オブジェクト¶
-
class
doctest.
DocTestRunner
(checker=None, verbose=None, optionflags=0)¶ DocTest
内の対話モード実行例を実行し、検証する際に用いられる処理クラスです。期待する出力と実際の出力との比較は
OutputChecker
で行います。比較は様々なオプションフラグを使ってカスタマイズできます; 詳しくは オプションフラグ を参照してください。オプションフラグでは不十分な場合、コンストラクタにOutputChecker
のサブクラスを渡して比較方法をカスタマイズできます。テストランナーの表示出力の制御には二つの方法があります。一つ目は、
TestRunner.run()
に出力用の関数を渡すというものです。この関数は、表示すべき文字列を引数にして呼び出されます。デフォルトはsys.stdout.write
です。出力を取り込んで処理するだけでは不十分な場合、DocTestRunner
をサブクラス化し、report_start()
,report_success()
,report_unexpected_exception()
, およびreport_failure()
をオーバライドすればカスタマイズできます。オプションのキーワード引数 checker には、
OutputChecker
オブジェクト (またはその代替となるオブジェクト) を指定します。このオブジェクトは doctest 実行例の期待する出力と実際の出力との比較を行う際に使われます。オプションのキーワード引数 verbose は、
DocTestRunner
の出すメッセージの冗長性を制御します。 verbose がTrue
の場合、各実行例を実行する都度、その実行例についての情報を出力します。 verbose がFalse
の場合、テストの失敗だけを出力します。 verbose を指定しない場合やNone
を指定した場合、コマンドラインスイッチ-v
を使った場合にのみ verbose 出力を適用します。オプションのキーワード引数 optionflags を使うと、テストランナーが期待される出力と実際の出力を比較する方法や、テストの失敗を表示する方法を制御できます。詳しくは オプションフラグ 節を参照してください。
DocTestParser
では以下のメソッドを定義しています:-
report_start
(out, test, example)¶ テストランナーが実行例を処理しようとしているときにレポートを出力します。
DocTestRunner
の出力をサブクラスでカスタマイズできるようにするためのメソッドです。直接呼び出してはなりません。example は処理する実行例です。 test は example の入っているテストです。 out は出力用の関数で、
DocTestRunner.run()
に渡されます。
-
report_success
(out, test, example, got)¶ 与えられた実行例が正しく動作したことを報告します。このメソッドは
DocTestRunner
のサブクラスで出力をカスタマイズできるようにするために提供されています; 直接呼び出してはなりません。example は処理する実行例です。 got は実行例から実際に得られた出力です。 test は example の入っているテストです。 out は出力用の関数で、
DocTestRunner.run()
に渡されます。
-
report_failure
(out, test, example, got)¶ 与えられた実行例が正しく動作しなかったことを報告します。このメソッドは
DocTestRunner
のサブクラスで出力をカスタマイズできるようにするために提供されています; 直接呼び出してはなりません。example は処理する実行例です。 got は実行例から実際に得られた出力です。 test は example の入っているテストです。 out は出力用の関数で、
DocTestRunner.run()
に渡されます。
-
report_unexpected_exception
(out, test, example, exc_info)¶ 与えられた実行例が期待とは違う例外を送出したことを報告します。このメソッドは
DocTestRunner
のサブクラスで出力をカスタマイズできるようにするために提供されています; 直接呼び出してはなりません。example は処理する実行例です。 exc_info には予期せず送出された例外の情報を入れたタプル (
sys.exc_info()
の返す内容) になります。 test は example の入っているテストです。 out は出力用の関数で、DocTestRunner.run()
に渡されます。
-
run
(test, compileflags=None, out=None, clear_globs=True)¶ test 内の実行例 (
DocTest
オブジェクト) を実行し、その結果を出力用の関数 out を使って表示します。実行例は名前空間
test.globs
の下で実行されます。clear_globs が真 (デフォルト) の場合、名前空間はテストの実行後に消去され、ガベージコレクションを促します。テストの実行完了後にその内容を調べたければ、clear_globs=False としてください。compileflags には、実行例を実行する際に Python コンパイラに適用するフラグセットを指定します。compileflags を指定しない場合、デフォルト値は globs で適用されている future-import フラグセットになります。
各実行例の出力は
DocTestRunner
の出力チェッカで検査され、その結果はDocTestRunner.report_*()
メソッドで書式化されます。
-
summarize
(verbose=None)¶ この DocTestRunner が実行したすべてのテストケースのサマリを出力し、 名前付きタプル
TestResults(failed, attempted)
を返します。オプションの verbose 引数を使うと、どのくらいサマリを詳しくするかを制御できます。冗長度を指定しない場合、
DocTestRunner
自体の冗長度を使います。
-
OutputChecker オブジェクト¶
-
class
doctest.
