What's New in Python 2.3¶
- 著者
A.M. Kuchling
この文書は Python 2.3 の新機能について解説します。Python 2.3 は 2003 年 7 月 29 日にリリースされました。
Python 2.3 の主要なテーマは、2.2 で追加されたいくつかの機能を磨くこと、言語中核に小さいながらも有用な種々の拡張をすること、そして標準ライブラリの拡充です。ひとつ前のバージョンで導入された新しいオブジェクトモデルは、18 ヶ月に渡るバグフィックスと新スタイルクラスの性能改善をもたらした最適化の努力の恩恵を受けました。 sum()
, enumerate()
のような、新たなビルトイン関数が少し追加されました。 in
演算子がサブストリングの検索に使えるようになりました (例えば "ab" in "abc"
は True
を返します)。
たくさんのライブラリ新機能…、Boolean、 set、 heap、 日付/時刻データ型、ZIP 形式アーカイブからのモジュールインポート、待ち望まれていた Python カタログのためのメタデータサポート、更新されたバージョンの IDLE、ロギングメッセージのためのモジュール、テキストの折り返し、CSV ファイルの解析、コマンドラインオプションの処理、BerkeleyDB データベースの使用…、新機能、強化機能のリストは長大になります。
このドキュメントは個々の新機能の完全な詳細を提供するのではなくて、簡易な概要を提供することを目的にしています。完全な詳細が知りたければ、 Python ライブラリリファレンス、Python リファレンスマニュアルのような Python 2.4 のドキュメントを参照してください。設計と実装の根拠を理解したい場合は、新機能に関する PEP を参照してください。
PEP 218: 標準の集合データ型¶
(---訳注: イキナリですが、あなたが今これを「Python の歴史を知る」もしくは「初登場時の熱量高い紹介」を読みたくて読んでいるのでない限りは、もしくは本当に今 2.3 を使う必要があれば別ですが、このモジュールは 2.4 で既にビルトインで置き換えられ、2.6 では非推奨となり、3.0 では削除されています。ので、集合型について知りたければここよりも 2.4 のビルトインの方から読んだ方が良いです。---) --- 新しいモジュール sets
には、集合データ型の実装が含まれています。 Set
クラスは mutable の集合のためのクラスで、メンバの追加と削除が出来ます。 ImmutableSet
は変更できない集合のためのクラスなので、辞書のキーとして利用出来ます。集合型は辞書の上に構築されているので、集合内の要素はハッシュ可能でなければなりません。
単純な使用例です:
>>> import sets
>>> S = sets.Set([1,2,3])
>>> S
Set([1, 2, 3])
>>> 1 in S
True
>>> 0 in S
False
>>> S.add(5)
>>> S.remove(3)
>>> S
Set([1, 2, 5])
>>>
和集合 (union) と共通集合 (intersection) は union()
と intersection()
メソッドで計算出来ます; 別の記法として、ビット演算子 &
と |
も使えます。変更可能な集合ではこれらのインプレイス版 union_update()
と intersection_update()
も使えます:
>>> S1 = sets.Set([1,2,3])
>>> S2 = sets.Set([4,5,6])
>>> S1.union(S2)
Set([1, 2, 3, 4, 5, 6])
>>> S1 | S2 # Alternative notation
Set([1, 2, 3, 4, 5, 6])
>>> S1.intersection(S2)
Set([])
>>> S1 & S2 # Alternative notation
Set([])
>>> S1.union_update(S2)
>>> S1
Set([1, 2, 3, 4, 5, 6])
>>>
2 つの集合の対称差 (symmetric difference) を取ることも出来ます。これは、union から intersection を除いた全要素を取ります。別の言い方をすれば、対称差とは、正確に一つの集合だけに含まれる全要素、ということです。ほかと同じくビット演算子の記法 (^
) が使え、インプレイス版は見苦しい名前の symmetric_difference_update()
です:
>>> S1 = sets.Set([1,2,3,4])
>>> S2 = sets.Set([3,4,5,6])
>>> S1.symmetric_difference(S2)
Set([1, 2, 5, 6])
>>> S1 ^ S2
Set([1, 2, 5, 6])
>>>
issubset()
と issuperset()
メソッドも使えます。これはある集合が部分集合、上位集合であるかとうかをチェックします:
>>> S1 = sets.Set([1,2,3])
>>> S2 = sets.Set([2,3])
>>> S2.issubset(S1)
True
>>> S1.issubset(S2)
False
>>> S1.issuperset(S2)
True
>>>
参考
- PEP 218 - 集合オブジェクト型をビルトインに追加する
PEP 著 Greg V. Wilson. 実装: Greg V. Wilson, Alex Martelli, GvR. (---訳注: PEPそのものは 2.4 のビルトイン型 set, frozenset の追加と同じものですが、2.3 ではモジュールとして追加され、2.4 でビルトイン版が追加され、2.6 でモジュール版が非推奨となった、という流れです。---)
PEP 255: 単純なジェネレータ¶
Python 2.2 では、ジェネレータが from __future__ import generators
ディレクティブで有効に出来るオプションの機能として追加されました。2.3 ではジェネレータは特別に有効化する必要なく、もうキーワード yield
として、いつでもそこにあります。このセクションの残りの部分は "What's New in Python 2.2" のジェネレータの記述からの丸々コピーですので、2.2 のときに読んだなら読み飛ばしてもらって結構です。
Python や C の標準的な関数コールについては、よくご存じに違いありません。関数を呼ぶと、ローカル変数を作るプライベートな名前空間ができますね。その関数が return
文まで来ると、ローカル変数が破壊されてから、返り値が呼び出し元に返ります。次に同じ関数をもう一度呼ぶと、新しいプライベート名前空間に新規のローカル変数が作られるのです。しかし、関数を出るときにローカル変数を捨てなければどうなるでしょうか。その出ていったところから関数を続行できたとしたら、どうでしょう。これこそジェネレータが提供する機能です; すなわち、ジェネレータは続行できる関数と考えることができます。
ジェネレータ関数の最も単純な例です:
def generate_ints(N):
for i in range(N):
yield i
新しいキーワード yield
がジェネレータのために導入されました。 yield
ステートメントを含むどんな関数もジェネレータ関数です; Python バイトコードコンパイラはこれを検知し、関数が特別に扱われるように翻訳します。 (---訳注: Python 2.5 の PEP 342 も参照して下さい。この 2.2 で導入時点の yield
はステートメントではなく式に変更されています。---)
ジェネレータ関数を呼び出すと、単一の値の代わりにイテレータプロトコルに対応したオブジェクトを返します。上の例で yield
を実行したとき、ジェネレータは return
文のようにして i
の値を生成します。 yield
と return
文の大きな違いは、 yield
に到達した段階でジェネレータの実行状態が一時停止になって、ローカル変数が保存される点です。次回そのジェネレータの .next()
メソッドを呼ぶと、 yield
の直後から関数が実行を再開します。(複雑な理由により、 yield
は try
...finally
の try
ブロック内に含めることは許されていません; PEP 255 に yield
と例外の相互作用についての詳細説明がありますので参照して下さい。) --- (---訳注: Python 2.5 の PEP 342 で try
...finally
内に置けないという制約はなくなりました。また、 try
...finally
の try
、とここであえて特定しているのは、同じく 2.5 の PEP 341 によって try/except/finally の一体化されるまでは、 finally
の try
と except
の try
が別物だったからです。---)
上記 generate_ints()
ジェネレータはこんな具合に使います:
>>> gen = generate_ints(3)
>>> gen
<generator object at 0x8117f90>
>>> gen.next()
0
>>> gen.next()
1
>>> gen.next()
2
>>> gen.next()
Traceback (most recent call last):
File "stdin", line 1, in ?
File "stdin", line 2, in generate_ints
StopIteration
同じく for i in generate_ints(5)
や a,b,c = generate_ints(3)
といった書き方もできます。
ジェネレータ関数内で return
文は、引数を付けずに、処理の終わりを知らせるためにだけ使うことができます; return
を実行したあとは、もうそのジェネレータが値を返すことはできません。ジェネレータ関数の中では、 return 5
などと値を付けた return
は構文エラーです。ジェネレータの出力が終わったことを示すには、ほかにも、手動で StopIteration
を投げてもいいですし、関数の最後まで実行するだけでも同じことになります。(---訳注: Python 2.7 まではジェネレータ内での戻り値のある return 5
は構文エラーになりますが、少なくとも Python 3.4 で構文エラーとはなりません。単に無視されます。リファレンスに言及されていない振舞いなので、何かの事故かもしれません。いずれにせよジェネレータ内では Python 3 でも return
で値は戻せません。---)
自分でクラスを書いて、ジェネレータで言うところのローカル変数をインスタンス変数として全部保管しておけば、同じ効果を得ることは可能です。たとえば整数のリストを返すのは、 self.count
を 0 にして、 next()
メソッドが self.count
をインクリメントして返すようにすればできます。しかしながら、ある程度複雑なジェネレータになってくると、同じことをするクラスを書くのは格段にややこしいことになります。 Lib/test/test_generators.py
にはもっと面白い例がたくさん含まれています。一番単純な一つは、ジェネレータを再帰的に使ってツリーを順繰りに横断する実装をするこれです (---訳注: ジェネレータは現在の最新 3.5 までの間に 2 度大きな機能強化が行われているのですが、一つが 2.5 での PEP 342 でこれは yield 「に」値を戻せるようにするものです。もう一つが 3.3 での PEP 380 で、これはサブジェネレータへの委譲 yield from <subgen>
の追加でした。ですのでこの 3.3 からの yield from
を使うと下記例はもっとスッキリ書けます。---):