OutputChecker
¶ doctest 実行例を実際に実行したときの出力が期待する出力と一致するかどうかをチェックするために使われるクラスです。
OutputChecker
では、与えられた二つの出力を比較して、一致する場合にはTrue
を返すcheck_output()
と、二つの出力間の違いを説明する文字列を返すoutput_difference()
の、二つのメソッドがあります。OutputChecker
では以下のメソッドを定義しています:-
check_output
(want, got, optionflags)¶ 実行例から実際に得られた出力 (got) と、期待する出力 (want) が一致する場合にのみ
True
を返します。二つの文字列がまったく同一の場合には常に一致するとみなしますが、テストランナーの使っているオプションフラグにより、厳密には同じ内容になっていなくても一致するとみなす場合もあります。オプションフラグについての詳しい情報は オプションフラグ 節を参照してください。
-
output_difference
(example, got, optionflags)¶ 与えられた実行例 (example) の期待する出力と、実際に得られた出力 (got) の間の差異を解説している文字列を返します。optionflags は want と got を比較する際に使われるオプションフラグのセットです。
-
デバッグ¶
doctest
では、doctest 実行例をデバッグするメカニズムをいくつか提供しています:
doctest を実行可能な Python プログラムに変換し、 Python デバッガ
pdb
で実行できるようにするための関数がいくつかあります。DocTestRunner
のサブクラスDebugRunner
クラスがあります。このクラスは、最初に失敗した実行例に対して例外を送出します。例外には実行例に関する情報が入っています。この情報は実行例の検死デバッグに利用できます。DocTestSuite()
の生成するunittest
テストケースは、debug()
メソッドをサポートしています。debug()
はunittest.TestCase
で定義されています。pdb.set_trace()
を doctest 実行例の中で呼び出しておけば、その行が実行されたときに Python デバッガが組み込まれます。デバッガを組み込んだあとは、変数の現在の値などを調べられます。たとえば、以下のようなモジュールレベルの docstring の入ったファイルa.py
があるとします:""" >>> def f(x): ... g(x*2) >>> def g(x): ... print(x+3) ... import pdb; pdb.set_trace() >>> f(3) 9 """
対話セッションは以下のようになるでしょう:
>>> import a, doctest >>> doctest.testmod(a) --Return-- > <doctest a[1]>(3)g()->None -> import pdb; pdb.set_trace() (Pdb) list 1 def g(x): 2 print(x+3) 3 -> import pdb; pdb.set_trace() [EOF] (Pdb) p x 6 (Pdb) step --Return-- > <doctest a[0]>(2)f()->None -> g(x*2) (Pdb) list 1 def f(x): 2 -> g(x*2) [EOF] (Pdb) p x 3 (Pdb) step --Return-- > <doctest a[2]>(1)?()->None -> f(3) (Pdb) cont (0, 3) >>>
以下は、doctest を Python コードに変換して、できたコードをデバッガ下で実行できるようにするための関数です:
-
doctest.
script_from_examples
(s)¶ 実行例の入ったテキストをスクリプトに変換します。
引数 s は doctest 実行例の入った文字列です。この文字列は Python スクリプトに変換され、その中では s の doctest 実行例が通常のコードに、それ以外は Python のコメント文になります。生成したスクリプトを文字列で返します。例えば、
import doctest print(doctest.script_from_examples(r""" Set x and y to 1 and 2. >>> x, y = 1, 2 Print their sum: >>> print(x+y) 3 """))
は:
# Set x and y to 1 and 2. x, y = 1, 2 # # Print their sum: print(x+y) # Expected: ## 3
この関数は内部的に他の関数から使われていますが (下記参照)、対話セッションを Python スクリプトに変換したいような場合にも便利でしょう。
-
doctest.