# A recursive generator that generates Tree leaves in in-order.
def inorder(t):
if t:
for x in inorder(t.left):
yield x
yield t.label
for x in inorder(t.right):
yield x
ほかにも Lib/test/test_generators.py
には、N-Queens 問題 (N×N コマのチェス盤に、互いに攻撃できないような配置で N 個のクイーンを置く) やナイト・ツアー (N×N 盤の全コマをナイトが一度ずつ通るような経路を探す) の解を出す例が入っています。
ジェネレータの発想はほかのプログラミング言語、特に Icon (https://www.cs.arizona.edu/icon/) から着想しています。Icon ではジェネレータが言語の中枢になっています。Icon では、あらゆる式と関数がジェネレータのように振舞います。 https://www.cs.arizona.edu/icon/docs/ipd266.htm の "Icon プログラミング言語の概要" の一つの例が、これがどのようなものであるのかを教えてくれます:
sentence := "Store it in the neighboring harbor"
if (i := find("or", sentence)) > 5 then write(i)
Icon では find()
関数は部分文字列 "or" が見つかる位置 3, 23, 33 を返します。 if
文内では i
には最初 3 が代入されますが、これは 3 より小さいので比較は失敗し、Icon は次の値 23 を取り出します。 23 は 5 より大きいので比較は成功し、コードは 23 をスクリーンに表示します。
Python では Icon がそうするほどにはジェネレータを中心的概念に置きません。ジェネレータは Python 言語中核の新たな一面ではありますが、それらを学ぶのも使うのも誰しも行うべきだというものでもなく、そしてこれで解決できない何か問題があれば、忘れてしまっても良いものです。Icon と比較した特筆すべき Python インターフェイスの機能はジェネレータの状態が具象オブジェクト (イテレータ) で表現されることであり、それは他の関数に渡せますし、データ構造に記憶しておくことも出来ます。(---訳注: ジェネレータについてかなり控えめなのは、この時点で著者は将来の拡張を既に見据えていたから? かもしれませんね。PEP 342 と PEP 380 により今やジェネレータはこの頃より遥かに高機能になっており、今ではきっと「こんなものなくても困らない」なんて Python 使いはいないでしょう。---)
参考
- PEP 255 - 単純なジェネレータ
Neil Schemenauer, Tim Peters, Magnus Lie Hetland により著されました。実装のほとんどは Neil Schemenauer と Tim Peters により行われ、 Python Labs クルーにより他の修正が行われました。
PEP 263: ソースコードのエンコーディング¶
Python ソースファイルで、異なる文字セットエンコーディングを宣言出来るようになりました。エンコーディングはソースコードの 1 行目か 2 行目に特殊形式のコメントを含めることで宣言出来ます。 UTF-8 ファイルであればこのように宣言出来ます:
#!/usr/bin/env python
# -*- coding: UTF-8 -*-
このエンコーディング宣言がなければ、デフォルトの 7 ビット ASCII エンコーディングが使われます(訳注: Python 3 からはデフォルトは utf-8 (PEP 3120))。8 ビット文字を含んでいるのにエンコーディング宣言がないモジュールの実行やインポートを行うと、 Python 2.3 では DeprecationWarning
を引き起こします; 2.4 ではこれは構文エラーになる予定です(訳注: 実際には 2.4 ではこれは実現せず、2.5 から)。
エンコーディング宣言は Unicode 文字列リテラルにのみ影響します。それらは指定したエンコーディングで Unicode 文字列に変換されます。Python 識別子は今でも ASCII 文字列に制限されていることに注意してください。ですから普通の英数字範囲外の文字を変数名に使うことは出来ません。
参考
- PEP 263 - Python ソースコードのエンコーディングを定義する
Marc-André Lemburg、 Martin von Löwis 著; Suzuki Hisao、 Martin von Löwis 実装.
PEP 273: Zip アーカイブからモジュールをインポートする¶
新たなモジュール zipimport
が、ZIP フォーマットの書庫からモジュールのインポートをサポートします。 zipimport
を明示的にインポートする必要はありません; sys.path
に ZIP 形式書庫が追加されるとそれは自動的にインポートされます。例えば:
amk@nyman:~/src/python$ unzip -l /tmp/example.zip
Archive: /tmp/example.zip
Length Date Time Name
-------- ---- ---- ----
8467 11-26-02 22:30 jwzthreading.py
-------- -------
8467 1 file
amk@nyman:~/src/python$ ./python
Python 2.3 (#1, Aug 1 2003, 19:54:32)
>>> import sys
>>> sys.path.insert(0, '/tmp/example.zip') # Add .zip file to front of path
>>> import jwzthreading
>>> jwzthreading.__file__
'/tmp/example.zip/jwzthreading.py'
>>>
sys.path
には今や ZIP 書庫のファイル名も入れることが出来ます。ZIP アーカイブ内にはどんなファイルを置いてもかまいませんが、import できるのは *.py
, *.pyc
, *.pyo
だけです。書庫に *.py
だけが含まれる場合には、Python は書庫を修正して対応する *.pyc
を作るなどということはしないので、 *.pyc
ファイルを含まない ZIP 書庫からのインポートはやや遅いかもしれません。
書庫内のパスをサブディレクトリ以下のみインポートするように指定出来ます; 例えば、パス /tmp/example.zip/lib/
はその書庫内の lib/
サブディレクトリだけからインポートします。
参考
- PEP 273 - Zip アーカイブからモジュールをインポートする
このモジュールの実装も行った、James C. Ahlstrom による PEP です。 Python 2.3 は PEP 273 の仕様に従っていますが、 Just van Rossum の書いた、 PEP 302 に記述されている import フックによる実装を使っています。その新しい import フックについては PEP 302: 新たなインポートフック をみてください。
PEP 277: Windows NT での Unicode ファイル名サポート¶
Windows NT, 2000, XP では、ファイルシステムはファイル名として Unicode 文字列を使います。伝統的に Python はファイル名をバイト文字列として表現してきましたが、それはアクセス出来ないファイル名を表してしまう場合があって、不十分でした。
Python はいまや (ファイルシステムの制約の範囲内での) 任意の Unicode 文字列をファイル名が期待される全ての関数で許容します。 os.listdir()
に Unicode 文字列が渡されれば、Python は今では Unicode 文字列のリストを返します。新しい関数 os.getcwdu()
は Unicode 文字列でカレントディレクトリを返します(訳注: ちなみに Python 3 での Unicode 周りの大改造に伴いこの関数はなくなり、代わりに「あえてバイト列のほうを返す」 os.getcwdb
が追加されています(os.getcwdu
がもはや Unicode を返すので)。)。
ファイル名のバイト文字列はいまでも動きます。Windows 版 Python は透過的にそれらを Unicode に mbcs
エンコーディングを使って変換します。
ほかのシステムでもファイル名の Unicode は許容されますが、システムに渡す前にバイト文字列に変換され、 UnicodeError
例外を引き起こすかもしれません。アプリケーションは任意の Unicode 文字列がファイル名に許されるかどうかを、ブーリアン値 os.path.supports_unicode_filenames
をチェックすることでテスト出来ます。
MacOS では、 os.listdir()
は Unicode ファイル名を返すようになっているでしょう。
参考
- PEP 277 - Windows NT での Unicode ファイル名サポート
Neil Hodgson 著; 実装 Neil Hodgson, Martin von Löwis, Mark Hammond。
PEP 278: Universal Newline サポート¶
今日では 3 つの主要なオペレーティングシステムが使われています。 Microsoft Windows, Apple の Macintosh OS, さまざまな Unix 派生系です。テキストファイルの行終端マークに使う文字がこれら 3 つ全てでそれぞれ違っていることが、クロスプラットフォームのための仕事における小さな苛立ちです。 Unix が使うのはラインフィード (ASCII 文字 10), MacOS が使うのはキャリッジリターン (ASCII 文字 13), Windows に至ってはキャリッジリターンとラインフィード 2 文字のシーケンスを使います。
Python のファイルオブジェクトが、動作しているプラットフォームに従わない行終端変換をサポートするようになりました。ファイルのオープンにモード 'U'
や 'rU'
を使うと、 universal newlines モードを使った読み込みとしてファイルを開きます。これで read()
, readline()
などのファイルメソッドが、 3 つどの行終端でも '\n'
に翻訳して返すようになります。
universal newline サポートはモジュールのインポートと execfile()
関数でのファイル実行にも使われます。これで 3 つ全てのオペレーティングシステム間で行終端変換の必要なく Python モジュールを共有出来ます。
この機能は Python をソースからビルドする際に configure スクリプトに --without-universal-newlines
スイッチ を付けることで無効に出来ます。
参考
- PEP 278 : Universal Newline サポート
Jack Jansen 著、実装
PEP 279: enumerate()¶
新たな組み込み関数 enumerate()
はある種のループ処理を少し簡潔にするものです。 thing がイテレータかシーケンスだとして、 enumerate(thing)
は (0, thing[0])
, (1, thing[1])
, (2, thing[2])
, … を生成するイテレータを返します。
リストの全てを変更するためのよくあるイディオムはこのようなものでしょう:
for i in range(len(L)):
item = L[i]
# ... compute some result based on item ...
L[i] = result
これは enumerate()
を使ってこのように書き換えることが出来ます:
for i, item in enumerate(L):
# ... compute some result based on item ...
L[i] = result
参考
- PEP 279 - 組み込み関数 enumerate()
Raymond D. Hettinger 著、実装.
PEP 282: ロギングパッケージ¶
ログ記録のための標準パッケージ logging
が Python 2.3 に追加されています。それはログ出力生成の強力で柔軟なメカニズムを提供し、フィルタと加工を色々な方法で行えます。標準フォーマットで書く設定ファイルで、プログラムのロギングの振る舞いを制御出来ます。ログレコードを標準エラー出力やファイルやソケット、システムログへの送信、あるいは e-mail 送信するようなハンドラが Python に含まれています。もちろん、あなた自身のハンドラクラスを書くことも出来ます。
Logger
が最も重要なクラスです。ほとんどのアプリケーションコードは一つかそれ以上の Logger
オブジェクトを扱い、それぞれ一つはそのアプリケーションの特定のサブシステムで使われるでしょう。それぞれの Logger
は名前で識別され、名前は .
をコンポーネントのセパレータとして使う階層で体系化されます。例えば server
, server.auth
, server.network
といった名前の Logger
インスタンスを持つといった具合です。この例の後ろ 2 つは階層で server
の下にあります。 server
への冗長性を見つけた場合や server
メッセージを直接異なるハンドラに向けた場合、変更は server.auth
と server.network
へのログ記録にも適用されるということです。全てのほかのロガーの親となる、ルート Logger
もあります。
単純な用法のために、 logging
パッケージはいくつかの便利関数を含んでいて、これは常にルートログを使います:
import logging
logging.debug('Debugging information')
logging.info('Informational message')
logging.warning('Warning:config file %s not found', 'server.conf')
logging.error('Error occurred')
logging.critical('Critical error -- shutting down')
これは以下のような出力をします:
WARNING:root:Warning:config file server.conf not found
ERROR:root:Error occurred
CRITICAL:root:Critical error -- shutting down
デフォルトの設定では、情報メッセージとデバッグメッセージは揉み消され、また、出力は標準エラー出力に送られます。情報メッセージとデバッグメッセージ表示の有効化は、ルートロガーの setLevel()
メソッドを呼び出して行えます。
上の例での warning()
呼び出しの文字列フォーマットの操作に注目してください。全てのログメッセージ関数は、引数 (msg, arg1, arg2, ...)
を取り、 msg % (arg1, arg2, ...)
の結果の文字列をログ出力します。
最も最新のトレースバックを記録する exception()
関数もあります。他の全ての関数も、 exc_info 引数を真にすればトレースバックを記録します。:
def f():
try: 1/0
except: logging.exception('Problem recorded')
f()
これは以下のような出力をします:
ERROR:root:Problem recorded
Traceback (most recent call last):
File "t.py", line 6, in f
1/0
ZeroDivisionError: integer division or modulo by zero
多少なりとも高度なプログラムでは、ルートロガー以上のロガーを使うでしょう。 getLogger(name)
関数は特定のロガーを取得するのに使います。その時点で存在していなければ、作成されます。 getLogger(None)
はルートロガーを返します。:
log = logging.getLogger('server')
...
log.info('Listening on port %i', port)
...
log.critical('Disk full')
...