testsource
(module, name)¶ あるオブジェクトの doctest をスクリプトに変換します。
引数 module はモジュールオブジェクトか、対象の doctest を持つオブジェクトの入ったモジュールのドット表記名です。引数 name は対象の doctest を持つオブジェクトの (モジュール内の) 名前です。対象オブジェクトの docstring を上記の
script_from_examples()
で説明した方法で Python スクリプトに変換してできた文字列を返します。例えば、a.py
モジュールのトップレベルに関数f()
がある場合、以下のコードimport a, doctest print(doctest.testsource(a, "a.f"))
を実行すると、
f()
の docstring から doctest をコードに変換し、それ以外をコメントにしたスクリプトを出力します。
-
doctest.
debug
(module, name, pm=False)¶ オブジェクトの持つ doctest をデバッグします。
module および name 引数は上の
testsource()
と同じです。指定したオブジェクトの docstring から合成された Python スクリプトは一時ファイルに書き出され、その後 Python デバッガpdb
の制御下で実行されます。ローカルおよびグローバルの実行コンテキストには、
module.__dict__
の浅いコピーが使われます。オプション引数 pm は、検死デバッグを行うかどうかを指定します。 pm が真の場合、スクリプトファイルは直接実行され、スクリプトが送出した例外が処理されないまま終了した場合にのみデバッガが立ち入ります。その場合、
pdb.post_mortem()
によって検死デバッグを起動し、処理されなかった例外から得られたトレースバックオブジェクトを渡します。 pm を指定しないか値を偽にした場合、pdb.run()
に適切なexec()
呼び出しを渡して、最初からデバッガの下でスクリプトを実行します。
-
doctest.
debug_src
(src, pm=False, globs=None)¶ 文字列中の doctest をデバッグします。
上の
debug()
に似ていますが、doctest の入った文字列は src 引数で直接指定します。オプション引数 pm は上の
debug()
と同じ意味です。オプション引数 globs には、ローカルおよびグローバルな実行コンテキストの両方に使われる辞書を指定します。globs を指定しない場合や
None
にした場合、空の辞書を使います。辞書を指定した場合、実際の実行コンテキストには浅いコピーが使われます。
DebugRunner
クラス自体や DebugRunner
クラスが送出する特殊な例外は、テストフレームワークの作者にとって非常に興味のあるところですが、ここでは概要しか述べられません。詳しくはソースコード、とりわけ DebugRunner
の docstring (それ自体 doctest です!) を参照してください:
-
class
doctest.
DebugRunner
(checker=None, verbose=None, optionflags=0)¶ テストの失敗に遭遇するとすぐに例外を送出するようになっている
DocTestRunner
のサブクラスです。予期しない例外が生じると、UnexpectedException
例外を送出します。この例外には、テスト、実行例、もともと送出された例外が入っています。期待する出力と実際の出力が一致しないために失敗した場合には、DocTestFailure
例外を送出します。この例外には、テスト、実行例、実際の出力が入っています。コンストラクタのパラメータやメソッドについては、 拡張 API 節の
DocTestRunner
のドキュメントを参照してください。
DebugRunner
インスタンスの送出する例外には以下の二つがあります:
-
exception
doctest.
DocTestFailure
(test, example, got)¶ doctest 実行例の実際の出力が期待する出力と一致しなかったことを示すために
DocTestRunner
が送出する例外です。コンストラクタの引数は、インスタンスの同名の属性を初期化するために使われます。
DocTestFailure
では以下の属性を定義しています:
-
DocTestFailure.
got
¶ 実行例の実際の出力です。
-
exception
doctest.