ログレコードは普通階層を上に向かって伝播するので、 server.auth
へのログは server
と root
にも見られますが、 Logger
はこれを propagate
属性に False
を設定することで避けれます。
logging
パッケージにはさらに、カスタマイズ可能なクラス群があります。 Logger
インスタンスにログメッセージを伝える際、それは LogRecord
インスタンスを作って、任意の数の異なる Handler
インスタンスへ送ります。ロガーとハンドラにはフィルタのリストを取り付けることも出来、それぞれのフィルタは無視する LogRecord
を決めたり、渡す前にレコードを修正したり出来ます。それらが最後に出力される際、 LogRecord
インスタンスは Formatter
クラスによりテキストに変換されます。これら全てのクラスはあなた自身の特別に書いたクラスに置き換え可能です。
これら全ての機能で logging
パッケージは最も複雑なアプリケーションでさえ、十分な柔軟性を提供しているはずです。ここではそれら機能の不完全な概要しか示しませんでしたので、全ての詳細はパッケージのドキュメントを参照してください。 PEP 282 を読むことも助けになるでしょう。(---訳注: 今ではクックブックもあるのでそちらもどうぞ。---)
参考
- PEP 282 - ログシステム
PEP 著: Vinay Sajip と Trent Mick; 実装: Vinay Sajip.
PEP 285: Boolean 型¶
真偽値型 (Boolean) が Python 2.3 に追加されました。関連して 2 つの定数 True
と False
が __builtin__
モジュールに追加されています。(定数 True
と False
は Python 2.2.1 にはビルトインに追加されてはいたのですが、 2.2.1 版のものは単純に整数の 1 と 0 をセットしただけのもので、独立した真偽値型ではありませんでした。)
この新しい型の型オブジェクトの名前は bool
です; これのコンストラクタは任意の Python 値を取り、 True
または False
に変換します:
>>> bool(1)
True
>>> bool(0)
False
>>> bool([])
False
>>> bool( (1,) )
True
標準ライブラリモジュールとビルトイン関数のほとんどが、そうすべきときには Boolean を返すように変更されました:
>>> obj = []
>>> hasattr(obj, 'append')
True
>>> isinstance(obj, list)
True
>>> isinstance(obj, tuple)
False
Python の Boolean はコードを明快にすることを主たる目標として追加されました。例えばあなたがコードを読んでいて return 1
に出くわした場合、あなたは考えるはずです。この 1
は、真偽としての真値なのであろうか、それともインデクスだろうか、はたまた何かほかの数量に掛ける係数だろうか、と。 return True
であればその意味するところはかなり明らかです。
Python の Boolean は、厳格な型チェックを目的として追加された のではありません 。Pascal のようなとても厳格な言語では、Boolean の数学演算も阻むでしょうし、 if
ステートメントの式が必ず Boolean の結果に評価されなければならないことを要求するでしょう。 Python はこの厳しさを今持ちませんし、 PEP 285 が名言するように、未来永劫持つことはありません。このことは、 if
ステートメントにこれからも任意の式を書けることを意味しますし、リストやらタプルやら何かほかのデタラメなオブジェクトに評価されるものでも良いことを意味します。Boolean 型は int
クラスのサブクラスであって、Boolean の算術演算はこれからも動作します:
>>> True + 1
2
>>> False + 1
1
>>> False * 75
0
>>> True * 75
75
True
と False
はぶっちゃけて言えば…: これらは整数値 1 と 0 の別名だけれども唯一異なるのは str()
と repr()
が '1'
と '0'
ではなく 'True'
と 'False'
を返すことだけである。
参考
- PEP 285 - 真偽値型の追加
Guido van Rossum 著、実装
PEP 293: コーデックエラーを処理するコールバック¶
Unicode 文字列をバイト文字列にエンコードする際には、エンコード出来ない文字に出会うことがあります。いまのところ Python は、そのエラー処理として "strict" (UnicodeError
を発生させる)、 "ignore" (その文字をスキップする)、 "replace" (出力文字列ではクエッションマークに置換する)、のいずれか一つを指定出来て、 "strict" がデフォルトの振る舞いになっています。その種のエラーのために、ほかの代わりとなる処理が望ましいかもしれません。例えば XML や HTML の実体参照に置き換えるなどの。
Python は今や、異なる処理戦略を追加する柔軟なフレームワークを手にしました。新しいエラーハンドラを codecs.register_error()
で追加出来、コーデックは codecs.lookup_error()
を使ってそのエラーハンドラにアクセス出来ます。等価な C API も C で書かれたコーデックのために追加されています。エラーハンドラは、変換すべき文字列、そのエラーが検出されたその文字列内での位置、ターゲットエンコーディングのような必要な状態情報を受け取ります。ハンドラは例外を投げるか、置換文字列を返せます。
このフレームワークを使って 2 つのエラーハンドラが実装されました: "backslashreplace" はエンコード出来ない文字をバックスラッシュで引用し、 "xmlcharrefreplace" は XML 文字参照を発行します。
参考
- PEP 293 - コーデックエラーを処理するコールバック
Walter Dörwald 著、実装
PEP 301: パッケージインデクスと、 Distutils のためのメタデータ¶
長い間要望されてきた Python カタログのサポートが 2.3 で初登場です。
カタログの心臓部は Distutils の新コマンド register です。 python setup.py register
を実行すると、名前、バージョン、メンテナ、説明、ライセンスのようなパッケージ記述のメタデータを収集して、中央カタログサーバに送信します。結果のカタログは https://pypi.org で利用可能です。
カタログ作成をもう少し便利にするために、Distutils の setup()
関数に新たにオプショナルな classifiers キーワード引数が追加されています。 Trove スタイルの文字列のリストは、ソフトウェアの分類を助けるために与えることが出来ます。
以下は setup.py
に分類指定子 (classifier) を記述する例です。 Distutils の古いバージョンと互換になるように書いています。:
from distutils import core
kw = {'name': "Quixote",
'version': "0.5.1",
'description': "A highly Pythonic Web application framework",
# ...
}
if (hasattr(core, 'setup_keywords') and
'classifiers' in core.setup_keywords):
kw['classifiers'] = \
['Topic :: Internet :: WWW/HTTP :: Dynamic Content',
'Environment :: No Input/Output (Daemon)',
'Intended Audience :: Developers'],
core.setup(**kw)
classifier の完全なリストは python setup.py register --list-classifiers
と実行することで得ることが出来ます。
参考
- PEP 301 - パッケージインデクスと、 Distutils のためのメタデータ
Richard Jones 著、実装
PEP 302: 新たなインポートフック¶
カスタムなインポートフックを書くことは、Python 1.3 で ihooks
モジュールが導入されたその日からずっと可能でした。それでも本当のところそれで幸せになった人は誰一人いません。それで新しいインポートフックを書くのが難しくてとっ散らかっていたからです。 imputil
と iu
モジュール のような代わりとなる色々な提案がありましたが、そのいずれも多くの賛同を得ることが出来たものはありませんし、そのいずれもが簡単に C コードから使うことが出来ませんでした。
PEP 302 はその先駆者、特に Gordon McMillan の iu
モジュールからアイディアを借りています。3 つの新たなアイテムが sys
モジュールに追加されています:
sys.path_hooks
は呼び出し可能オブジェクトのリストです。ほとんどの場合クラスになるでしょう。それぞれの呼び出し可能オブジェクトは、パスを含む文字列を受け取って、このパスからインポートを処理するインポーターオブジェクトを返すか、このパスを処理出来なければImportError
を送出します。sys.path_importer_cache
はそれぞれのパスごとのインポーターオブジェクトをキャッシュしますので、sys.path_hooks
は個々のパスを一回だけ横断すれば良いことになります。sys.meta_path
はsys.path
がチェックされる前に横断させるインポーターオブジェクトのリストです(訳注: ここだけ読むとわかりにくいですがライブラリリファレンスを読めばわかります)。このリストは初期状態で空ですが、ユーザコードがオブジェクトをそれに追加出来ます。追加のビルトインと凍結モジュールを、このリストにオブジェクトを追加することによってインポートさせることが出来ます。
インポーターオブジェクトは一つのメソッド find_module(fullname, path=None)
を持たなければなりません。 fullname はモジュールかパッケージの名前です。例えば string
や distutils.core
です。 find_module()
メソッドは一つのメソッド load_module(fullname)
を持つローダーオブジェクトを返さなければなりません。 load_module(fullname)
では対応するモジュールオブジェクトを生成して返します。
Python の新しいインポートのロジックは、なので、擬似コードで示すとだいたいこんな感じです (少し単純化しています; 完全な詳細は PEP 302 参照):
for mp in sys.meta_path:
loader = mp(fullname)
if loader is not None:
<module> = loader.load_module(fullname)
for path in sys.path:
for hook in sys.path_hooks:
try:
importer = hook(path)
except ImportError:
# ImportError, so try the other path hooks
pass
else:
loader = importer.find_module(fullname)
<module> = loader.load_module(fullname)
# Not found!
raise ImportError
参考
- PEP 302 - 新たなインポートフック
Just van Rossum、Paul Moore 著、実装 Just van Rossum。
PEP 305: カンマ区切り形式ファイル¶
カンマ区切りファイルは、データベースやスプレッドシートからのエキスポートのために頻繁に使われるフォーマットです。Python 2.3 はカンマ区切りファイルのパーサを追加しました。
カンマ区切りフォーマットは、ぱっと見で、簡単そうに見えます:
Costs,150,200,3.95
行を読んで line.split(',')
: これほどに簡単なものはあるだろうか、って? ですが、文字列データ内にカンマを含んだりすると、コトは複雑になります:
"Costs",150,200,3.95,"Includes taxes, shipping, and sundry items"
デカくて醜い正規表現でこれをパース出来るでしょうが、新登場の csv
を使えば遥かに単純になります:
import csv
input = open('datafile', 'rb')
reader = csv.reader(input)
for line in reader:
print line
reader()
関数はたくさんのオプションを取ります。フィールドセパレータはカンマだけに制限されておらず任意の文字に変更出来、引用も変更できます。
カンマ区切りファイルの異なった方言を定義して登録出来ます。今のところ 2 つの方言があって、両者とも Microsoft Excel で使われるものです。独立している csv.writer
はタプルやリストの連続から、デリミタを含む文字列は引用符で囲みつつカンマ区切りファイルを生成します。
参考
- PEP 305 - CSV File API
PEP 著と実装: Kevin Altis, Dave Cole, Andrew McNamara, Skip Montanaro, Cliff Wells.
PEP 307: Pickle の機能拡張¶
pickle
, cPickle
モジュールで、2.3 の開発サイクル中にいくつか留意すべきことがありました。2.2 では新スタイルクラスを特に困難なく pickle 化出来たものの、あまりコンパクトには pickle 化は出来ませんでした。 PEP 307 が些細な例を引用しています。新スタイルクラスは旧スタイルクラスに較べて 3 倍の長さになっていました。
解決方法として、新しい pickle プロトコルが発明されました。 pickle.dumps()
関数はずっと長い間、テキストとするのかバイナリとするのかについてはサポートしていました。2.3 ではこのフラグは Boolean から整数に再定義されました: 0 は旧式のテキストモード pickle フォーマット、1 が同じく旧式のバイナリフォーマット、そして 2 が今回の 2.3 から特有のフォーマットです。新しく追加された定数 pickle.HIGHEST_PROTOCOL
を指定すると、最も望ましいものが選択されます。
unpickle は安全な操作についての考慮はしなくなりました。2.2 の pickle
は unpickle される安全でないクラス (特に __safe_for_unpickling__
属性) を避けようとするフックを提供していましたが、このコードは一度も監査されることがなく、2.3 で全て白紙にしました。Python のどのバージョンでも、信頼出来ないデータを unpickle すべきではありません。
新スタイルクラスでの pickle のオーバーヘッドを減らすために、pickle をカスタマイズする、3 つの特殊メソッドを使った新インターフェイスが追加されました: __getstate__()
, __setstate__()
, __getnewargs__()
。これらメソッドの完全なセマンティクスについては PEP 307 を調べてください。
pickle をもっとさらに圧縮する方法として、pickle されるクラスの身元特定のために長い文字列を使う代わりに整数コードを使えるようになっています。Python Software Foundation は標準コードのリストを保守しています; プライベート使用のためのコード範囲もあります。現在のところ指定されているコードはありません。
参考
- PEP 307 - pickle プロトコルの拡張
著、実装: Guido van Rossum と Tim Peters
拡張スライス¶
Python 1.4 以来ずっと、スライシングの構文は省略可能な 3 つ目の引数 "step" またの名を "stride" 、をサポートしていたのです。例えばこれらは全て合法な Python 構文です: L[1:10:2]
, L[:-1:1]
, L[::-1]
。これはこの 3 つ目の引数を大々的に使う Numerical Python 開発者によって要望されたことで Python に追加されたものですが、Python ビルトインのリスト、タプル、文字列といったシーケンス型がこの機能をサポートすることはなく、これを試みると TypeError
を起こしていました。Michael Hudson がこの不徹底を修正するパッチを寄稿しました。
例えば、今やリストの偶数番目要素を簡単に取り出せます:
>>> L = range(10)
>>> L[::2]
[0, 2, 4, 6, 8]
負の値では、同じリストの逆順コピーを作るように動作します:
>>> L[::-1]
[9, 8, 7, 6, 5, 4, 3, 2, 1, 0]
これはタプル、配列、文字列に対しても使えます:
>>> s='abcd'
>>> s[::2]
'ac'
>>> s[::-1]
'dcba'
リストや配列のような mutable なシーケンスに対して、拡張スライスを代入や削除に使えますが、拡張スライスと普通のスライスではいくつかの違いがあります。普通のスライスで代入を行えば、シーケンスの長さを変更出来ます (---訳注: 念のため。Python 3 の range は list を直接返す関数ではなくジェネレータなので、以下例は a = list(range(3))
などとしないと動作しません。続く例でも同じです。---):
>>> a = range(3)
>>> a
[0, 1, 2]
>>> a[1:3] = [4, 5, 6]
>>> a
[0, 4, 5, 6]
拡張スライスにはこの柔軟性はありません。拡張スライスを代入に使う際は、ステートメントの右辺のリストは、置換されるスライスとしての要素数と同数でなければなりません:
>>> a = range(4)
>>> a
[0, 1, 2, 3]
>>> a[::2]
[0, 2]
>>> a[::2] = [0, -1]
>>> a
[0, 1, -1, 3]
>>> a[::2] = [0,1,2]
Traceback (most recent call last):
File "<stdin>", line 1, in ?
ValueError: attempt to assign sequence of size 3 to extended slice of size 2
削除はもっと素直です:
>>> a = range(4)
>>> a
[0, 1, 2, 3]
>>> a[::2]
[0, 2]
>>> del a[::2]
>>> a
[1, 3]
ビルトインのシーケンスの __getitem__()
メソッドに slice オブジェクトを渡すことも出来るようになりました:
>>> range(10).__getitem__(slice(0, 5, 2))
[0, 2, 4]
あるいは直接 slice オブジェクトを添え字に使えます:
>>> range(10)[slice(0, 5, 2)]
[0, 2, 4]
拡張スライスをサポートするシーケンスの実装を単純化するために、 slice オブジェクトに indices(length)()
メソッドが追加されています。これはシーケンスの長さを受け取って、タプル (start, stop, step)
を返すことで直接 range()
に渡せるようにしています。 indices()
は範囲外のインデクスを、標準のスライスと一貫した方法で処理します (そしてこの当たり障りのない言い回しは、ややこしい詳細の荒波を隠しているのですよ…!) このメソッドはこうやって使うのを意図したものです:
class FakeSeq:
...
def calc_item(self, i):
...
def __getitem__(self, item):
if isinstance(item, slice):
indices = item.indices(len(self))
return FakeSeq([self.calc_item(i) for i in range(*indices)])
else:
return self.calc_item(i)
ところでこの例からは、ビルトインの slice
オブジェクトが今では slice 型という型オブジェクトで、もう関数ではないことがわかるでしょう。これは、Python 2.2 で int
, str
などに対して行われた同じ目的の修正と一貫しています。
その他の言語変更¶
以下が、Python 2.3 言語コアに加えられた全ての変更点です。
yield
がこのドキュメントの PEP 255: 単純なジェネレータ で述べた通り、キーワードになっています。新たなビルトイン関数
enumerate()
が追加されました。このドキュメントの PEP 279: enumerate() で述べた通りです。新たな定数
True
,False
がビルトインbool
型の追加に伴い追加されました。このドキュメントの PEP 285: Boolean 型 で述べた通りです。int()
型コンストラクタは、文字列や浮動小数点数を整数に収める際、それがとても大き場合にOverflowError
を投げるのではなく長整数を返すようになっています。これはisinstance(int(expression), int)
が偽を返すかもしれないという逆説的な結果をもたらし得ますが、これが実際に問題を起こすとはあまり思えません。ビルトイン型が拡張スライス構文をサポートするようになりました。このドキュメントの 拡張スライス で述べた通りです。
新規ビルトイン関数
sum(iterable, start=0)
はイテラブル内の数値アイテムを足し込んで総和を返します。sum()
は数値しか受け付けませんので、文字列群を連結するのには使えません。 (Contributed by Alex Martelli.)list.insert(pos, value)
で value を先頭に追加するのに pos に負数が使われてきました。この振る舞いはスライスのインデクシングとの一貫性のために変更されました。つまり pos が -1 の場合は最終要素の前への追加、などとなります。list.index(value)
はリスト内から value を探してそのインデクスを返しますが、オプショナルな start と stop 引数を取って、リストの部分列からの検索が可能になりました。辞書の新たなメソッド
pop(key[, *default*])
は、 key に対応する値を返して辞書からそのキー/値ペアを取り除きます。辞書内にそのキーが不在であれば、 default が指定されていればそれを、そうでなければKeyError
を投げます。:>>> d = {1:2} >>> d {1: 2} >>> d.pop(4) Traceback (most recent call last): File "stdin", line 1, in ? KeyError: 4 >>> d.pop(1) 2 >>> d.pop(1) Traceback (most recent call last): File "stdin", line 1, in ? KeyError: 'pop(): dictionary is empty' >>> d {} >>>
また、新しいメソッド
dict.fromkeys(iterable, value)
は、与えられたイテレータ iterable からキーを取り出しつつ全ての値を value にセットすることで構築します。 value のデフォルトはNone
です。(Patches contributed by Raymond Hettinger.)
また、
dict()
コンストラクタは小さな辞書を簡単に構築出来るよう、キーワード引数を受け付けるようになりました:>>> dict(red=1, blue=2, green=3, black=4) {'blue': 2, 'black': 4, 'green': 3, 'red': 1}
(Contributed by Just van Rossum.)
assert
ステートメントが__debug__
フラグをチェックすることはもうありません。このため、__debug__
に代入することによってアサーションを無効にすることは出来ません。Python を-O
スイッチで起動により全てのアサーションが実行されない点は、以前と変わりません。ほとんどの型オブジェクトが今では呼び出し可能であり、なので関数、クラス、モジュールのようなオブジェクトを新たに構築するのにそれを使えます。 (
new
モジュールはこれにより将来のバージョンの Python で撤廃される可能性があります。types
モジュール内の型オブジェクトが使えるからです。 ---訳注: 2.6 で実際に撤廃されています。---) 例えば新規モジュールオブジェクトは以下コードで構築出来ます:>>> import types >>> m = types.ModuleType('abc','docstring') >>> m <module 'abc' (built-in)> >>> m.__doc__ 'docstring'
新たな警告
PendingDeprecationWarning
が、将来廃止される予定のある機能であることを示すために追加されました。この警告はデフォルトで 出力されません 。将来において廃止される予定の機能の使用をチェックするにはコマンドラインから-Walways::PendingDeprecationWarning:: <-W> ` を与えるか、 :func:`warnings.filterwarnings
を使います。文字列ベースの例外、例えば
raise "Error occurred"
のようなもの、これは廃止のための過程を開始しています。文字列を例外として投げるとPendingDeprecationWarning
が発行されます。None
を変数名に使うとSyntaxWarning
警告を出すようになっています。将来バージョンの Python ではNone
はキーワードになります。ファイルオブジェクト自身が自身のイテレータのように振舞うようになったために、Python 2.1 で導入されたファイルオブジェクトの
xreadlines()
メソッドはもう必要ありません。xreadlines()
メソッドは元々はファイル内の全行をループするのに高速な手段として導入されましたが、今では単純にfor line in file_obj
と書くことが出来ます。ファイルオブジェクトにはさらに読み出し専用のencoding
属性を持つようになっていて、これはファイルで使われているエンコーディングを与えます。ファイルへの Unicode 文字列書き込みでは、与えられたエンコーディングを使って自動的にバイト列に変換されます。(---訳注:encoding
は読み出し専用なので「与える」といっても直接セットすることは出来ません。ビルトインのopen()
とfile
にはエンコーディングを指定するインターフェイスがありません。一般にはこれは何かほかの関数などで間接的にセットすることになりますが、2.6 以降であればopen()
、そうでないならcodec
モジュールなどを介して制御することになると思います。Python 3 以降を含む 2.6 以降はopen()
が良いです。---)本当に複雑な継承階層を持っていない限りは気付くことはないでしょうが、新スタイルクラスで使うメソッド解決順が変更されました。この変更は旧スタイルクラスには影響ありません。Python 2.2 では元々クラスの先祖をトポロジカルに並べ替えることをしていましたが、2.3 からは、ペーパー `"A Monotonic Superclass Linearization for Dylan" `_ で述べられている C3 アルゴリズムを使います。この変更の動機について理解するには Michele Simionato の記事 `"Python 2.3 Method Resolution Order" `_ を読むか、python-dev での https://mail.python.org/pipermail/python-dev/2002-October/029035.html より始まるスレッドを参照してください。Samuele Pedroni が最初に問題について指摘し、C3 アルゴリズムによって解決する実装をしました。
Python はマルチスレッドプログラムを、バイトコード N 個実行のたびに実行スレッドを切り替えて実行します。このデフォルトの N が 10 から 100 に増やされました。これはシングルスレッドアプリケーションにおいてこの切り替えのオーバヘッドを減らして高速化するためです。マルチスレッドアプリケーションでは応答時間が遅くなる被害を被るかもしれませんが、このリミット値を元の小さな値に戻すのは簡単で、
sys.setcheckinterval(N)
を使います。設定されているリミット値は新規関数sys.getcheckinterval()
で取得できます。マイナーですが広範囲に渡る変更として、拡張型の名前の変更があります。Python と一緒に含まれるモジュールで定義される拡張型の名前が、モジュール名と
'.'