UnexpectedException
(test, example, exc_info)¶ doctest 実行例が予期しない例外を送出したことを示すために
DocTestRunner
が送出する例外です。コンストラクタの引数は、インスタンスの同名の属性を初期化するために使われます。
UnexpectedException
では以下の属性を定義しています:
-
UnexpectedException.
exc_info
¶ 予期しない例外についての情報の入ったタプルで、
sys.exc_info()
が返すのと同じものです。
アドバイス¶
冒頭でも触れたように、 doctest
は、以下の三つの主な用途を持つようになりました:
docstring 内の実行例をチェックする。
回帰テストを行う。
実行可能なドキュメント/読めるテストの実現。
これらの用途にはそれぞれ違った要求があるので、区別して考えるのが重要です。特に、docstring を曖昧なテストケースに埋もれさせてしまうとドキュメントとしては最悪です。
docstring の例は注意深く作成してください。 doctest の作成にはコツがあり、きちんと学ぶ必要があります --- 最初はすんなりできないでしょう。実行例はドキュメントに本物の価値を与えます。良い例は、たくさんの言葉と同じ価値を持つことがしばしばあります。注意深くやれば、例はユーザにとっては非常に有益であり、時を経るにつれて、あるいは状況が変わった際に、何度も修正するのにかかる時間を節約するという形で、きっと見返りを得るでしょう。私は今でも、自分の doctest
実行例が "無害な" 変更を行った際にうまく動作しなくなることに驚いています。
説明テキストの作成をけちらなければ、doctest
は回帰テストの優れたツールにもなり得ます。説明文と実行例を交互に記述していけば、実際に何をどうしてテストしているのかもっと簡単に把握できるようになるでしょう。もちろん、コードベースのテストに詳しくコメントを入れるのも手ですが、そんなことをするプログラマはほとんどいません。多くの人々が、doctest
のアプローチをとった方がきれいにテストを書けると気づいています。おそらく、これは単にコード中にコメントを書くのが少し面倒だからという理由でしょう。私はもう少し穿った見方もしています。doctest ベースのテストを書くときの自然な態度は、自分のソフトウェアのよい点を説明しようとして、実行例を使って説明しようとするときの態度そのものだからだ、という理由です。それゆえに、テストファイルは自然と単純な機能の解説から始め、論理的により複雑で境界条件的なケースに進むような形になります。結果的に、一見ランダムに見えるような個別の機能をテストしている個別の関数の集まりではなく、首尾一貫した説明ができるようになるのです。doctest
によるテストの作成はまったく別の取り組み方であり、テストと説明の区別をなくして、まったく違う結果を生み出すのです。
回帰テストは特定のオブジェクトやファイルにまとめておくのがよいでしょう。回帰テストの組み方にはいくつか選択肢があります:
テストケースを対話モードの実行例にして入れたテキストファイルを書き、
testfile()
やDocFileSuite()
を使ってそのファイルをテストします。この方法をお勧めします。最初から doctest を使うようにしている新たなプロジェクトでは、この方法が一番簡単です。_regrtest_topic
という名前の関数を定義します。この関数には、あるトピックに対応するテストケースの入った docstring が一つだけ入っています。この関数はモジュールと同じファイルの中にも置けますし、別のテストファイルに分けてもかまいません。回帰テストのトピックをテストケースの入った docstring に対応付けた辞書
__test__
辞書を定義します。
テストコードをモジュールに組み込むことで、そのモジュールは、モジュール自身がテストランナーになることができます。テストが失敗した場合には、問題箇所をデバッグする際に、失敗したdoctestだけを再度実行することで、作成したテストランナーを修正することができます。これがこのようなテストランナーの最小例となります。
if __name__ == '__main__':
import doctest
flags = doctest.REPORT_NDIFF|doctest.FAIL_FAST
if len(sys.argv) > 1:
name = sys.argv[1]
if name in globals():
obj = globals()[name]
else:
obj = __test__[name]
doctest.run_docstring_examples(obj, globals(), name=name,
optionflags=flags)
else:
fail, total = doctest.testmod(optionflags=flags)
print("{} failures out of {} tests".format(fail, total))
脚注
- 1
期待する出力結果と例外の両方を含んだ例はサポートされていません。一方の終わりと他方の始まりを見分けようとするのはエラーの元になりがちですし、解りにくいテストになってしまいます。