が型名に前置されるようになりました。例えば Python 2.2 ではソケットオブジェクトを作って__class__
を出力すると、このような出力だったでしょう:>>> s = socket.socket() >>> s.__class__ <type 'socket'>
2.3 ではこうなります:
>>> s.__class__ <type '_socket.socket'>
注意すべきであった旧スタイル・新スタイルクラスの非互換性が取り除かれました。今では新スタイルクラスの属性 :attr:``~definition.__name__` と
__bases__
に代入出来ます。__bases__
に代入できるものについてのいくつかの、インスタンスの__class__
属性への代入に関連する制限に従った制限事項はあります。
文字列に関する変更¶
in
演算子が文字列に対して違った振る舞いをするようになりました。以前は X と Y が文字列の場合のX in Y
は、 X は単一文字でなければなりませんでした。これが X はどんな長さでも良くなり、X in Y
は X が Y のサブストリングであればTrue
を返すように変更されました。 X が空文字列の場合は結果は常にTrue
になります。>>> 'ab' in 'abcd' True >>> 'ad' in 'abcd' False >>> '' in 'abcd' True
これはサブストリングの開始位置を教えてくれるわけではないので、その情報が必要であれば
find()
メソッドを使ってください。strip()
,lstrip()
,rstrip()
に、剥ぎ取る文字を指定する省略可能引数が追加されています。デフォルトは従来通り全ての空白文字を削除します。:>>> ' abc '.strip() 'abc' >>> '><><abc<><><>'.strip('<>') 'abc' >>> '><><abc<><><>\n'.strip('<>') 'abc<><><>\n' >>> u'\u4000\u4001abc\u4000'.strip(u'\u4000') u'\u4001abc' >>>
(Suggested by Simon Brunning and implemented by Walter Dörwald.)
startswith()
,endswith()
メソッドが start と end パラメータとして負数を受け付けるようになりました。もう一つ追加の文字列メソッドは
zfill()
で、これはstring
モジュール内で元々関数だったものです。zfill()
は指定の幅まで数値文字列の左側にゼロ埋めをします。なお、%
演算子の方が今でもzfill()
より柔軟で強力です。:>>> '45'.zfill(4) '0045' >>> '12345'.zfill(4) '12345' >>> 'goofy'.zfill(6) '0goofy'
(Contributed by Walter Dörwald.)
新規の型オブジェクト
basestring
が追加されました。 8 ビット文字列と Unicode 文字列はともにこの型から派生しているので、isinstance(obj, basestring)
はどちらの文字列型でもTrue
を返します。これは完全に抽象型なのでbasestring
のインスタンスを構築することは出来ません。 (---訳注: Python 3 では文字列 = Unicode、バイト列の扱いが大きく変わり、まずバイト列と Unicode は決して同じものとはみなされません (今ここで 8 ビット文字列と呼んでいるものは Python 3 では文字列ではありません、バイト列です) し、basestring
型も撤廃されています。Python 2.7 で Python 3 をサポートする必要があるような場合は、なるべくbasestring
に依存しないようにした方が良いです。---)内部化した文字列はもう不死身ではないので、内部辞書からの参照が、参照している唯一のものとなれば、普通にガーベージコレクト対象となります。 (Implemented by Oren Tirosh.)
最適化¶
The creation of new-style class instances has been made much faster; they're now faster than classic classes!
The
sort()
method of list objects has been extensively rewritten by Tim Peters, and the implementation is significantly faster.Multiplication of large long integers is now much faster thanks to an implementation of Karatsuba multiplication, an algorithm that scales better than the O(n*n) required for the grade-school multiplication algorithm. (Original patch by Christopher A. Craig, and significantly reworked by Tim Peters.)
The
SET_LINENO
opcode is now gone. This may provide a small speed increase, depending on your compiler's idiosyncrasies. See section その他の変更と修正 for a longer explanation. (Removed by Michael Hudson.)xrange()
objects now have their own iterator, makingfor i in xrange(n)
slightly faster thanfor i in range(n)
. (Patch by Raymond Hettinger.)A number of small rearrangements have been made in various hotspots to improve performance, such as inlining a function or removing some code. (Implemented mostly by GvR, but lots of people have contributed single changes.)
The net result of the 2.3 optimizations is that Python 2.3 runs the pystone benchmark around 25% faster than Python 2.2.
新たなモジュール、改良されたモジュール、非推奨のモジュール¶
いつものように、Python の標準ライブラリには数多くの拡張とバグ修正がありました。ここでは最も注目に値する変更について、モジュールの辞書順に列挙します。変更の完全なリストについてはソースツリーの Misc/NEWS
を調べるか、あるいは全ての詳細について CVS ログに目を通してみてください。
array
モジュールが'u'
フォーマット文字を使った Unicode 文字の配列をサポートするようになっています。配列はまた、+=
代入演算子を使ってほかの配列内容を加算すること、*=
演算子を使って配列を繰り返すことが可能になっています。(Contributed by Jason Orendorff.)bsddb
が PyBSDDB バージョン 4.1.6 によって置き換えられています。これは BerkeleyDB のトランザクションの機能へのより完全なインターフェイスを提供します。古いバージョンのモジュールは
bsddb185
にリネームされて、自動的にはビルドされません。有効にするにはModules/Setup
を編集する必要があります。新しいbsddb
パッケージは古いモジュールと互換となるように意図されていますので、何か非互換を見つけたらファイルのバグを確認してください。Python 2.3 へのアップグレードの際、前提となる BerkeleyDB ライブラリの新バージョンでインタプリタがコンパイルされるならば、ほぼ確実にあなたのデータベースは新バージョンに変換しなければならないでしょう。ソース配布物のTools/scripts
ディレクトリのdb2pickle.py
とpickle2db.py
スクリプトを使って、これをかなり簡単に行うことが出来ます。もし既に PyBSDDB パッケージを使っていてbsddb3
としてインポートしているならば、bsddb
をインポートするようにimport
文を変更する必要があります。新規の
bz2
モジュールは bz2 データ圧縮ライブラリへのインターフェイスです。bz2 圧縮データは普通zlib
圧縮データよりも小さくなります。 (Contributed by Gustavo Niemeyer.)標準の日付時刻型が
datetime
モジュールとして追加されています。詳細はこのドキュメントの下の方に記述してありますのでそちらを参照して下さい。Distutils の
Extension
クラスに新たにコンストラクタ引数 depends が追加されました。これは拡張が依存する追加的なソースファイルを列挙します。Distutils はその依存ファイルのいずれかが更新されると再コンパイルを行います。例えばsampmodule.c
がヘッダファイルsample.h
をインクルードしているとして、Extension
オブジェクトをこのように構築します:ext = Extension("samp", sources=["sampmodule.c"], depends=["sample.h"])
sample.h
を修正するとモジュールは再コンパイルされます。 (Contributed by Jeremy Hylton.)Distutils のほかのマイナーな変更: 環境変数
CC
,CFLAGS
,CPP
,LDFLAGS
,CPPFLAGS
をチェックして Python のコンフィグレーションでの設定をオーバライドするようになっています (contributed by Robert Weber)。以前までは
doctest
モジュールは公開メソッドの docstring とテストケースの関数を検索するだけでしたが、今ではプライベートなものも調べます。DocTestSuite()
関数はdoctest
テスト群からunittest.TestSuite
オブジェクトを作ります。新しい関数
gc.get_referents(object)
は object により参照されている全てのオブジェクトのリストを返します。getopt
モジュールに新規関数gnu_getopt()
が追加されました。これは既存のgetopt()
関数と同じ引数を取りますが、GNU スタイルの走査モードを使います。既存のgetopt()
関数は非オプション引数が現れるとすぐにオプション処理をやめますが、GNU スタイルモードは処理を続行するので、オプションと引数をミックス出来ます。例えば:>>> getopt.getopt(['-f', 'filename', 'output', '-v'], 'f:v') ([('-f', 'filename')], ['output', '-v']) >>> getopt.gnu_getopt(['-f', 'filename', 'output', '-v'], 'f:v') ([('-f', 'filename'), ('-v', '')], ['output'])
(Contributed by Peter Åstrand.)
モジュール
grp
,pwd
,resource
では拡張されたタプルを返すようになりました:>>> import grp >>> g = grp.getgrnam('amk') >>> g.gr_name, g.gr_gid ('amk', 500)
gzip
モジュールが 2 GiB を超えるファイルを扱えるようになっています。新規モジュール
heapq
はヒープキューアルゴリズムの実装です。ヒープは配列のようなデータ構造でありアイテムを部分並び替えの状態、全てのインデクス k に対しheap[k] <= heap[2*k+1]
でありheap[k] <= heap[2*k+2]
である状態に保ちます。これは最小のアイテムを素早く削除し、ヒーププライオリティを保守しながら新たなアイテムを追加するのにかかるコストは O(lg n) です。(優先度キューのデータ構造についてのより詳しい情報は https://xlinux.nist.gov/dads//HTML/priorityque.html を参照して下さい。)heapq
モジュールには、heappush()
関数とheappop()
関数が含まれており、これらはほかの mutable な Python シーケンス型の上にヒーププライオリティを保ちつつアイテムの追加と削除を行います。Python リストを使う例としてはこのような具合です:>>> import heapq >>> heap = [] >>> for item in [3, 7, 5, 11, 1]: ... heapq.heappush(heap, item) ... >>> heap [1, 3, 5, 11, 7] >>> heapq.heappop(heap) 1 >>> heapq.heappop(heap) 3 >>> heap [5, 7, 11]
(Contributed by Kevin O'Connor.)
IDLE 統合開発環境は IDLEfork プロジェクト (http://idlefork.sourceforge.net) からのコードを用いるように更新されました。最も特筆すべき特徴は開発コードがサブプロセスで実行されるようになったことで、これにより手動で
reload()
操作を行う必要はなくなっています。IDLE の中核コードは標準ライブラリのidlelib
パッケージとして組み込まれました。imaplib
モジュールが IMAP over SSL をサポートするようになりました. (Contributed by Piers Lauder and Tino Lange.)itertools
モジュールは ML 言語や Haskell 言語で提供されている様々な関数に触発された、イテレータとともに用いる有用な数多くの関数を含んでいます。例えば、itertools.ifilter(predicate, iterator)
はイテレータ内で関数predicate()
がTrue
を返す要素全てを返し、itertools.repeat(obj, N)
はobj
の N 回繰り返しを返します。ほかにもモジュールには数多くの関数を含んでいます。詳細はパッケージのドキュメントを参照してください。(Contributed by Raymond Hettinger.)math
module の 2 つの新規関数degrees(rads)
とradians(degs)
は、ラジアンと度の間の変換を行います。math
モジュールのmath.sin()
やmath.cos()
などは常にラジアンでの入力が必要です。math.log()
関数には底を指定するオプショナルの base 引数が追加されていて、e
と10
でない底の対数を計算するのが簡単になりました。 (Contributed by Raymond Hettinger.)いくつもの新規 POSIX 関数 (
getpgid()
,killpg()
,lchown()
,loadavg()
,major()
,makedev()
,minor()
,mknod()
) がos
モジュールの下位のposix
モジュールに追加されました。(Contributed by Gustavo Niemeyer, Geert Jansen, and Denis S. Otkidach.)os
モジュール内の*stat()
系関数が、タイムスタンプの秒の端数を報告するようになりました。そのようなタイムスタンプはtime.time()
が返すのと同じで浮動小数点数で表現されます。テストを通じて、タイムスタンプが浮動小数点となっていくつかのアプリケーションが破壊されることがわかっています。互換性のために、
stat_result
タイムスタンプのタプルインターフェイスは整数で表現されます。名前付きフィールド (これは Python 2.2 で最初に導入されました) を用いる場合にもタイムスタンプは今でも整数ですが、os.stat_float_times()
を呼び出すことで浮動小数点数で返却するように出来ます:>>> os.stat("/tmp").st_mtime 1034791200 >>> os.stat_float_times(True) >>> os.stat("/tmp").st_mtime 1034791200.6335014
Python 2.4 では、浮動小数点数を返すのがデフォルトとなります。
アプリケーション開発者は、この機能を有効にするのは、全ての自身のライブラリが浮動小数点数のタイムスタンプで正しく動作するか、タプル API を使用する場合のみにしてください。使うのであればこの機能は、都度都度有効にしようとせずにアプリケーションレベルで有効にすべきです。
optparse
モジュールに新たなコマンドライン引数パーサが追加されました。これはオプション値を特定の Python 型に変換することが出来、また、自動的に使用例メッセージを生成します。詳細はこのドキュメントの続くセクションを参照して下さい。古く、また一度としてドキュメントされたこともない
linuxaudiodev
モジュールは非推奨となり、新しいバージョンがossaudiodev
として追加されました。このモジュールがリネームされたのは OSS サウンドドライバは Linux に限って利用出来るものではなく、インターフェイスも整理され、色々な手で更新されたからです。(Contributed by Greg Ward and Nicholas FitzRoy-Dale.)実行中のプラットフォームについての色々な特性を決定する数多くの関数を含む、新規
platform
モジュールが追加されました。アーキテクチャ、CPU タイプ、Windows の OS バージョンや Linux ディストリビューションのバージョンなどを取得できます。(Contributed by Marc-André Lemburg.)pyexpat
モジュールのパーサオブジェクトが、オプショナルで文字データをバッファ出来るようになりました。結果として文字データハンドラの呼び出しが少なくなり、速くなります。バッファリングの有効化にはパーサオブジェクトのbuffer_text
属性をTrue
にセットします。random
モジュールにsample(population, k)
関数が追加されました。 population は母集団の要素を含んだ、シーケンスかxrange
オブジェクトで、sample()
は母集団から k 要素を値の置換なしに選択します。 k はlen(population)
までの任意の値を渡せます。例えば:>>> days = ['Mo', 'Tu', 'We', 'Th', 'Fr', 'St', 'Sn'] >>> random.sample(days, 3) # Choose 3 elements ['St', 'Sn', 'Th'] >>> random.sample(days, 7) # Choose 7 elements ['Tu', 'Th', 'Mo', 'We', 'St', 'Fr', 'Sn'] >>> random.sample(days, 7) # Choose 7 again ['We', 'Mo', 'Sn', 'Fr', 'Tu', 'St', 'Th'] >>> random.sample(days, 8) # Can't choose eight Traceback (most recent call last): File "<stdin>", line 1, in ? File "random.py", line 414, in sample raise ValueError, "sample larger than population" ValueError: sample larger than population >>> random.sample(xrange(1,10000,2), 10) # Choose ten odd nos. under 10000 [3407, 3805, 1505, 7023, 2401, 2267, 9733, 3151, 8083, 9195]
random
が C で実装された新しいアルゴリズムのメルセンヌ・ツイスタを使うようになりました。これは以前のアルゴリズムよりも高速で、より広く研究されています。(All changes contributed by Raymond Hettinger.)
readline
モジュールは多くの新規関数を追加しました:get_history_item()
,get_current_history_length()
,redisplay()
。rexec
モジュールとBastion
モジュールはもう利用出来ないようにしてあります。インポートを試みればRuntimeError
を投げます。新スタイルクラスはrexec
により提供される制限実行環境を突破する新たな術を持っており、誰もそれを修正することに興味もなく、その時間も持っていません。rexec
を使うアプリケーションを持っているならば、何かほかの手段で書き換えてください。(Python 2.2 または 2.1 に留まるにしてもそれは何一つあなたのアプリケーションを安全にはしません。それらバージョンの
rexec
モジュールには既知のバグがあるからです。繰り返します。rexec
を使っているなら、即座に使用をやめてください。)rotor
モジュールが非推奨となりました。暗号化に使うアルゴリズムが安全ではないと思われているからです。暗号が必要なのであれば、独立して入手出来るいくつもの AES Python モジュールのなかの一つを使ってください。(---訳注: rotor モジュールは 2.4 で削除されました。---)shutil
モジュールにmove(src, dest)
が追加されており、これはファイルまたはディレクトリを新しい場所へ再帰的に移動します。Support for more advanced POSIX signal handling was added to the
signal
but then removed again as it proved impossible to make it work reliably across platforms.socket
モジュールがタイムアウトをサポートするようになりました。ソケットオブジェクトのsettimeout(t)
メソッドに t 秒を与えることで行えます。これに続くソケット操作が t 秒を超えて完了しない場合には操作は中断し、socket.timeout
例外を投げます。オリジナルのタイムアウト実装は Tim O'Malley によりなされました。Michael Gilfix がこれを Python
socket
モジュールに統合し、長い長いレビューに導きました。コードがチェックインされたのち、Guido van Rossum はそれを部分的に書き換えました。(これは協調的開発プロセスの好例です。)Windows での
socket
モジュールの Secure Sockets Layer (SSL) サポートが始まりました。C マクロの
PYTHON_API_VERSION
の値が Python レベルでsys.api_version
として公開されるようになりました。新関数sys.exc_clear()
を呼び出すことで、現在の例外をクリア出来るようになりました。新モジュール
tarfile
で tar 形式のアーカイブファイルの読み書きが出来ます。 (Contributed by Lars Gustäbel.)新規モジュール
textwrap
には、テキストのパラグラフを含んだ文字列を折り返すための関数群を含まれています。wrap(text, width)
関数は文字列を入力に取り、指定した幅より長いものを含まない行に分割して文字列のリストで返します。fill(text, width)
関数は指定した幅を超えない分割行に再整形して単一文字列で返します。(ご想像どおりfill()
はwrap()
の上に構築されています。例えば:>>> import textwrap >>> paragraph = "Not a whit, we defy augury: ... more text ..." >>> textwrap.wrap(paragraph, 60) ["Not a whit, we defy augury: there's a special providence in", "the fall of a sparrow. If it be now, 'tis not to come; if it", ...] >>> print textwrap.fill(paragraph, 35) Not a whit, we defy augury: there's a special providence in the fall of a sparrow. If it be now, 'tis not to come; if it be not to come, it will be now; if it be not now, yet it will come: the readiness is all. >>>
モジュールには実際のテキスト折り返しの戦略を実装する
TextWrapper
クラスが含まれています。TextWrapper
クラスとwrap()
関数、fill()
関数のどちらも、整形を細かく制御するための数多くの追加的なキーワード引数をサポートしています。詳細はモジュールのドキュメントを調べてください。(Contributed by Greg Ward.)thread
モジュールとthreading
モジュールの仲間として、プラットフォームがスレッドをサポートしない場合の何もしない実装のthread
モジュールインターフェイスとしてdummy_thread
とdummy_threading
が追加されました。これはスレッド化を意図する (スレッドが実際動くかには依存 しない) モジュールがコードの先頭に以下のように書くことで単純化することを狙ったものです:try: import threading as _threading except ImportError: import dummy_threading as _threading
この例ではモジュール名として
_threading
を使っていて、これは実際のthreading
モジュールが必ずしも必要ではないことをはっきりさせています。_threading
モジュール内の関数とクラスはスレッドがサポートされているいないに関わらず呼び出すことが出来、これはif
文を避け、コードを少しばかり明快にします。このモジュールはスレッドなしのマルチスレッドコードを走らせるのに特別なことをしません。つまり他のスレッドが戻るのを待ったり何か他のことをするのを待つコードは、単に永遠にハングします。time
モジュールのstrptime()
関数は長いこと混乱の元でした。それがプラットフォームの C 関数strptime()
を使い、異なったプラットフォームごとに時折おかしなバグを持っていたからです。Brett Cannon は pure Python で、全てのプラットフォームで全く同じに振舞うように書き直した実装を寄稿しました。新規モジュール
timeit
は、Python コードの断片 (スニペット) を実行するのにかかる時間を計測します。ファイルtimeit.py
は直接コマンドラインから実行出来ますし、モジュールのTimer
クラスをインポートして直接使うことも出来ます。以下に、空の Unicode 文字列を追加することによって 8 ビット文字列を Unicode に変換するのとunicode()
関数を使うのとでいずれが高速なのかを把握するための短い例をお見せします:import timeit timer1 = timeit.Timer('unicode("abc")') timer2 = timeit.Timer('"abc" + u""') # Run three trials print timer1.repeat(repeat=3, number=100000) print timer2.repeat(repeat=3, number=100000) # On my laptop this outputs: # [0.36831796169281006, 0.37441694736480713, 0.35304892063140869] # [0.17574405670166016, 0.18193507194519043, 0.17565798759460449]
Tix
モジュールに色々バグ修正がなされ、Tix パッケージの現在バージョンに更新されました。Tkinter
モジュールがスレッドを有効化した Tcl で動作するようになりました。Tcl のスレッドモデルは、ウィジットはそれが作られたスレッドからのみアクセスされることを必要とします。ほかのスレッドからのアクセスは Tcl を混乱させます。ある特定の Tcl インターフェイスでは、Tkinter
はウィジットがコマンドの纏め上げによって異なるスレッドからアクセスされる際に、正しいスレッドに向けて結果を待つことで自動的にこれを避けるようになりました。それ以外のインターフェイスでは自動で処理は出来ませんが、Tkinter
はそのようなアクセス時に最低でもそれが問題とわかるよう例外を送出するようになっています。この変更についての詳細な説明は https://mail.python.org/pipermail/python-dev/2002-December/031107.html をみてください。(Implemented by Martin von Löwis.)_tkinter
を介した Tcl メソッド呼び出しは今では文字列だけを返すのではありません。代わりに Tcl は対応する Python の等価なオブジェクトに変換されたオブジェクトを返します。Python に等価なものがなければ_tkinter.Tcl_Obj
で包んで返します。この振る舞いはtkapp
オブジェクトのwantobjects()
メソッドで制御出来ます。(ほとんどの Tkinter アプリケーションがそうするように)
Tkinter
モジュールを通して_tkinter
を使う際、この機能は常に有効になります。これは互換性の問題を引き起こさないはずです。 Tkinter は可能な場合には文字列を Python 型に常に変換していたからです。何か非互換性を見つけたら古い振る舞いに戻せます。最初の
tkapp
オブジェクトを生成する前にTkinter
モジュールのwantobjects
変数に偽をセットしてください:import Tkinter Tkinter.wantobjects = 0
ここで説明した変更によって何かアプリケーションの破壊があれば、バグとして報告してください。
UserDict
モジュールに新しくDictMixin
クラスが追加されました。既に最小限のマッピングインターフェイスを持っているクラスのために、全ての辞書メソッドを定義します。これは、shelve
モジュール内のクラスのような、辞書に置換可能である必要があるクラスの記述を大幅に単純化します。クラスがメソッド
__getitem__()
,__setitem__()
,__delitem__()
,keys()
を定義している場合にはいつでも、スーパークラスとして mix-in を追加すると完全な辞書インターフェイスになります。例えば:>>> import UserDict >>> class SeqDict(UserDict.DictMixin): ... """Dictionary lookalike implemented with lists.""" ... def __init__(self): ... self.keylist = [] ... self.valuelist = [] ... def __getitem__(self, key): ... try: ... i = self.keylist.index(key) ... except ValueError: ... raise KeyError ... return self.valuelist[i] ... def __setitem__(self, key, value): ... try: ... i = self.keylist.index(key) ... self.valuelist[i] = value ... except ValueError: ... self.keylist.append(key) ... self.valuelist.append(value) ... def __delitem__(self, key): ... try: ... i = self.keylist.index(key) ... except ValueError: ... raise KeyError ... self.keylist.pop(i) ... self.valuelist.pop(i) ... def keys(self): ... return list(self.keylist) ... >>> s = SeqDict() >>> dir(s) # See that other dictionary methods are implemented ['__cmp__', '__contains__', '__delitem__', '__doc__', '__getitem__', '__init__', '__iter__', '__len__', '__module__', '__repr__', '__setitem__', 'clear', 'get', 'has_key', 'items', 'iteritems', 'iterkeys', 'itervalues', 'keylist', 'keys', 'pop', 'popitem', 'setdefault', 'update', 'valuelist', 'values']
(Contributed by Raymond Hettinger.)
xml.dom.minidom
の DOM 実装で、指定したエンコーディングによる XML 出力が可能になりました。DOM ノードのtoxml()
メソッド、toprettyxml()
メソッドにオプショナルなエンコーディング引数を与えることで行えます。xmlrpclib
モジュールが、 Python のNone
のような nil データを処理するための XML-RPC 拡張をサポートするようになりました。 nil 値は XML-RPC 応答のアンマーシャルでいつでもサポートされます。None
を含んだリクエストを生成するためには、Marshaller
のインスタンスを生成する際に allow_none パラメータに真を与えなければなりません。新規モジュール
DocXMLRPCServer
は、セルフ-ドキュメンティング XML-RPC サーバを書くのに使えます。実際のところをみるためにはデモモード (つまりプログラムとして) 実行してみてください。ウェブブラウザを RPC サーバに向ければ pydoc スタイルのドキュメントを生成します。xmlrpclib をサーバに向ければ実際のメソッドを呼び出せます。(Contributed by Brian Quinlan.)internationalized domain names (RFC 3454, 3490, 3491, 3492) のサポートが追加されました。Unicode ドメイン名とその名前の ASCII 互換エンコーディング (ACE=ASCII-compatible encoding) の間の変換をするのに "idna" エンコーディングを使用出来ます:
>{}>{}> u"www.Alliancefrançaise.nu".encode("idna") 'www.xn--alliancefranaise-npb.nu'
socket
モジュールも、C ライブラリに渡す前に Unicode ホスト名を ACE バージョンに透過的に変換するように拡張されています。httplib
やftplib
のようなホスト名を扱うモジュールも Unicode ホスト名をサポートしています;httplib
は HTTPHost
ヘッダをドメイン名の ACE 版を使って送信します。urllib
は URL のpath
部分が ASCII のみである限り、非 ASCII ホスト名を持つ Unicode URL をサポートしますこの変更の実装のために、
stringprep
モジュール、mkstringprep
ツール、punycode
エンコーディングが追加されました。
日付時刻型¶
タイムスタンプとして使うのに相応しい日付と時刻の型が datetime
モジュールとして追加されました。これら型は異なるカレンダであるとか多くの洒落た機能をサポートはせずに、時刻表現の基礎だけに集中するものです。
3 つの基礎となるクラスがあり、 date
は年・月・日を表現し、 time
は時・分・秒を、 datetime
が date
と time
の両方の属性すべてを持ちます。また、 timedelta
は 2 つの時刻の差を表現し、タイムゾーンのロジックは抽象クラス tzinfo
から派生したクラスにより実装されます。
date
と time
のインスタンスはコンストラクタへのキーワード引数を使って datetime.date(year=1972, month=10, day=15)
などとすることでも、あるいはクラスメソッドを使ってでも構築出来ます。例えばクラスメソッド date.today()
は現在時刻をローカル時刻で返します。
構築後の日付時刻クラスのインスタンスは全て immutable です。オブジェクトから書式文字列を生成する数多くのメソッドがあります:
>>> import datetime
>>> now = datetime.datetime.now()
>>> now.isoformat()
'2002-12-30T21:27:03.994956'
>>> now.ctime() # Only available on date, datetime
'Mon Dec 30 21:27:03 2002'
>>> now.strftime('%Y %d %b')
'2002 30 Dec'
replace()
メソッドで date
または datetime
インスタンスの一つ以上のフィールドを修正出来ます。これは新しいインスタンスを返します:
>>> d = datetime.datetime.now()
>>> d
datetime.datetime(2002, 12, 30, 22, 15, 38, 827738)
>>> d.replace(year=2001, hour = 12)
datetime.datetime(2001, 12, 30, 12, 15, 38, 827738)
>>>
インスタンスは比較可能で、ハッシュ出来、文字列に変換出来ます (結果は isoformat()
メソッドのものと同じです)。 date
と datetime
はお互いに減算演算が可能で、 timedelta
インスタンスを加算することも出来ます。最も大きな不足機能としては、文字列を解析して date
や datetime
へ戻すための標準ライブラリサポートはありません。(---訳注: 2 点。「比較可能」の意味は 2.3 から 2.4 で意味が変わっています。2.4 で date
と datetime
の比較は出来なくなりました。2.3 では出来ていました。文字列からの datetime
構築は 2.5 で strptime()
が追加されています。---)
さらに詳しい情報については、モジュールのリファレンスドキュメントを参照してください。 (Contributed by Tim Peters.)
optparse モジュール¶
getopt
モジュールはコマンドライン引数の単純な解析を提供しています。新規に追加された optparse
モジュール (元々 Optik と呼ばれていたものです) は Unix の慣習に従ったもっと念入りなコマンドライン解析を行い、自動的に --help
のための出力をし、異なったオプションに対して異なったアクションを実行出来ます。 (---訳注: 2.7 以降は optparse
よりも新しい argparse
を使ってください。---)
OptionParser
インスタンスを作ることから始め、プログラムのオプションがどんなであるかそれに対して教えてやります:
import sys
from optparse import OptionParser
op = OptionParser()
op.add_option('-i', '--input',
action='store', type='string', dest='input',
help='set input filename')
op.add_option('-l', '--length',
action='store', type='int', dest='length',
help='set maximum length of output')
コマンドラインの解析は parse_args()
メソッドを呼び出すことで行います
options, args = op.parse_args(sys.argv[1:])
print options
print args
これは、全てのオプションの値を含んだオブジェクトと残った引数を含む文字列リストを返します。
色々な引数でこのスクリプトを実行すれば、あなたの期待するように動きます。この例での length 引数が自動的に整数に変換されることに注目してください。
$ ./python opt.py -i data arg1
<Values at 0x400cad4c: {'input': 'data', 'length': None}>
['arg1']
$ ./python opt.py --input=data --length=4
<Values at 0x400cad2c: {'input': 'data', 'length': 4}>
[]
$
ヘルプメッセージはあなたのために自動生成されます:
$ ./python opt.py --help
usage: opt.py [options]
options:
-h, --help show this help message and exit
-iINPUT, --input=INPUT
set input filename
-lLENGTH, --length=LENGTH
set maximum length of output
$
さらに詳しいことはモジュールのドキュメントを参照して下さい。
Optik は Getopt SIG の読者からの示唆を受けてGreg Ward により書かれました。
Pymalloc: 特殊化されたオブジェクトアロケータ¶
Pymalloc は Vladimir Marangozov により書かれ Python 2.1 で追加された、特殊化されたオブジェクトアロケータです。Pymalloc は典型的な Python プログラムでのアロケーションのパターンにおいて、システムの malloc()
よりも高速で省メモリであることを意図したものです。このアロケータは C の malloc()
関数を大きなメモリプールを得るのに使い、それより小さなメモリ要求はこれらプールで実現しています。
2.1 と 2.2 ではこの機能は実験的な位置付けでありデフォルトでは有効ではありませんでした。これを有効にするには Python コンパイル時に configure スクリプトに --with-pymalloc
オプションを明示的に与える必要がありました。2.3 では pymalloc はさらに拡張され、また、デフォルトで有効になりました。逆にこれを無効にするのに --without-pymalloc
を与える必要があります。
この変更は Python で書いたコードからは見えませんが、 pymalloc は C 拡張内のバグを露にするかもしれません。C 拡張の著者は pymalloc を有効にしてテストすべきです。というのも、ある種の正しくないコードが実行時にコアダンプしうるからです。
問題を起こすとりわけ一般的な誤りが一つあります。Python の C API 内には数多くのメモリアロケーション関数がありますが、これは以前は単に C ライブラリの malloc()
と free()
への別名であり、何かの間違いでミスマッチな関数呼び出しをしても、誤りは気付かれないものでした。今回のこのオブジェクトアロケータを有効化すると、これら関数は malloc()
と free()
への別名ではまったくなくて、メモリ解放に誤った関数を呼び出すとコアダンプし得ます。例えば PyObject_Malloc()
を使って獲得したメモリは free()
ではなく PyObject_Free()
を使って解放する必要があります。Python に含まれるいくつかのモジュールがまさにこれに抵触し、修正の必要がありました。間違いなく多くのサードパーティモジュールが同じ問題を抱えているでしょう。
この変更の一環として、メモリアロケーションのためのこんがらかった複数インターフェイスが統合されて 2 つの API ファミリになりました。一方のファミリで獲得されたメモリは他方の関数で操作されることは許されません。一方のファミリはメモリの塊を獲得するためのもので、もう一方は Python オブジェクトの獲得に特殊化されたものです。
何某かの区別のないメモリの塊を獲得・解放するのには「生メモリ」ファミリを使います:
PyMem_Malloc()
,PyMem_Realloc()
,PyMem_Free()
.「オブジェクトメモリ」ファミリは上述の pymalloc 機構へのインターフェイスであり、多数の「小さな」獲得をするための特化がされています:
PyObject_Malloc()
,PyObject_Realloc()
,PyObject_Free()
.Python オブジェクトの獲得と解放には「オブジェクト」ファミリ
PyObject_New()
,PyObject_NewVar()
,PyObject_Del()
を使います。
Tim Peters による多大な仕事のおかげで、 2.3 の pymalloc はデバッグ機能も提供しています。これはメモリの上書き、二重解放に関して、拡張モジュールとインタプリタ自身について検出出来ます。このサポートを有効にするには configure スクリプトにオプション --with-pydebug
を与えて Python インタプリタをデバッグバージョンとしてコンパイルしてください。
拡張の著者のために、Python 2.3 のソースとともにヘッダファイル Misc/pymemcompat.h
が配布されています。これは Python 拡張に 2.3 インターフェイスでのメモリ獲得を使えるようにするもので、1.5.2 以降の全てのバージョンに対してコンパイル可能です。Python のソース配布物からファイルをコピーして、あなたの拡張ソースにバンドル出来ます。
参考
- https://hg.python.org/cpython/file/default/Objects/obmalloc.c
pymalloc 実装に関する完全な詳細については Python ソースコード内の
Objects/obmalloc.c
ファイルの先頭のコメントを参照してください。上のファイルへのリンクは python.org の SVN ブラウザを指しています。
ビルドならびに C API の変更¶
Python のビルド過程と C API の変更は以下の通りです:
ガーベージコレクションで使われている循環の検出実装が安定であることがわかったため、必須とすることになりました。Python をこれなしでコンパイルすることはもう出来ません。 configure スクリプトの
--with-cycle-gc
スイッチは削除されました。Python がオプショナルでシェアドライブラリ (
libpython2.3.so
) としてビルド可能になりました。Python の configure スクリプトに--enable-shared
オプションを与えることで可能です。 (Contributed by Ondrej Palkovsky.)マクロ
DL_EXPORT
とDL_IMPORT
が非推奨となっています。Python コアが一般的にマクロPyAPI_FUNC
とPyAPI_DATA
を使うのに対し、Python 拡張モジュールの初期化関数が新規マクロPyMODINIT_FUNC
を使って宣言されなければならなくなりました。configure スクリプトに
--without-doc-strings
オプションを与えることで、ビルトイン関数とモジュールが docstring を持たないインタプリタとしてコンパイル出来るようになりました。これは Python の実行形式ファイルを 10% 小さくしますが、もちろん Python ビルトインのヘルプが取得できないことにもなります。 (Contributed by Gustavo Niemeyer.)PyArg_NoArgs()
マクロが非推奨となったので、これを使っているコードは修正しなければなりません。Python 2.2 以降ではメソッド定義テーブルでは引数を持たず、引数チェックを省けることを示すのにMETH_NOARGS
フラグが使えます。2.2 以前の Python バージョンとの互換性が重要な場合にはPyArg_ParseTuple(args, "")
を代わりに使えますが、METH_NOARGS
を使うより遅いです。PyArg_ParseTuple()
に符号なし整数の色々なサイズのためのフォーマット文字が追加されました:unsigned char
のためのB
,unsigned short int
のためのH
,unsigned int
のためのI
,unsigned long long
のためのK
.新規関数
PyObject_DelItemString(mapping, char *key)
がPyObject_DelItem(mapping, PyString_New(key))
の速記法として追加されました。ファイルオブジェクトの内部文字列バッファの管理が変更されて、必要な場合には指数関数的に増やすようになりました。
Lib/test/test_bufio.py
内のベンチマークテストの結果での速度向上は大幅なものです (ある一つの計測では 57 秒から 1.7 秒になりました)。C 拡張型のクラスメソッドと静的メソッドを定義出来るようになりました。メソッドの
PyMethodDef
構造体にMETH_CLASS
フラグかMETH_STATIC
フラグをセットすることで行えます。Python は Expat XML パーサのソースコードのコピーを丸抱えするようになり、これにより Expat のシステムのバージョンやローカルにインストールされたものへの依存がなくなっています。
あなたの拡張内で型オブジェクトを動的にアロケートする場合、
__module__
属性と__name__
属性に関係したルールの変更に注意してください。手短かに言えば、その型の辞書に'__module__'
キーを含むよう保障する際に、モジュール名をピリオドで繋げて型名の一部となるようにすることは、期待した効果は持たなくなりました。さらなる詳細については API のリファレンスかソースを読んで下さい。
ポート特有の変更¶
Support for a port to IBM's OS/2 using the EMX runtime environment was merged
into the main Python source tree. EMX is a POSIX emulation layer over the OS/2
system APIs. The Python port for EMX tries to support all the POSIX-like
capability exposed by the EMX runtime, and mostly succeeds; fork()
and
fcntl()
are restricted by the limitations of the underlying emulation
layer. The standard OS/2 port, which uses IBM's Visual Age compiler, also
gained support for case-sensitive import semantics as part of the integration of
the EMX port into CVS. (Contributed by Andrew MacIntyre.)
On MacOS, most toolbox modules have been weaklinked to improve backward compatibility. This means that modules will no longer fail to load if a single routine is missing on the current OS version. Instead calling the missing routine will raise an exception. (Contributed by Jack Jansen.)
The RPM spec files, found in the Misc/RPM/
directory in the Python
source distribution, were updated for 2.3. (Contributed by Sean Reifschneider.)
Other new platforms now supported by Python include AtheOS (http://atheos.cx/), GNU/Hurd, and OpenVMS.
その他の変更と修正¶
いつものように、たくさんのほかの改善とバグフィックスがソースツリー全体に渡って散らばっています。CVS 変更ログを検索すると、Python 2.2 から 2.3 にかけて適用されたパッチは 523、バグ修正は 514 ありました。いずれも少なく見積もって、です。
ほかの、さらに特筆すべき変更のいくつかを挙げます:
環境変数
PYTHONINSPECT
をセットしておくと、Python インタプリタが Python プログラム実行後に対話モードに入ります。これは Python を-i
で起動するのと同じです。環境変数は Python インタプリタ実行前にセットするか、Python プログラムのその実行の一部としてセットすることが出来ます。regrtest.py
スクリプトで「foo を除く全てのリソース」とする手段が出来ました。-u
オプションにリソース名を渡すのにハイフン ('-'
) を前置すると「このリソースを除く」ことを意味します。例えば '-uall,-bsddb
' はbsddb
を除く全てのリソースを有効にするのに使えます。ドキュメントのビルドに使われるツールは今では Unix 同様に Cygwin でも動作します。
SET_LINENO
命令コード (opcode) は削除されました。彼方の昔に戻れば、この命令コードはトレースバック内で行番号を生成し、トレース関数をサポートするのに必要でした (例えばpdb
のために)。Python 1.5 より、トレースバック内の行番号は "python -O" で働くための異なったメカニズムを用いて計算で求められてきました。2.3 のためには Michael Hudson がトレース関数を呼ぶのに決定する似た方法を実装しましたので、SET_LINENO
の必要性は完全になくなりました。Python コードから何か異なる結果を見つけるのは、
-O
なしで Python を実行する際のわずかなスピードアップを別とすれば、困難かもしれません。フレームオブジェクトの
f_lineno
フィールドにアクセスしている C 拡張は、代わりにPyCode_Addr2Line(f->f_code, f->f_lasti)
を呼び出すべきです。これは以前の Python バージョンでも "python -O" のもとでコードが動作するのにも望ましい効果を持つでしょう。気の利いた新機能としては、トレース関数は、今ではフレームオブジェクトの
f_lineno
属性を、次に実行される行に変更してセットします。pdb
デバッガにはこの新機能の恩恵を受けてjump
コマンドが追加されています。 (Implemented by Richie Hindle.)
Python 2.3 への移植¶
このセクションでは前述の変更により必要となるかもしれないコードの変更を列挙します:
yield
は今では常にキーワードです。変数名として使っていたならば、別の名前を選ぶ必要があります。文字列 X と Y について、
X in Y
は X が一文字以上の場合でも動作するようになりました。int()
型コンストラクタは、文字列や浮動小数点数を整数に収める際、それがとても大き場合にOverflowError
を投げるのではなく長整数を返すようになっています。8 ビット文字を含んだ Unicode 文字列をソースコードに埋め込む場合、ファイルのエンコーディング (UTF-8, Latin-1, あるいはほか何か) を、ファイルの先頭のコメントに宣言しなければなりません。 PEP 263: ソースコードのエンコーディング を参照してください。
_tkinter
を介した Tcl メソッド呼び出しは今では文字列だけを返すのではありません。代わりに Tcl は対応する Python の等価なオブジェクトに変換されたオブジェクトを返します。Python に等価なものがなければ_tkinter.Tcl_Obj
で包んで返します。0xffffffff
のような大きな値の 8 進、16 進リテラルでFutureWarning
が発行されます。2.3 ではこれは 32 ビットの値に格納されて結果は負の値になりますが、Python 2.4 ではこれは正の長整数になります。この警告の修正をする方法が少しだけあります。本当に正の値が欲しいのであれば
L
をリテラルの最後に付けて下さい。32 ビット分だけの下位ビットセットで 32 ビット整数を取り出したいのであれば、また、~(1 << 31)
のような式を使ってきたのであれば、おそらく全ビットをセットすることから始めて上位ビットをクリアするのが最も簡明です。例えば最上位ビット (ビット 31) を単にクリアするには0xffffffffL &~(1L<<31)
と書けます。(---訳注: 2 点。Python 3 サポートを検討するならばL
は付けないように。2.4 以降は警告もなしに長整数になりますし。もう一点はこのパラグラフ全体について。根本的に警告への対処の話をしてるようで後半はほとんど本質でない話をしているので意味不明な文章になっています。本当に 2.3 を使わなければならないのでない限り、この文章を真面目に理解しようとしなくとも良いと思います(本質的な措置はL
を付けることしかない、2.3 では)。---)__debug__
に代入することでアサーションを無効にすることは出来なくなりました。Distutils の
setup()
関数に depends のような色々な新しいキーワード引数が追加されています。Distutils の古いバージョンでは未知のキーワードを渡すと処理を中断してしまいます。新旧で動作させなければならないのであれば、setup.py
内でget_distutil_options()
関数の有無をチェックし、それらをサポートするバージョンの Distutils でのみ新しいキーワード引数を使うようにしてください:from distutils import core kw = {'sources': 'foo.c', ...} if hasattr(core, 'get_distutil_options'): kw['depends'] = ['foo.h'] ext = Extension(**kw)
None
を変数名に使うとSyntaxWarning
警告を出すようになっています。Python と一緒に含まれるモジュールで定義される拡張型の名前にモジュール名と
'.'
が型名の頭に付くようになっています。
謝辞¶
著者は提案の申し出や修正、様々なこの記事の草稿の助けをしてくれた以下の人々に感謝します: Jeff Bauer, Simon Brunning, Brett Cannon, Michael Chermside, Andrew Dalke, Scott David Daniels, Fred L. Drake, Jr., David Fraser, Kelly Gerber, Raymond Hettinger, Michael Hudson, Chris Lambert, Detlef Lannert, Martin von Löwis, Andrew MacIntyre, Lalo Martins, Chad Netzer, Gustavo Niemeyer, Neal Norwitz, Hans Nowak, Chris Reedy, Francesco Ricciardi, Vinay Sajip, Neil Schemenauer, Roman Suzi, Jason Tishler, Just van Rossum.